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在宅訪問管理栄養士しおじゅんのゆるっと楽しむ健康食生活

医療・健康・介護のコラム

何をどう食べればダイエットになるのでしょうか?

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夏休みに由良海岸で見た夕日は心の栄養になりました(山形県鶴岡市で)

夏休みに由良海岸で見た夕日は心の栄養になりました(山形県鶴岡市で)

 東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県七ヶ浜町の 菖蒲田(しょうぶた) 海水浴場は、2017年からの本格稼働を目指し、今年7月29日から10日間だけ試験的にプレオープンしました。

 かつてはたくさんの海水浴客でにぎわっていた浜ですが、震災後は遊泳禁止になっていました。あれから5年。多くのボランティアの清掃活動や地元の関係者の努力によって、再びたくさんの人が訪れる浜になっていました。

 夏といえば海。私も、子どもたちと一緒に菖蒲田海水浴場に出かけ、家族そろって海水浴を楽しみました。この海水浴場はサーフィンのスポットでもあり、ときどき大きな波が押し寄せてくるのですが、そのたびに浮き輪にしがみつきながらはしゃぐ子どもたちの笑い声が波打ち際に響いていました。

 そして海と言えば水着。水着を着るには、たるんだおなかをなんとかしなくてはいけないと、実は私、6月からダイエットを開始していました。

 ダイエットとはいっても、私は「○○ダイエット」などの 流行(はや) りのダイエット法はやったことがありません。何かに偏ったダイエット法は、健康を害する可能性が高いからです。また、ただ体重を減らすというよりは、筋肉をつけて体を「締める」ことを第一にしています。食べなければ痩せますが、そのとき、体が必要とする栄養まで取らずにいると、肌は荒れ、疲れは取れず、気持ちもイライラしてきます。

 それでは、「何をどれだけ」食べればよいのでしょうか。

 ダイエットをするにしても、「自分に適した食事の量」がわからないまま、「どのくらいの栄養量なのかわからない食事」を食べ続けるのは、自分の足のサイズがわからないのに、サイズのわからない靴を履いて歩くようなものです。

 私たちの体に必要な栄養量をわかっていて、ちょうどいい量の食事を食べたら、自然におなかがいっぱいになるようにできていれば、大きな体重増はないはずですが、「食べた量」が「必要な量」を上回ってしまえば、当然ながら余分な脂肪として蓄えることになってしまいます。

 管理栄養士にとって「日本人の食事摂取基準」は必携です。患者さんごとに「必要栄養量」を考える際に必ずこれで確認をします。厚生労働省から5年ごとに発表されており、昨年、最新版が発表されました(※1)。

 ダイエットを始めるにあたり、この基準に基づいて、私の必要エネルギー量を求めてみました。

 身長154cmの私には、座っていることが多い日で約1500kcal、家事、買い物、仕事などで動く時間が多い日では約1800kcalが必要でした。ということは、最低でも1食あたり500kcalは摂取する必要があります。

 ところで、みなさんは空揚げが主菜の食事では何個召し上がりますか?

 参考までに、空揚げは1個80~100kcal程度です。3個食べたら240~300kcal、私のいつものごはん1膳分(150g)は250kcalですから、それにサラダなどをつければもう500kcalになります。500kcalの食事は、意外と少ないと思いませんか。もちろん、工夫次第で満腹感の得られる献立を作ることは可能ですが、それには少し知識が必要です。例えば、鶏肉の皮の部分は脂質が多く含まれるため、皮の部分を少し切り取ってから衣をつければ、1個あたりのエネルギー量が低くなるため、個数を増やすことができます。キノコや海藻をたっぷり使ったサラダを添えれば、全体のエネルギー量を抑えながら満腹感を得ることができます。

 そして食事の工夫だけでなく運動も必要です。仕事と家事育児で忙しく、しっかりと運動する時間を取るのは難しいため、なるべくエレベーターを使わずに階段を速足で上り、晴れた日は自転車で通勤するようにしました。さらに、毎日腹筋のトレーニングを30回行いました。その結果、1か月に約1kgのペースで体重が減っています。

 ダイエットは、1か月に0.5~1kgの減量で十分です。よく健康食品などのうたい文句に「2週間で10kgの減量!」などと宣伝されていることがありますが、そのようなダイエットは危険です。時間をかけて、栄養不足を防ぎながらゆっくりと健康的に痩せたいですね。

 1か月1kgでも、半年に合計6kgも減らせます。野菜やたんぱく質源の食品(肉・魚・卵・豆・乳製品)をしっかりと摂りながら、ダイエットをきっかけとして「より健康的な食生活習慣」を身につけることが大切です。

 さて、私のダイエットはといいますと、目標体重まではまだ道半ばですが、10年前に購入したビキニをなんとか着用することができました。

 宮城県内だけでなく、今年は初めて日本海側でも海水浴を楽しみました。日本海に沈む美しい夕日を見て、「心の栄養」もしっかり補給することができました。写真は、そのとき山形県鶴岡市 由良(ゆら) 海岸で見た夕日です。

 さきほど、自分に必要な栄養量を靴に例えましたが、自分の足のサイズが分かり、それに合った靴のサイズだとしても、本当に自分にぴったりかどうかは、履いてみなければわかりません。食事摂取基準も「食べてみないとわからない」ので、絶対的なものではありません。食事の質と量に気を付けながら、毎日体重を量り、「自分のからだを知る」ことがダイエットのポイントです。脱衣所にグラフを貼り付け、毎日決まった時間に体重の変動を記録するだけでも、意識が変わりダイエットにつながることがあります。

 食事摂取基準2015年版策定検討会ワーキンググループ座長の佐々木敏先生は「食事摂取基準入門 そのこころを読む」という著書(※2)の中で、『「数値=どうすべきか」ではなくて、「数値+状況=どうすべきか」ということです』と述べられています。

状況は毎日変わります。変えることもできます。

 靴を選ぶことと同様に、食事摂取基準で自分の「必要栄養サイズ」を求めるだけでなく、自分の状況を踏まえて、「食事量を調整する能力を身に付けること」が、長い目で見ても理想的なダイエットだと思います。

※1「日本人の食事摂取基準 2015年版」菱田明 佐々木敏 監修 第一出版株式会社
厚生労働省ホームページ http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000041824.html

※2「食事摂取基準入門 そのこころを読む」 佐々木敏 著 同文書院

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塩野崎顔2_100

塩野崎淳子(しおのざき・じゅんこ)

 「訪問栄養サポートセンター仙台(むらた日帰り外科手術WOCクリニック内)」在宅訪問管理栄養士

 1978年、大阪府生まれ。2001年、女子栄養大学栄養学部卒。栄養士・管理栄養士・介護支援専門員。長期療養型病院勤務を経て、2010年、訪問看護ステーションの介護支援専門員(ケアマネジャー)として在宅療養者の支援を行う。現在は在宅訪問管理栄養士として活動。

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