文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

がん診療の誤解を解く 腫瘍内科医Dr.勝俣の視点

医療・健康・介護のコラム

トンデモ医療に引っかからないために(下)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

手っ取り早くトンデモ医療を見抜きたい人のために

 正しい情報を得るためには、どうすればよいかということを解説してきました。

 もっと手っ取り早くインチキなトンデモ医療を見抜きたい人のために、以下の表をつくりました。

トンデモ医療を見分けるための5つのポイント

  1. 保険が利かない高額医療
  2. 体験談が載せられている
  3. ○○免疫クリニック、最新○○免疫療法
  4. 先進医療に指定されていない
  5. 奇跡の○○治療、末期がんからの生還

 このうち、2つ以上当てはまるとトンデモ医療であることは確実!!

 1つだけ当てはまっても要注意ですが、2つ以上当てはまればインチキは確実。

 惑わされやすいのが、がん患者による体験談です。

 図にも示しましたが、個人の意見や、体験談は、医学情報としては、最も信頼度が低いものとなります。

 個人のデータというのはわかりやすいので、つい信じてしまいがちになりますが、信頼性といった点では、乏しい情報です。

 個人の体験談、経験談だけでは、本当にその治療法が良かったかどうなのかはわかりません。

  • 別の患者でも同じ治療法で同じ効果が得られる「再現性」はあるのか?
  • その治療をしなかった場合はどうなのか?
  • ほかの治療と比べるとどうなのか?
  • ほかの治療と併用していたのではないか?
  • ○○という治療が効いたという客観的な証拠はあるのか? きちんと学会や医学論文として報告されているのか?

などなど、突っ込みどころは満載です。

 自由診療で保険外治療をしているクリニックでは、必ずと言ってよいほど、「〇〇治療でがんが消えた」など、個人の治療効果を紹介しています。

 このようなクリニックのサイトの体験談などは、真実かどうか疑わしいものも少なくありません。

 学会などに発表されたデータでもなく、よくよく読むと、ほかの治療と併用していたりして、その保険外の治療の効果とはとても言えないような結果であったり、 (うそ) や誇張が含まれていると考えた方がよいものがほとんどです。

 この表のなかに、「先進医療に指定されていない」とあります。

 「先進医療(5)」とは、将来に期待がされている治療で、まだ保険適用されていませんが、厚生労働省が指定して、混合診療(患者さんの自己負担となる保険外診療と保険医療の併用をすること)を例外的に認めている医療です。

 先進医療も、研究段階の医療であり、有効性は確立されていない治療なのですが、先進医療にも指定されていないのに、怪しいクリニックでは、「先進医療」「最先端医療」などと宣伝しているところもあるので、なお注意が必要と思います。

トンデモ医療をなくすために

 情報化が進んだ現代で、トンデモ医療が横行してしまっている現状はとても嘆かわしい状況と思います。

 こうしたトンデモ医療は、一部では、がん患者さんを利用したビジネスと化しているものもあります。

 がん患者さんは、「 (わら) にもすがる気持ちで」、医師が言ったこと、医師がやっていることだから、とつい信じてしまいがちです。

 患者さんの弱みにつけこんで、ビジネスにしようとするトンデモ医療は許されるべきではないと思っています。

 こうしたトンデモ医療に惑わされない、だまされないようにするために、皆で声をあげていく必要もあると思っています。

 また、トンデモ医療に騙されない患者の知恵をぜひつけていってほしいと思います。

参考

  1. 国立がん研究センターがん情報サービス がん診療連携拠点病院などを探す
    http://hospdb.ganjoho.jp/kyotendb.nsf/xpKyotenSearchTop.xsp
  2. Minds(マインズ)ガイドラインセンター
    https://minds.jcqhc.or.jp/n/medical_user_main.php
  3. 国立がん研究センターがん対策情報センター がん情報サービスレファレンスリスト
    http://ganjoho.jp/public/dia_tre/index.html
  4. NCI PDQ®日本語版 がん情報要約
    http://cancerinfo.tri-kobe.org/pdq/summary/index.html
  5. 厚生労働省 先進医療の概要について
    http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/sensiniryo/

3 / 3

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

katsumata

勝俣範之(かつまた・のりゆき)

