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泌尿器科医・小堀善友の新オトコのコト

妊娠・育児・性の悩み

射精できない…困った理由

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射精できない…困った理由

 今回は、以前、「オトコのコト 医師・小堀善友ブログ」で何度か取り上げていた「射精障害」について、改めてお話しいたします。

 勃起障害だけでなく、うまく射精ができないという問題が原因で不妊症になることがあります。

 この図は2013年に獨協医科大学越谷病院を訪れた射精障害の患者の数です。半分以上が重度の遅漏( 膣内(ちつない) 射精障害)であることがわかります。

 

間違ったマスターベーション

 

 

(1)膣内射精障害

 男性不妊治療の現場で多く認められるのは射精障害、それも重度の遅漏(膣内射精障害)です。膣内射精障害の患者は、マスターベーションはできるけれど、膣内では射精はできないという状態です。陰茎の膣への挿入が可能であるため、未婚の時点で受診する場合は多くありません。

 しかし、いざ「子どもを持とう」と願った時点で射精ができないということが問題となり、切羽詰まって専門機関に受診することが多いのです。

 また、精液検査の結果が良好でも、性交後の子宮 頸管(けいかん) 粘液を調べるフーナーテストで、精子が認められない場合は、射精障害の可能性があることを留意する必要があります。

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 膣内射精障害患者に対して治療に長時間を要する場合、パートナーの年齢を考慮して、「シリンジ法/スポイト法(マスターべーションにて採取された精液を、シリンジもしくはスポイトを用いて膣内へ注入する方法)」が必要となる場合があります。また、人工授精の適応となることが多いです。

 膣内射精障害の原因として、最も多いのは「間違ったマスターベーション方法」です。それは、手を使わない「非用手的マスターベーション」、通称「床オナ」です。(もし、「床オナ」を知らない人は、Googleで検索してみてください。たくさん出てきてびっくりすると思います)

 「床オナ」の場合、陰茎を床や布団に押し付ける刺激によって射精してしまうので、勃起をしないで射精する場合もあります。長年この方法でマスターベーションをしていると、膣に挿入した時の刺激のように、陰茎に沿って上下運動する刺激では射精できなくなってしまうのです。

 今、「床オナ」をしている「射精障害予備軍」の方は、将来不妊症になってしまう可能性があるので、今すぐやめましょう。

 

専門家泣かせ…治療が難しい

 

 

(2)早漏

 不妊症の治療で早漏が問題となることはほとんどありませんが、抗うつ薬など、脳内セロトニンの取り込みを阻害する薬剤が有効です。

 

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(3)逆行性射精

 糖尿病などが原因となり、精液が前に飛ばないで 膀胱(ぼうこう) の中に出てしまう状態のことを「逆行性射精」と言います。アモキサピンという薬剤が有効である場合があります。また、糖尿病のコントロールが重要です。

 

(4)神経性射精障害

 交通事故やスポーツ事故で脊髄を損傷したり、がんの手術時に骨盤内のリンパ節を切除したりするなどして、射精に関わる神経がダメージを受けるのが原因です。この神経のダメージを修復することは困難であり、子どもを望む場合は、精巣から直接精子を採取する手術を行います。しかし、受傷から半年以上経過すると、精子が作られる機能が低下するので、注意が必要です。

 射精障害の治療は、勃起障害の治療よりも複雑で難しい場合が多く、専門家泣かせの病気です。一番の原因は「床オナ」なので、この記事を見ている若者の諸君は、将来不妊症の原因とならないように注意してください!

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小堀善友(こぼり・よしとも)

泌尿器科医 埼玉県生まれ

2001年金沢大学医学部卒、09年より獨協医科大学越谷病院泌尿器科勤務。14年9月から16年3月まで米国イリノイ大学シカゴ校に招請研究員として留学。専門分野は男性不妊症、勃起・射精障害、性感染症。ホームページは「Dr.小堀の男の妊活ガイド」。略歴の詳細はこちら

主な著書に『泌尿器科医が教えるオトコの「性」活習慣病』(中公新書ラクレ)。

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3件 のコメント

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夫を事故で亡くし、義父の所有する狭いアパートに、ただ同然の家賃で、二十歳になる息子と二人で住んでいます。台所のほかに2部屋しかなく、一つの部屋に息子の机と私のタンスなどを置くと、もう布団も敷けず、6畳間に息子と二人布団を並べて寝ていました。そして、息子が中学生になったころから布団の中で自慰をしているのに気が付きました。息子はうつぶせになり、顔を向こうに向けて、まさしく下腹部を布団に擦り付けているようでした。私は床オナの弊害は知識としては知っていました。しかし、当然言い出せぬまま、毎晩、寝たふりをして1年以上が過ぎました。中学2年の夏休みの暑い夜、息子はタオルケットを下半身に被せて、始めました。うす暗い部屋の中、その晩だけは私は息子の方に顔を向け、息子のやり方を見ていました。突然、息子が顔を私の方に向け、目が合ってしまいました。私はどういうわけか、何も考えず、「強く擦り付けてはいけないんだって。子供ができなくなっちゃうんだって。」と口に出しました。息子は「えっ」という顔をしましたが、私の方も「あっ、いけない」と思いました。もう後戻りできないと思った私は、息子の下半身を覆っていたタオルケットをめくりました。息子のパジャマをずり下げた下半身が見え、「こうしてはいけないって、何かに書いてあったのよ。」と言って息子を仰向けにして、指で軽く握るそのやり方を教えました。
こんなことを母親が実地に教えるなんて、健全な成長のためには、別の問題があるのでしょうが、結果的には、今現在息子に問題は発生していません。

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中学生が、ベッドの上で腹ばいになって、夢中でカラダを擦りつけている現場を見たのだ。
母親に危険と言ったが、それ以上具体的な話ができなかった。
中学生に、床オナが危険で、手によるオナニーを推奨できるのは、父親しかいないのだろうか。

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