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基礎からわかるiPS細胞10年(3)企業や行政の動きは

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再生医療品に早期承認制度

基礎からわかるiPS細胞10年(3)企業や行政の動きは

 企業がiPS細胞を活用する動きが広がっている。

 大日本住友製薬は高橋政代・理化学研究所プロジェクトリーダーらと連携し、目の難病を治療する製品の開発に取り組む。溶液にiPS細胞から作る目の細胞を混ぜた移植用の製品だ。

 アステラス製薬は京大iPS細胞研究所と、iPS細胞で作った腎臓のもとになる細胞を、マウスに移植するなどして腎不全を治療する研究を行っている。

 ベンチャー企業のメガカリオンは、iPS細胞を使い、止血作用のある血小板製剤の製品化を目指している。輸血に頼らず、大量の製品を作ることができる。

 こうした前例がない再生医療製品をいち早く患者に届け、産業の育成も図るため、国は2014年、再生医療製品の「早期承認制度」を導入した。安全性が確認され、効果が推定されれば条件付きで承認し、患者が使えるようにする仕組みで、企業の収益を確保しやすくした。シート状に加工した脚の筋肉の細胞を、心臓病患者の心臓に貼って治療する製品が15年、同制度の初適用となり承認された。

 山中所長が12年にノーベル賞を受賞したのを機に、再生医療を進めるための政府の関連予算も拡大し、16年度当初は148億円が計上されている。

 iPS細胞は新薬開発にも役立つ。山中所長は「今までの薬開発では、先に試したネズミにはよく効いたのに、人間には効かない薬も多かった。患者由来のiPS細胞を使って病気の状態を再現すれば、ネズミには効かなくても、人間によく効く薬を効率的に探し出せる」という。武田薬品工業は京大iPS細胞研究所と、神経難病などの治療に有効な薬の研究を始めた。

 また、iPS細胞から作った臓器の細胞に薬を投与して、副作用をチェックできる。厚生労働省を中心に検査法を開発中だ。

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