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がん診療の誤解を解く 腫瘍内科医Dr.勝俣の視点

コラム

トンデモ医療に引っかからないために(下)

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 前回は、インターネットのがん情報は信頼できないこと、また、一般書店に置いてある書籍なども、信頼できるものが少ないこと、についてお話しいたしました。

 正しい情報が不足している状況で、医師が行うトンデモ医療が横行している現在です。

 では、患者さんは、トンデモ医療に引っかからないようにするために、どうすればよいでしょうか?

患者さんがまずすべきこと

 最もお勧めするのは、現在かかっている病院で、医療者に相談することです。主治医がゆっくりと相談にのってくれれば、それに越したことはないのですが、一般的に、がん治療に関わっている医師は、相当多忙なのが現状です。

 その場合、看護師や、薬剤師、ソーシャルワーカーなどに相談してみることをお勧めします。

 また、がんの専門的な診療ができる病院として国が指定している「がん診療連携拠点病院」(1)には、「がん相談支援センター」の設置が義務付けられています。現在かかっている病院が、がん診療連携拠点病院でない患者さんも相談できますので、お近くの拠点病院を探してみてもよいでしょう。

正しい情報はどこに?

図1

図1

 一般の人が得られる情報で、正しい情報はどこにあるでしょうか?

 図1は、医学情報の信頼度(エビデンスレベル)をランク付けしたものです。

 これによりますと、最も高いランクに位置づけられる情報源は、優れた医学論文となります。実際、医学論文にも、ピンからキリまであり、ランダム(無作為)化比較臨床試験の結果が掲載されているものは最も信頼度が高いです。

 ランダム化比較臨床試験とは、新しい治療を受ける人と受けない人を無作為に分けて、治療結果を比較する試験のこと。たとえば、ビタミンCを飲む人と飲まない人を、年齢や性別、合併症の有無などを問わずに無作為に分けて、効果を調べる方法などがこれに当たります。

 このランダム化比較臨床試験にも実はランクがあり、対象者が少人数の研究だと信頼性は低下します。がんの臨床試験であれば、数百人規模の患者数を対象としたものであれば、信頼度はまずまずと言えます。

 ただこうした優れた医学研究の結果を一般の方が目にすることは非常に難しいのが現状です。

 メディアが、優れた医学研究の結果を正しく報道してくれればよいのですが、残念ながら、日本のメディアでは、正しい医学情報が適切に報道されているとは言えない状況と思います。

 「ランダム化比較臨床試験の結果……」などというメディア報道はほとんど聞いたことがありません。

 メディアのがん報道というと、信頼度が低い少人数での臨床研究の結果や、基礎実験(動物実験を含む)レベルの結果が多いのが特徴です。

 メディアでは、どちらかというと、正しく情報を伝えるということよりも、センセーショナリズムが優先されてしまうので、しょうがないのかもしれません。

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katsumata

勝俣範之(かつまた・のりゆき)

 日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授

 1963年、山梨県生まれ。88年、富山医科薬科大卒。92年国立がんセンター中央病院内科レジデント。その後、同センター専門修練医、第一領域外来部乳腺科医員を経て、2003年同薬物療法部薬物療法室医長。04年ハーバード大学公衆衛生院留学。10年、独立行政法人国立がん研究センター中央病院 乳腺科・腫瘍内科外来医長。2011年より現職。近著に『医療否定本の?』(扶桑社)がある。専門は腫瘍内科学、婦人科がん化学療法、がん支持療法、がんサバイバーケア。がん薬物療法専門医。

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3件 のコメント

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健康保険適用の治療もハイレベル

すずめの父

オプジーボの健康保険適用が話題になっています。健康保険適用の可否を,どのように決めているか,調べたことがあります。 最終的に,エビデンスがあり,...

オプジーボの健康保険適用が話題になっています。健康保険適用の可否を,どのように決めているか,調べたことがあります。
最終的に,エビデンスがあり,効果が認められた治療法が,健康保険適用になっています。オプジーボのように,高価な治療法も保険適用になりました。逆に見ると,保険適用外の治療法は,エビデンス・効果に不備があることになります。
がん患者・家族は,お金をかけたり,苦労することで,治療の効果が高まると思いこむ傾向があります。現実を知り,賢くなる必要があると思います。健康保険適用の治療でも素晴らしくハイレベルです。高額医療費補助制度で,金額に麻痺する傾向にありますが,健康保険適用の治療も高価(保険点数×10円で分かる)なものが多いです。私は,健康保険制度が健全に維持できるよう,皆様が健康で暮らせるよう,気を使っています。病人の礼儀作法と考えています。

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ありがとうございます

すずめの父

私が1回目のステージⅣのがんを治療した7年前,ネットの情報は貧弱で,書籍の情報の方が強靭でした。K医師の提灯持ちの医療否定論者,奇跡をひたすら信...

私が1回目のステージⅣのがんを治療した7年前,ネットの情報は貧弱で,書籍の情報の方が強靭でした。K医師の提灯持ちの医療否定論者,奇跡をひたすら信じる楽天家が闊歩していました。どちらも傲慢で,がん患者を見下したものでした。
私の仕事上の常識から,「多数の専門家が学会で議論した情報(成果)が一番信用できる」と考え,ガイドラインに基づく治療(根治)をお願いしました。ありがたいことに,ガイドラインはネットで閲覧できました。2年間・手術10回で,がんを切除できました。
現在,2回目(新規)のステージⅣのがんを発症しました。これも,ガイドラインに基づき治療(延命治療)しています。
勝俣先生ご指摘の情報源は,私の感覚・経験に一致しています。自分が,間違った情報に踊らされていないことが分かり,うれしいです。ありがとうございます。
多くのがん患者が,情報過多に悩んでいます。勝俣先生の見解が,YOLばかりでなく,読売新聞紙面で掲載されることを望みます。

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トンデモ医療

予備軍

先生の勇気ある啓蒙活動に頭が下がる思いです。 私の知人も何度か付き添いでトンデモ医療と思われる免疫療法をかかげる医院に行ったことがあります。 超...

先生の勇気ある啓蒙活動に頭が下がる思いです。
私の知人も何度か付き添いでトンデモ医療と思われる免疫療法をかかげる医院に行ったことがあります。
超豪華な待合室、ここでだけしか受けられないという、科学の最先端を行くらしい特別な治療、勉強しているとはとても思われない赤い爪の医師、海外留学の立派な経歴。意味不明な特許、などなど。
医師の自信満々な専門用語多様の説明を聞きながら、もし本当ならノーベル賞級なのではないだろうかと思ったそうです。

癌はおそらく人それぞれで、抗癌剤が効果的に作用する人がいたり、副作用で苦しむばかりの人がいたり、といったように治療経過が単純ではないので(と素人判断で思っています)、そんなところが悪徳に「つけ入れられやすい」のかな、と思います。

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