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医療・健康・介護のコラム
近親者から性的虐待を受けた女性…自助グループ「SIAb.(シアブ)」を結成し活動
医療ルネサンス「虐待とトラウマ」の中で、「性的虐待」を取り上げました。幼少期に近親者から性的な行為を強いられる虐待で、被害者は男女ともにいます。性的虐待で体にあざなど、傷ができるようなことは少ないとされ、一見して虐待を受けていることを周囲は気づきにくいと言います。被害者も「話しにくい」と言って、なかなか被害について語らず、発覚しないことがままあります。
それだけに、被害者の多くは受けた心の傷を1人で抱えています。親などの近親者から受けた行為ということで、レイプなどとは違って、単純に「加害者」を憎めば良いというものでもなく、大人になっても様々な葛藤を背負いながら生きている人が多くいます。
兄とは「共犯的な感覚」、父親からは「絶望的な感覚」、母には「罪悪感」
紙面に取り上げなかった女性(47)について紹介します。この女性は幼少期、父親や兄から性的虐待を受けていたと言います。
「同じ行為を受けたとしても、兄とは『共犯的な感覚』、父親からは『絶望的な感覚』でした」。父から行為を受けたことに対しては、「母への罪悪感もあった」と複雑な心境を語られていました。
虐待を受けた人は、思春期になると非行など衝動的な行動に走る場合があります。この女性の場合、中学生でシンナーを吸い始めました。ただ、学校で生活指導を受けたことをきっかけに、性的虐待の事実が発覚したのだそうです。
しかし、問題はこれで解決したわけではありませんでした。その後、長期間にわたり、性依存や不眠などに悩まされます。精神科で治療を受け、性的虐待の被害から何年もたってようやく、体調などが少しずつ回復していったといいます。
「同じ境遇の人たちと語り合える場を作りたい」。そう考えた女性は2013年、紙面で紹介した自助グループ「SIAb.(シアブ)」をつくりました。近親者から性的虐待を受けた女性のみを対象にしたグループです。
近親者から性的虐待を受けた女性たちが定期的に集まり、「今」の心の悩みや思い、体験談などを語り合います。「余計な説明をしなくても気持ちを共有できる」そうです。メンバーの多くは30~40歳代。性的虐待は、その人の人生に長きにわたり影響を与えます。シアブのホームページ(http://siab.jp/)には、活動の模様を映した動画もアップされています。女性は「多くの人にシアブのことを知ってほしい」と話しています。性的虐待を受けて悩んでいる方がいらしたら、ぜひホームページをのぞいてみてはいかがでしょうか。(利根川昌紀)

利根川昌紀
2006年12月から医療情報部(現医療部)。趣味はサッカー観戦。
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