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心療眼科医・若倉雅登のひとりごと

コラム

ベンゾ系薬物の影響(2)眼瞼けいれん患者の40%、発症前に神経用剤を連用

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 眼痛、 羞明(しゅうめい) (まぶしさを過剰に感じる)、 霧視(むし) (霧がかかったように見える)は、ベンゾジアゼピン(以下ベンゾ)系薬物や、エチゾラム、ゾルピデム(ベンゾ系とは異なる分子構造を持ちながらも、薬理作用はほぼ同等)といった類似薬の連用で生じやすいのです。

 この事実は、私の臨床経験から発した現在進行中の臨床研究の中間集計においても、まず間違いないところです。

 ただ、そのことを多くの眼科医は気づいていませんし、こうした薬物を多く処方している、内科、精神神経科、神経内科、心療内科(メンタル科)や整形外科などの医師はほとんど知りません。

 このコラムで数回連続して取り上げた、目を開けていることが困難(専門用語では開瞼困難)な 眼瞼(がんけん) けいれんという病気 でも、眼痛、羞明、霧視といった感覚過敏症状がほぼ全例に出現します。この病では、ベンゾ系を含む大脳など神経系に働く薬物の連用が原因の場合がかなりあることを、私たちは2004年に英国科学誌で発表しています。それを私はことあるごとに学会などで強調していますので、だんだんと知っている眼科医は増えてはきています。

 まだ中間集計ですが、私の施設で診ている眼瞼けいれん患者の40%近くもが、神経用剤を発症以前に連用していることがわかりましたので、薬物性は決して珍しいものではありません。

 眼瞼けいれんにおける感覚過敏症状と、開瞼困難があまりない感覚過敏症状との境界は明確ではないのですが、私は後者を「ベンゾジアゼピン眼症」と称することを提唱しはじめております。

 ところが、この場合の目のさまざまな症状は、視力や視野検査には影響が出ず、眼科的診察で、眼球にも症状を説明できるような異常が見つかることはありません。

だからでしょうか、眼科医やほかの科の医師も、日常生活に大きな影響を与える重篤な症状としては認識しにくいようです。

 それゆえ、ベンゾ系が関与しているかもしれないと、私から、時には患者自身から処方している医師に伝えても、反応は必ずしも鋭敏ではありません。

副作用が生死に関わるものや、失明しうる状態になれば、医師も製薬会社もさすがに真剣になるでしょう。

 ところが目が痛い、眩しいなどは、たぶん「背中が (かゆ) い」程度にしか聞こえないのでしょう。「目が見えているなら、ほかの 些細(ささい) なことは我慢せよ」といった感覚のようです。

患者本人は、非常に (つら) く、生活の質を落とし、心の問題まで出ているのにです。自身がそうならないと、症状の重篤さがわからないとは、想像力が乏しすぎるのではなかろうかと思います。

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201505_第4回「読売医療サロン」_若倉

若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年東京生まれ。北里大学医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。日本神経眼科学会理事長、東京大学医学部非常勤講師、北里大学医学部客員教授などを歴任。15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ副理事長に就任。「医者で苦労する人、しない人 心療眼科医が本音で伝える患者学」、「絶望からはじまる患者力」(以上春秋社)、「心療眼科医が教える その目の不調は脳が原因」(集英社)、医療小説「茅花流しの診療所」、「蓮花谷話譚」(以上青志社)など著書多数。専門は、神経眼科、心療眼科。予約数を制限して1人あたりの診療時間を確保する特別外来を週前半に担当し、週後半は講演・著作活動のほか、NPO法人、患者会などでのボランティア活動に取り組む。

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