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予防医学研究者・石川善樹の「続けたくなる健康法」

医療・健康・介護のコラム

「若さ」は価値なのか?

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 こんにちは。

 予防医学研究者の石川です。 

 私は最近、改めて初心に戻り「健康にとって大事なことは何か?」ということを広く勉強しています。その中で、とても面白い研究を見つけたので、ご紹介したいと思います。

「年を取って見える」がほめ言葉

 以前のブログでも書かせていただきましたが、世界には長寿で知られる地域がいくつかあります。その中の一つが、ロシア南部に位置するアブハズです。

 この地域についていろいろと調べていたら、驚くべき記述がありました。なんとそれは、「お若く見えますね」というのは、このアブハズでは失礼な表現にあたるというのです。その代わり、「今日は年を取って見えますね」と言うと、ほめ言葉になるのだとか。

 つまり、アブハズでは若さが価値なのではなく、年を重ねることに対して非常にポジティブなイメージがあるということです。

 

社会で「老い」へのイメージをどう捉えるか

 それにしても、「老いに対するイメージ」というものが、実際に寿命に影響を与えるのでしょうか?

 気になった私は、過去にそのような研究がないか調べてみたのですが、やはり世界は広いですね。すぐに見つかりました。 

 その研究は、2002年にイェール大学のレビー博士らが発表したものです。オハイオ州在住の50歳以上の男女660人を23年間さかのぼって調べた結果、「老い」に対するイメージが肯定的だった人は、そうでない人に比べて、なんと7.5年も長生きだったそうです。

 心理学の専門家が作成した調査項目(「年を取るにつれて、物事が悪くなり続けている」などの項目について、「そう思う」「そうは思わない」などと回答する)に基づき、対象者の「老い」に対するイメージがどれくらい肯定的/否定的なのかを得点化して比較した結果だそうです。

 タバコを吸うかどうかで寿命が3~5年違うことを考えると、これはすごいことだなと思いました。

若さは価値なのか?のチャート.-350jpg

出典:Levy et al.Journal of Personality and Social Psychology.2002:83;261-270.

 もちろん、これはあくまで一つの研究結果でしかありません。このブログでいつもしつこいぐらい述べていますが、ある健康情報が「本当である」と認められるためには、相当多くの研究を重ねる必要があります。

 そのため、決して安易にはこの研究結果を受け取ってほしくないという思いがあるのですが、それでもこの研究は「老いに対するイメージを社会としてどのように捉えるか?」という点でとても示唆的なので今回ご紹介させていただきました。

 またこのような面白い研究があれば、引き続きこのブログでもご紹介していきたいと思います!

 それではまた次回!

 

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予防医学研究者・石川善樹の『続けたくなる健康法』_顔120px

石川善樹(いしかわ よしき)

 予防医学研究者・医学博士。(株)Campus for H共同創業者。1981年 広島県生まれ。東京大学医学部健康科学科卒業、ハーバード大学公衆衛生大学院修了後、自治医科大学にて博士(医学)取得。「人がより良く生きるとは何か」をテーマとして、企業や大学と共同研究を行う。専門分野は予防医学、行動科学、機械創造学、マーケティング等。

 著書に「疲れない脳をつくる生活習慣」(プレジデント社)など。最新刊「ノーリバウンド・ダイエット」(なとみみわさんとの共著、法研)が2017年1月19日に発売。

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