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私のマラソン道

コラム

100キロなんてこわくない

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東京本社メディア局データベース部 岩佐 譲

鍛えれば人間の体は進化する

2014年の第1回福岡マラソン。沿道で取材中の同僚が撮影

2014年の第1回福岡マラソン。沿道で取材中の同僚が撮影

 「100キロを走ってみない?」。友人から誘われた。

 「無理だよ」。すぐにそう答えた。マラソンを始めて1年、ようやくフルマラソンの42.195キロを完走したばかり。それより長い距離なんて想像がつかなかった。

 東京マラソンを走ってみたいという、ありふれた理由で走り始めた。そして走る楽しさを知り、その後もレースに出続けている。

 人生は思い通りにいかないことが多い。読売新聞写真部でニュースの最前線にいた頃は、狙った通りの写真が撮れないなんてことは日常茶飯事だった。例えば1994年のプロ野球日本シリーズ。長嶋巨人で初めての日本一の胴上げを3塁側カメラマン席から狙った。巨人が勝ち、ミスターがグラウンドに出てきた。選手が集まり胴上げが始まった瞬間、ミスターは身を翻し反対側を向いてしまった。歓喜の表情は一枚も撮れなかった。こっちを向くか、あっちを向くか。私は、そんなことで一喜一憂する人生を送ってきた。

 マラソンは違った。走れば走るほど速くなる。最初は1キロだって苦しかったのに、数回経験しただけで楽に感じるようになり、5キロ、10キロとトレーニングで走る距離は伸びていった。休日ともなれば、20キロ以上走ることもある。人間の体は鍛えれば進化するものだ、と身をもって知った。

 マラソンブームもあり、全国各地で次々と新しい大会が行われるようになった。第1回静岡マラソンや第1回福岡マラソンなど、かつての赴任地で開催されるレースを目標にして自己ベストを更新し続けた。全国紙のカメラマンならではの特典もある。大阪マラソンや福岡マラソン、つくばマラソンでは沿道やゴールで同僚カメラマンたちが写真を撮ってくれた。

1キロ7分程度でゆっくり長く走る

 2015年3月、多くの市民ランナーが目標とするサブ4(フルマラソンで4時間を切ること)を達成した。マラソンを始めて3年目。55歳の春だった。

 一つの目標を達成し、次に頭に浮かんだのが100キロへの挑戦だった。友人に誘われた「いわて銀河100kmチャレンジマラソン」は自然豊かな気持ちのいいコースと聞く。でも、そんな長い距離を本当に走れるのか? 不安な気持ちでエントリーした。

 42.195キロより長い距離のマラソンをウルトラマラソンと呼ぶ。インターネットでウルトラの練習方法を調べてみた。月に最低200キロを3か月続けることが完走の条件と書いてあった。フルマラソンのトレーニングでも月に150キロ以上は走る。月に200キロが厳しいとは思わなかった。通っているジムに同じレースの経験者がいたので、一緒に走らせてもらった。フルなら4時間を切るために、1キロを5分30秒より速いペースで走る。ウルトラを完走するためには1キロ7分程度で、ゆっくり長い距離を走るのだと教わった。

 マラソンのトレーニングで一番つらいのは何か? 私はスピードだと断言する。暑さや坂道もつらいけど、自分ではどうにもならない。だけど、スピードは「もうだめだ」「のんびり走ろう」「今日はやめて、明日から真剣に走ろう」など、次々浮かんでくる甘い考えと闘わなければならない。スピードとの闘いは自分との闘いなのだ。息を切らせてハアハア言いながら自分を追い詰めるフルマラソンと比べれば、ウルトラに向けてゆっくり走るトレーニングはむしろ楽だった。

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 マラソンやランニングが、ライフスタイルとして定着しつつあります。週末、各地の大会に出かける人も多い中、あなたのオフィスの隣の人がランナーかも? 読売新聞社内のマラソンランナーが、国内外の大会に参加した体験記、トレーニング法、仕事との両立など、マラソンへの思いを語ります。

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