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性とパートナーシップ

妊娠・育児・性の悩み

栗原康さんインタビュー(3)資本主義と恋愛至上主義と…大杉栄と伊藤野枝の生き方から

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栗原康さんインタビュー(3)資本主義と恋愛至上主義と…大杉栄と伊藤野枝の生き方から

 ――栗原さんは、著書でご自身の失恋体験もオープンにしてくださって、それがまた面白いですね。

 「ありがとうございます(笑)」

 ――しかし、伊藤野枝や大杉栄カップルに () れ込んで、ご自身もアナキストを名乗る栗原さんが、どうして資本主義にどっぷりつかった女性ばかりを好きになるのか不思議ですね。最初の彼女とは婚約までされて。

 「東日本大震災が起きた時、埼玉の実家にいたのですけれども、直後にパンを焼いて持ってきてくれたところにビリビリやられてしまったんですね(笑)。『こんなにみんな食べるのに大変な時に、無償の心が表れている。なんていい人なんだ!』と。友達からは後で、『パンを焼いてくる女子が何を求めているかはわかるだろ』とバカにされましたけれども(笑)」

 ――その頃には大杉栄もしっかり研究して、結婚制度には懐疑的だったはずなのに、結婚雑誌まで買って、準備を始めてしまったんですね。

 「恋愛すると、人は周りが見えなくなるじゃないですか。それに、『1回自分をゼロにして、思想さえも捨て去って、この子と付き合っていくぞ』と思ったんです。それも一つのアナキズムだと思うんです。大杉の思想でさえ自分の尺度にしちゃだめというか。とはいえなんですけど、結婚制度はだめだ、くそ食らえと頭ではわかっていたわけですよね。頭でわかっていれば何とかなる、と思っていたんです。頭で性別役割分業、夫の役割、妻の役割を作るのはだめだとわかっていれば、そこに自分はとらわれないという自信があった。しかし、実際に結婚に向けて動き始めると、とらわれるのですよね。当時、僕は全く働いていなかったのですが、彼女から『就職先見つけてきてよ』と言われて、いくら応募しても落ちてばかり。毎日彼女から『ちゃんとやってるの?』『今日の就活は何をしたの?』と糾弾の電話がかかってきて、『何もしてません』なんて言ったら、1時間ぐらい説教されて、最後にはゲーッと吐いてしまったりして……」

 ――その段階では何かおかしいぞ、からめ捕られていっているぞとは思わなかったんですか?

 「そうなると気づかなくなってしまいますね。自分の中では、このくらいなら努力してもいいかと譲歩しているつもりだったのです。根っこにあるのは、やりたいことしかやりたくないということなのですが、だんだん際限がなくなっていくのですね。制度は枠にしか過ぎないのに、制度の中に入ると、それが一般的で当たり前の姿であり、男女として正しいあり方であるという圧力が働く。一番きつかったのは、『男子は働くのが当たり前だよね』と言われて、抵抗していても、彼女の周りの友達や両親から一斉に説得にかかられたりする。いやいやそこに従っていくと、そのうち、自分でもそこにとらわれざるを得なくなってくるのです。最初は『仕事なんてくそ食らえ』と思っていたのに、就職がうまくいかないことが続くと、『オレ、やっぱりダメなのかな』と思い始めてくる。彼女からも鬼の首を取ったかのように、『そうでしょう? あなた自立した男じゃないのよ』と言われて、その思考回路に乗せられていく。僕はそこで別れましたが、あの時、少しでも仕事が取れたとしたら、泥沼にはまっていったと思うんです。もしかしたら、『自分はこんなに苦しい思いをして働いているのに、働かないやつはむかつく』と考えるようになっていたかもしれません」