 日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授

 1963年、山梨県生まれ。88年、富山医科薬科大卒。92年国立がんセンター中央病院内科レジデント。その後、同センター専門修練医、第一領域外来部乳腺科医員を経て、2003年同薬物療法部薬物療法室医長。04年ハーバード大学公衆衛生院留学。10年、独立行政法人国立がん研究センター中央病院 乳腺科・腫瘍内科外来医長。2011年より現職。近著に『医療否定本の?』(扶桑社)がある。専門は腫瘍内科学、婦人科がん化学療法、がん支持療法、がんサバイバーケア。がん薬物療法専門医。

がん診療の誤解を解く 腫瘍内科医Dr.勝俣の視点の一覧を見る

3件 のコメント

コメントを書く

健康保険適用の治療もハイレベル

すずめの父

オプジーボの健康保険適用が話題になっています。健康保険適用の可否を,どのように決めているか,調べたことがあります。 最終的に,エビデンスがあり,...

オプジーボの健康保険適用が話題になっています。健康保険適用の可否を,どのように決めているか,調べたことがあります。
最終的に,エビデンスがあり,効果が認められた治療法が,健康保険適用になっています。オプジーボのように,高価な治療法も保険適用になりました。逆に見ると,保険適用外の治療法は,エビデンス・効果に不備があることになります。
がん患者・家族は,お金をかけたり,苦労することで,治療の効果が高まると思いこむ傾向があります。現実を知り,賢くなる必要があると思います。健康保険適用の治療でも素晴らしくハイレベルです。高額医療費補助制度で,金額に麻痺する傾向にありますが,健康保険適用の治療も高価(保険点数×10円で分かる)なものが多いです。私は,健康保険制度が健全に維持できるよう,皆様が健康で暮らせるよう,気を使っています。病人の礼儀作法と考えています。

つづきを読む

違反報告

ありがとうございます

すずめの父

私が1回目のステージⅣのがんを治療した7年前,ネットの情報は貧弱で,書籍の情報の方が強靭でした。K医師の提灯持ちの医療否定論者,奇跡をひたすら信...

私が1回目のステージⅣのがんを治療した7年前,ネットの情報は貧弱で,書籍の情報の方が強靭でした。K医師の提灯持ちの医療否定論者,奇跡をひたすら信じる楽天家が闊歩していました。どちらも傲慢で,がん患者を見下したものでした。
私の仕事上の常識から,「多数の専門家が学会で議論した情報(成果)が一番信用できる」と考え,ガイドラインに基づく治療(根治)をお願いしました。ありがたいことに,ガイドラインはネットで閲覧できました。2年間・手術10回で,がんを切除できました。
現在,2回目(新規)のステージⅣのがんを発症しました。これも,ガイドラインに基づき治療(延命治療)しています。
勝俣先生ご指摘の情報源は,私の感覚・経験に一致しています。自分が,間違った情報に踊らされていないことが分かり,うれしいです。ありがとうございます。
多くのがん患者が,情報過多に悩んでいます。勝俣先生の見解が,YOLばかりでなく,読売新聞紙面で掲載されることを望みます。

つづきを読む

違反報告

トンデモ医療

予備軍

先生の勇気ある啓蒙活動に頭が下がる思いです。 私の知人も何度か付き添いでトンデモ医療と思われる免疫療法をかかげる医院に行ったことがあります。 超...

先生の勇気ある啓蒙活動に頭が下がる思いです。
私の知人も何度か付き添いでトンデモ医療と思われる免疫療法をかかげる医院に行ったことがあります。
超豪華な待合室、ここでだけしか受けられないという、科学の最先端を行くらしい特別な治療、勉強しているとはとても思われない赤い爪の医師、海外留学の立派な経歴。意味不明な特許、などなど。
医師の自信満々な専門用語多様の説明を聞きながら、もし本当ならノーベル賞級なのではないだろうかと思ったそうです。

癌はおそらく人それぞれで、抗癌剤が効果的に作用する人がいたり、副作用で苦しむばかりの人がいたり、といったように治療経過が単純ではないので(と素人判断で思っています)、そんなところが悪徳に「つけ入れられやすい」のかな、と思います。

つづきを読む

違反報告

すべてのコメントを読む

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事