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イグ・ノーベル・ドクター新見正則の日常

yomiDr.記事アーカイブ

いろいろな患者さんと接する日々…「生きる」ことの意味を考える

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 この毎週連載のエッセーも終了まで19回を残すところとなりました。今日も相模原事件に少々関連して書きたいと思います。

 まず、このエッセーの根底にあるメッセージは、

<1>医療は実は不確実で、今正しいと思われることを一生懸命に行っている

<2>人はいろいろ

<3>精いっぱいに生きて、潔く旅立つ

 以上の3つです。これを心に (とど) めながら書き続けてきました。

 そして、僕が思うマスメディアの役割のひとつは、いろいろな意見があることを提示して、考える材料を与えることだと思っています。医療においては、絶対に正しいことは実はそんなに多くはありません。正しいと思えることを一生懸命に行っていて、それは後日、本当に正しかったか、間違っていたかが判明します。しかし、今、医療を行う必要があるので、現状で出きる精いっぱいの努力をしているのです。だからこそ、医療ではいろいろな意見があることを提示することは大切だと痛感します。

 僕は外科医から医者人生が始まり、オックスフォード大学博士課程に留学してサイエンスに触れ、それをやり続けるために大学で博士課程の指導を行える動物実験の環境を整備し、アカデミック・サージャン(基礎的な研究も行う臨床医)として生きてきました。そして、日本で最初の保険診療によるセカンドオピニオン外来を開設し、がん・難病・奇病などの相談に乗ってきました。そんな方々をサポートしたくて、漢方や運動、食事、環境要因などに興味を持ち、今ではがん・難病のサポート外来を行っています。

 そんな外来での光景を今日はちょっとご披露して、「生きる」ことを考える一つの材料になればいいなと思っています。

 

患者Aさんとの会話

Aさん「先生、いつまでも元気でいて下さいね」

僕「僕も50歳を過ぎて、母も死んで、次は僕が逝く番だから、明日のことはわからないよね。年を取ると、欲が減ります。旅立つときは何も持って行けません。物欲、出世欲、名誉欲などなど、若い頃に比べると激減しますね。あなたもいつ死んでもいいように、心の準備はしてあるのですか?」

Aさん「私、死ねないです。障害を持っている息子がいて、彼をまず送るまでは、なんとか元気でいたいんです。よろしくお願いします」

 障害のある子供を持つ人は予想以上に多いのです。それはこんな会話から自然とわかってきます。生まれながらの知的障害のこともあります。生まれながらの運動障害のこともあります。また、事故で運動障害となった人もいます。事故で脳挫傷となり、寝たきりの人もいます。認知症で自分がわからないお年寄りもいます。いつ自分が、自分の家族が障害を持つ身になるかもしれません。

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知りたい!_20131107イグ・ノベーベル賞 新見正則さん(1)写真01

新見正則(にいみ まさのり)

 帝京大医学部准教授

 1959年、京都生まれ。85年、慶応義塾大医学部卒業。93年から英国オックスフォード大に留学し、98年から帝京大医学部外科。専門は血管外科、移植免疫学、東洋医学、スポーツ医学など幅広い。2013年9月に、マウスにオペラ「椿姫」を聴かせると移植した心臓が長持ちする研究でイグ・ノーベル賞受賞。主な著書に「死ぬならボケずにガンがいい」 (新潮社)、「患者必読 医者の僕がやっとわかったこと」 (朝日新聞出版社)、「誰でもぴんぴん生きられる―健康のカギを握る『レジリエンス』とは何か?」 (サンマーク出版)、「西洋医がすすめる漢方」 (新潮選書)など。トライアスロンに挑むスポーツマンでもある。

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