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筋ジストロフィーの詩人 岩崎航の航海日誌

yomiDr.記事アーカイブ

希望することの力を信じる

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 「第一条の二」に、法の趣旨である基本理念として、障害者が日常生活、社会生活を営むため、必要な支援のありかたについて、このように書かれていました。一部、引用します。

 全ての障害者及び障害児が可能な限りその身近な場所において必要な日常生活又は社会生活を営むための支援を受けられることにより社会参加の機会が確保されること及びどこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと

 えらく感動してしまいました。太く赤い線を引きたくなりました。

ひまわりの芽は日々成長している(7月21日撮影)

ひまわりの芽は日々成長している(7月21日撮影)

 この文言に沿って考えるなら、胃瘻いろうからの経管栄養を行い、人工呼吸器をつけて、日常生活動作のすべてに介助が必要な障害者も、自分がどこで住むのか。一人で住むか、誰かと住むのか。選択の機会が確保されるということになります。決めるにあたっては、本人の意思だけではなく、人間関係や経済的なことにも影響されるかもしれませんが、“障害がある”そのことだけで判断を固定化されないというのは光明です。実際はそのようになっていないことを思い知ってきましたが、私は「まあ、仕方ないか」と諦めることをやめようと思います。ヘルパーと両親で支えられてきた介護態勢のうち、両親が介護を担えなくなってきました。でも、これからも自宅で暮らしたい。地域で社会人として自ら暮らしを作っていくなら、ヘルパーに介護をお願いする他に道はありません。

初めの一歩で、決意を試される

 障害を持ち生活していて、困ったこと、新たにこうしていきたいなどの意思があったら、計画相談支援を依頼している担当相談員に連絡をします。私にとっては自分の暮らしを作っていくための初めの一歩。まずは二者でのケア会議をしたいと申し入れをしますと、早速、その相談員がもう1人別の職員と2人で訪問してくれました。

 話し合いの場では、70代半ばの高齢で持病の悪化もある両親が私の介護を担い続けることができないこと、夕方6時から翌朝9時までの夜間、早朝の介護も必要になることから、従来の短時間介護を想定した「居宅介護」から、見守りを含めた長時間連続での介護が可能になる「重度訪問介護」への切り替えと、1日24時間の介護支給を申請して、新たに介護態勢を再構築したいという私の意向を伝えました。

 ここで予想だにしないことを言われます。

 「ヘルパーは見守りができません」

 そして「重度訪問介護」の介護支給は求めず、これまでの「居宅介護」の介護時間数を細切れでも良いから増やしていけばいいのではないか、という方針を提示してきました。

 相談員が、なぜそのような提示をしたかについては、それなりの理由があります。

 介護の人手不足が長年にわたって大きな社会問題になっていることは、多くの人が知っていると思います。人の命や生活をじかに支える大切な仕事にもかかわらず、その内容に見合わない低い報酬が制度で設定されていて、働く環境も厳しいままに置かれていることが原因と言われています。居宅介護と違い、重度訪問介護はその内容や報酬単価の低さから引き受ける事業者が少ない。「ヘルパー確保をさらに難しくするより、少しでもヘルパー介助の上積みが見込めるやり方を取ったほうがよいでしょう」という消極的な考えかたです。

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yomidr_iwasaki

岩崎 航(いわさき・わたる)

 1976年、仙台市生まれ。本名は岩崎稔。3歳ごろ、筋ジストロフィーを発症する。現在は胃瘻と人工呼吸器を使用し、仙台市内の自宅で両親と暮らす。25歳から詩作を始め、2013年、詩集『点滴ポール 生き抜くという旗印』、15年、エッセイ集『日付の大きいカレンダー』(共にナナロク社)を出版。16年、創作の日々がNHKのETV特集で全国放送され、話題を集める。公式ブログ「航のSKY NOTE」で新作を発表中。

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2件 のコメント

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当事者同士の横の連携を強めて

かもちゃん

ALSの方の在宅生活を支援していた頃の経験をお話しします。 岩崎さんの指摘される通り、人工呼吸器をつけて生活している難病患者の方は障害者総合支援...

ALSの方の在宅生活を支援していた頃の経験をお話しします。

岩崎さんの指摘される通り、人工呼吸器をつけて生活している難病患者の方は障害者総合支援法の重度訪問介護と介護保険を併用して見守りを含む24時間の介護を受けることが可能ですし、現にそれで独り暮らしをされている方も珍しくはありません。

一方で、相談支援専門員の制度理解の不充分さや、地域によってはヘルパー確保が難しいなどの問題があるのも事実です。

情報不足や人材不足の問題を解決していくためにも、ぜひ患者さん同士や支援者を含めた横の繋がりを拡げることをお勧めします。

地道な努力ですが、当事者のみなさんが諦めずに声をあげていくことがとても大切だと思います。

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同感です

さっちゃん

いつも大切にこのコラムを読ませていただいているケアマネジャーです。 思わずメッセージを書かせていただきました。 今回は特に、支援を仕事にさせてい...

いつも大切にこのコラムを読ませていただいているケアマネジャーです。
思わずメッセージを書かせていただきました。
今回は特に、支援を仕事にさせていただいている者にとって特に大切なメッセージをいただきましたように思います。
岩崎さんの思いは支援を必要とされている方すべての方が感じておられることと思いますし、それを出発点にした介護でなければいけないと思います。
この思いを胸に日本の片隅で少しでも貢献できるケアマネでありたいと思います。

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