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人はどこで亡くなっているの?
「自宅で」半数以上が願う


年をとったら
病院で亡くなるの?
人々が、どんな場所で亡くなっているのかを見てみよう。2014年は、77%の人が病院や診療所で亡くなった。多くの人が病院のベッドの上で最期を迎えていることが分かるね。
昔は、自宅で亡くなる人の方が多かったんだ。前回の東京五輪が開かれた1964年は、病院や診療所での最期が28%で、自宅が65%。居間に敷いた布団の中で、家族や親類に見守られながら息を引き取ることは、珍しくなかったんだよ。
その後、病院で亡くなる人が増え続け、70年代に逆転した。様々な要因があるけれど、その一つはみんなでお金を出し合い、必要な時に安い負担で医療にかかれる「国民皆保険」が61年に始まったことだ。誰でも病院に行くことが普通になり、入院ベッド数も増えた。
73年から、70歳以上の医療費が無料化されたことも大きい。この制度は83年に廃止されたが、お年寄りにとって病院がますます身近になり、死ぬまで寝たきりで長期入院するケースが多くなった。医療技術も進歩を続け、できる限りの治療を受けた末に病院で亡くなることが、当たり前になっていったんだ。
ただ、内閣府が12年、55歳以上の約2000人に「最期を迎えたい場所」を聞いたところ、「自宅」と答えた人が55%で一番多かった。「病院などの医療施設」は28%にとどまった。実際は、我が家で死を迎えたいと願う人も多いんだ。
現状には問題もある。高齢化に伴い、年間死者数は増え続け、約20年後には現在より40万人多い約167万人に達すると推計されている。これだけの人数を病院では受け入れきれないと、国は心配しているんだ。お年寄りへの高度な治療が、本人や家族の負担になっているという声もある。
そこで、医師や看護師が自宅や介護施設を訪れて診療し、急変時にも対応する在宅医療の充実に国は力を入れている。体制整備はまだ手探りだが、住み慣れた場所での穏やかな死が、当たり前になる時代が来るかもしれない。どこで死を迎えたいか、元気なうちから話し合い、家族の希望を知っておくことも大事だね。(手嶋由梨)
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