 ――怖いですね。

 「制度というものには、どんなに (あらが) おうと思っても、抗わせない何かがある。気づくと、そこに道徳が立ちあがっちゃっているんですよね。これが標準だから合わせるのが当たり前なんだと。最初は反発を抱いていても、自ら進んでその中で正しい姿になろうと努力してしまったり、させられたりするというのはすごく恐ろしいことだと思いましたね。それまでは若干、制度を軽くみていたんです。結婚制度にしても、『生かせるものは何でも生かしてしまえ』くらいに軽く考えていました。経済的に籍を入れる方が楽ならば、制度を使ってしまってもいいのではないかと思っていた。貧乏人こそ制度を使えばいいと思っていたんです。でもやはり、怖いところがあるなと思い知りました。また、事実婚をしている友達に聞くと、子どもがいても、扶養にも入れるし、それで困ったことは何一つないと教えてもらいました」

 ――その彼女と別れて、婚約を解消してから、どうやって自分を取り戻していったのですか?

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3件 のコメント

昔も今もそして未来も苦難は存在する

温故知新

この話題はかなり難しいですね。なんとかDVDを探してそれを見てやっと理解できる内容です。「エロスプラス虐殺」と「心中天網島」などを見て当時の環境...

この話題はかなり難しいですね。なんとかDVDを探してそれを見てやっと理解できる内容です。「エロスプラス虐殺」と「心中天網島」などを見て当時の環境や風習を知らないと性への自由を求めるという内容がピンとこないです。
でもこれだけ便利になって医学やそのほかの技術の発展があっても社会の抑圧というもので性がコントロールされている不便さは昔とあまり変わりないのかと考えてしまいます。信じ合う二人の性の問題は根深いものがありますね。
生殖の為だけに性を語るのは簡単ですけど、それを実行するには困難が伴います。
それはきっと人間がもつ不思議な世界なのでしょう。とかく女性はこうあるべきという観念が自由に生きるというものを邪魔をするというか男社会の限界が間近に迫っているというか、そんな感想をもつ今回のコラムですね。

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カメロンパンの彼女!!

ufu

出てきましたねー!!w カメロンパンの彼女、平均的な方だと思うし、条件付きで先生を養う気もあったと思いますよ。 やっぱ栗原先生は特殊だと思う。 ...

出てきましたねー!!w
カメロンパンの彼女、平均的な方だと思うし、条件付きで先生を養う気もあったと思いますよ。


やっぱ栗原先生は特殊だと思う。
けど、憎めない方だと思います。


いつも思うんですけど、セックスが嫌いな人には人権ないですよねぇ。
拒否したら、もう何されても文句言うなよ感。

結婚感もそうだけど、セックス感も暗黙のルールが多過ぎる。

最近はやたら多様性とか理解しますよって言うけど、本当は全然そんなことは無くて狭くて息苦しい。

栗原先生みたいに年収10万円で奨学金借金600万円でも、文筆業や大学講師でなんとかなるのは特殊例だと思う。
結婚してないし、子供もいないし。
でも、コソコソ浮気したり、ぐちぐちずっと相手の文句言いながら暮らすより、全然いい。

頭堅い人ばっかりだと、本当疲れる。
我儘が正義だと思う。

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昔、読んだ本の事

昔、読んだ本の中に(正確な引用ではないですが)「安定した状態を壊すものが悪」である。と言うような趣旨の文章があったのを思い出しました。故に悪を体...

昔、読んだ本の中に(正確な引用ではないですが)「安定した状態を壊すものが悪」である。と言うような趣旨の文章があったのを思い出しました。故に悪を体現する人は、反体制派と言われるような人からは、ヒーローのように思われます。既得権益を壊そうとしている戦士なのです。この連載にも問題として提起されていますが
制度・慣習・常識と言われる考え方は多数派に指示され、ある意味淘汰され残っているものなので厄介ですが楽な面や安定を継続しやすい側面があります。完璧とは概念であり実際には無いもの。たぶん・・・。混乱は社会の仕組みを変えますし過渡期故のストレスを人々に与えます。でも未来永劫残る社会的な仕組みなどあるのでしょうか?

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