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虹色百話~性的マイノリティーへの招待

医療・健康・介護のコラム

第54話 刊行ラッシュが続く、専門雑誌のLGBT特集

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法律や教育、心理の専門誌などさまざま

刊行ラッシュが続く、専門雑誌のLGBT特集

法律や教育、心理の専門誌など、さまざまな分野でLGBT特集が組まれている

 性的マイノリティーについて社会の関心が高まる中で、いま、さまざまな雑誌で「LGBT」を冠した特集の刊行ラッシュが続いています。

 昨年2月の渋谷区でのパートナーシップ証明をきっかけに、一般の週刊誌、ビジネス誌で、同性カップルやその“経済効果”に着目する特集や記事が相次いだのは、まだまだ記憶に新しいところです。そうした「ニュース記事」が一巡し、今度は専門雑誌が自誌の主題に関連づけた「LGBT特集」を連発しています。

 「実務家のための法律専門誌」とうたう『法律のひろば』(ぎょうせい)は、7月号で「セクシュアル・マイノリティへの現状と課題解決に向けて」という特集を組んでいます。ゲイ・バイセクシュアル男性のインターネット調査を長く続けてきた研究者や、教育/臨床心理を専門とする研究者による、性的マイノリティーについての総合的な紹介につづき、3人の弁護士が法的問題の全体や就労問題、そして国会にも動きが生じはじめた差別禁止法の市民案について、それぞれ論述しています。また、渋谷区でのパートナーシップ証明制度を条例化した背景や検討された課題を、それに携わった職員自身が回顧した一編は、貴重な記録といえるでしょう。

 日本弁護士連合会の機関誌で、国内の全弁護士が手にする『自由と正義』も、8月号で「LGBTと弁護士業務」を第1特集に組みました。基礎知識から法的問題の解説、そして当事者の敷居の高さ感を軽減し「司法アクセスを保障するため」の注意点や各地の弁護士会の取り組みが紹介されています。

 日本司法書士会連合会の機関誌『月報司法書士』でも7月号で、特集「セクシュアル・マイノリティ~その先の多様化社会を見つめて~」という特集を組み、全国の司法書士に情報提供しています。

 なお、東京の3つの弁護士会のうち東京弁護士会(東弁)は、会報『LIBRA』の本年3月号ですでに特集「LGBT」を組んでいます。東弁は以前から「両性の平等に関する委員会」内にセクシュアル・マイノリティプロジェクトチームを置き、10か月の準備を経て2012年3月、LGBTの権利全般に関するシンポジウムを当事者を招いて開催し、全国の弁護士会の先駆けとなりました。

 (『自由と正義』『月報司法書士』『LIBRA』は会員向け機関誌ですが、一般でも購入できますし、あとの2誌はPDFでも一般に公開されています。ぜひご覧ください。)

 金融・財務関係の雑誌でも特集が組まれています。

 FP(ファイナンシャル・プランナー)の検定試験実施機関の一つである一般社団法人金融財政事情研究会が発行する『KINZAI ファイナンシャル・プラン』の7月号は、「知らないではすまされない LGBTの話」と題する特集を組みました。金融機関のほかライフプランニングや保険の相談業務にあたる専門家にも、性的マイノリティー当事者が本音でお金やライフプランの不安を相談できるきっかになるかもしれません。なお、本特集には、私も当事者のFPとして寄稿しました。

 また、同社の『週刊 金融財政事情』(5月2、9日合併号)でも、特集「LGBTと金融」が組まれ、銀行関係やエコノミストらの目に触れていることでしょう。

 教育関係では『体育科教育』(大修館書店)の8月号が、「保健体育とLGBTを考える」という特集を組んでいます。

 学校の中の性的マイノリティーについては 第25話(学校の「見えないカリキュラム」を反転する~~性的マイノリティーの子ども・若者(2)) でも取り上げたように、重要な課題です。これまでも学校の中の「駆け込み寺」である保健室の先生(養護教諭)向けの雑誌が取り上げることはありましたが、こうして特定の教科にからめて特集されたことは私の記憶にはありません。

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永易写真400

永易至文(ながやす・しぶん)

1966年、愛媛県生まれ。東京大学文学部(中国文学科)卒。人文・教育書系の出版社を経て2001年からフリーランス。ゲイコミュニティーの活動に参加する一方、ライターとしてゲイの老後やHIV陽性者の問題をテーマとする。2013年、行政書士の資格を取得、性的マイノリティサポートに強い東中野さくら行政書士事務所を開設。同年、特定非営利活動法人パープル・ハンズ設立、事務局長就任。著書に『ふたりで安心して最後まで暮らすための本』『にじ色ライフプランニング入門』『同性パートナー生活読本』など。

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1件 のコメント

米保守州でとんでもないセラピー法が。

カイカタ

もう精神病ではないのですから、心理療法士(セラピー)が積極的に動くべき。 アメリカのテネシー州では、セラピーが宗教上の理由でLGBTのカウンセリ...

もう精神病ではないのですから、心理療法士(セラピー)が積極的に動くべき。

アメリカのテネシー州では、セラピーが宗教上の理由でLGBTのカウンセリングを拒否できる法律が可決されました。ただ、それに対して、全米カウンセリング協会が抗議して、学会の開催を同州内でする予定を変更したとのこと。案外、アメリカの方が保守的で宗教という大きな障害があるということですね。

日本のセラピーには何ができるか。

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