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泌尿器科医・小堀善友の新オトコのコト

妊娠・育児・性の悩み

不妊治療で向き合う「性機能障害」

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不妊治療で向き合う「性機能障害」

 厚生労働省研究班の調査(2015年)によると、男性不妊の原因は「精巣で精子を作る機能が低下」が82.4%、次いで「勃起や射精などができない」が13.5%でした(表参照)。

 皆様もご存じの通り、精子の数が少ない場合には顕微受精などの高度の生殖補助医療が必要になり、パートナーの女性にも負担がかかることがあります。

 しかし、この調査からも、勃起や射精に問題がある「性機能障害」による不妊症患者さんも多くいることが明らかになっています。これらの患者さんは投薬とカウンセリングによる治療が可能であり、高度な生殖補助医療を回避できるケースも少なくありません。

 性機能障害を治療することにより、患者とそのパートナーにかかる肉体・精神・経済的負担を軽減することができるだけではありません。不妊治療の時期を経て、将来における幸せなセックスライフを送るきっかけにもなりえます。

タイミング法の「逆効果」

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 こうした「幸せなセックスライフのための治療」という視点は、皆さん、あまり気づかないようですが、不妊治療が契機となって、自分自身の、またはパートナーの性機能障害に初めて向き合うことになるケースも多いのです。お互いの心中を理解しあい、気持ちを整理するきっかけにもなります。

 不妊治療の一環として「タイミング法(排卵日を推定して性行為を予定して行う方法)」が一般的に行われています。しかし、タイミング法を開始してから性交回数が減少する傾向があります。さらに、生殖を意図した義務的な性行為がストレスとなり、勃起障害を起こすこともあります。

 過去に日本生殖医学会で報告された研究では、タイミング法が行われる前までは平均性交回数が約月4回であったのにもかかわらず、タイミング法が行われるようになると約月2回に減少したという報告がありました。子供を作ろうとしたのに、逆にセックスの回数が減少してしまったというのです。みんな、真面目に、排卵のタイミングに合わせてセックスに取り組んでしまったということですね。

 義務的セックスが続くと、不思議なもので男性は勃起しづらくなってしまいます。なぜかというと、理由があります。勃起は「副交感神経(リラックスする時に高まる神経)」が優位の際に起こりやすのです。

 だから、タイミング法の時に、「今日は頑張ってセックスしなくちゃ」「今日こそ妊娠させなくてはならない」などの目的が起きると緊張の神経(交感神経)が優位になり、勃起しづらくなってしまうのです。

「子作り」後に大切なこと

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 これらの不妊治療に関連した性機能障害は、心因性(機能性)勃起障害の典型例であり、「PDE5阻害薬(バイアグラ、レビトラ、シアリス)」が非常に有効です。不妊治療中に勃起障害にお悩みの方は、泌尿器科での受診をお勧めします。

 不妊治療における男性の性機能障害の治療には、パートナーである女性の協力が必要不可欠です。カウンセリング時に同席してもらうことでお互いの疾患への理解を深めることが可能となり、治療への手助けとなります。また、男性不妊症患者やパートナーの年齢や希望を考慮し、治療のゴールを決定する必要があります。

 いったん不妊治療を開始された後には、性機能障害の治療より不妊治療が優先されがちですが、不妊治療が成功した後、つまり待望のお子さんを授かった後も、継続して性機能障害の治療を希望されるケースもあります。先にお伝えしたように、治療の目的は「子作り」だけでなく、「幸せなセックスライフの大切」さにも気づかれたということでしょうか?

 いずれにせよ、私たち男性不妊を診療する医師も、患者さんのニーズに合わせた治療が必要となります。

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小堀善友(こぼり・よしとも)

泌尿器科医 埼玉県生まれ

2001年金沢大学医学部卒、09年より獨協医科大学越谷病院泌尿器科勤務。14年9月から16年3月まで米国イリノイ大学シカゴ校に招請研究員として留学。専門分野は男性不妊症、勃起・射精障害、性感染症。ホームページは「Dr.小堀の男の妊活ガイド」。略歴の詳細はこちら

主な著書に『泌尿器科医が教えるオトコの「性」活習慣病』(中公新書ラクレ)。

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