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ホントはどうなの?健康食品・サプリメント

国立健康・栄養研究所

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[イチョウ葉エキス]薬との併用、高齢者は慎重に

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 年を取ると誰でも、「物覚えが悪くなった」「物忘れがひどくなった」と感じるのではないでしょうか。イチョウ葉エキスは、そのような方に人気のサプリメント素材です。ドイツなどでは、認知機能等の改善効果を期待した医薬品として利用されており、有効性や安全性の臨床研究が多くあります。昨年から始まった機能性表示食品にも、イチョウ葉エキスを用いた製品があります。そこで今回は「イチョウ葉エキス」についてご紹介します。

イチョウ葉エキスとは

 イチョウ葉エキスは、緑色のイチョウ葉をエタノールやアセトンなどで処理し、不溶物や有害成分を除いて濃縮したものです。天然物由来なので、産地・収穫時期・エキスの調製法によって、含まれる成分の異なるエキスができてしまいます。例えば、イチョウ葉エキスを調製する際、海外ではアセトン、日本ではエタノールが使われています。そこでイチョウ葉エキスと称する原材料が一定の品質となるように、原材料の成分規格があります。それは、有効成分と考えられるフラボノイド配糖体(22-27%以上)、テルペンラクトン(5-7%以上)、有害成分と考えられるギンコール酸(5ppm以下)の規格です。なお、これらのフラボノイド配糖体やテルペンラクトンは、それぞれ複数の化合物から構成されているものの総称名であり、イチョウ葉エキスに含まれている個々の化合物を厳密に規定できるものではありません。

 

選ぶなら品質の確かな製品を

 日本の市場に流通しているイチョウ葉エキスは、食品の一つとして製造されており、医薬品レベルで品質管理ができているわけではありません。名称は同じイチョウ葉エキスでも、実際に摂取する製品の品質はあくまで食品レベルで、多様な品質の製品があると想定されます。以前、イチョウ葉エキスと称するサプリメントの中に、アレルギーとの関連が懸念されるギンコール酸を多量に含む粗悪品がありました。また、サプリメント関係の解説書の中に、「イチョウ葉を集めて自分でお茶を作る」という記事がありましたが、そのようにして調製したお茶に、かなり多量のギンコール酸が含まれていることも明らかにされています。以上のことから、イチョウ葉エキスを含むサプリメントを選ぶ時には、どのような品質の原材料が、どれだけの量で製品に含まれているかに注目することが重要です。ちなみに、原材料の成分規格があるイチョウ葉エキスで行われた臨床研究では、イチョウ葉エキスは、1日240mg(120mgを2回、80mgを3回など)以下で摂取されています。

 

最近の大規模試験による検証結果は否定的

 イチョウの木は生きた化石と言われるほど昔から存在しているので、イチョウ葉エキスにも神秘的な効果が期待できるといった広告がありますが、そのような事項は、イチョウ葉エキスの有効性とは何の関係もありません。

 原材料の成分規格を満たしたイチョウ葉エキスでは、多くの臨床試験が実施され、記憶障害、耳鳴り、めまいの改善などの効果が報告されています。それらの研究の多くは、少人数の対象者で検討された昔の研究で、現在のような厳密な条件では実施されていません。同様に昔は、効果があったという報告が発表されやすい状況でした。そこで最近、加齢による記憶障害や認知能力に対するイチョウ葉エキスの効果が、大規模な臨床試験で検討されました。残念ながら、大多数の人で実施された全体的な結果は、イチョウ葉エキスの有効性について否定的な内容でした。だからといって「イチョウ葉エキスには効果がない」とまでは言えません。個別の対象者でみると、昔の報告のような有効性があるかもしれません。

 摂取したものの影響は、摂取した製品の品質(有効成分や有害成分の含有量など)、摂取者の特性(年齢や体質、健常者か病者かなど)、摂取期間によって変わるからです。現時点で明確に言えることは、イチョウ葉エキスの認知能力に対する効果は、誰にでも期待できるわけではないということでしょう。また、イチョウ葉エキスの記憶等の有効性は、主に高齢者を対象に検討されており、若い人では検討されていません。そのため、若い受験生が記憶力を高める目的で、イチョウ葉エキスを摂取することの有効性の根拠はありません。

 

医薬品との飲み合わせに注意

 原材料に成分規格のあるイチョウ葉については、適切に用いれば経口摂取でおそらく安全と評価されています。知られている有害事象としては、消化管の不快症状、頭痛やめまい、動悸どうき、皮膚のアレルギー症状、血液凝固抑制薬(ワルファリンやアスピリン)との併用による出血の恐れが高まることなどです。このような有害事象の発生頻度は高くはなく、それが明らかにされているのは、イチョウ葉エキスが、ドイツなどで医薬品として多くの人に利用されてきたからです。そもそも、全ての人に安全なものはなく、利用する対象者や利用状況によって、望まない影響は出てくるもので、起こりうる有害事象を知っておくことは、安全な利用に役立ちます。

 イチョウ葉エキスの利用は高齢者で多いと推定され、高齢者は何らかの医薬品を服用しています。そこで特に注意しなければならないのは、イチョウ葉エキスと医薬品の飲み合わせです。イチョウ葉エキスと医薬品との飲み合わせに関する報告は、若干はあります。しかし、イチョウ葉エキスと称する製品が多様で、医薬品にもかなりの種類があり、現実的な飲み合わせの良しあしは、ほとんどわかっていません。少なくとも、自己判断で医薬品とイチョウ葉エキスを併用することは避けるべきです。そして、イチョウ葉エキスと医薬品を併用する際には、医師や薬剤師に相談するとともに、「いつ、どこの製品を、どれだけの量で摂取して、その時の体調はどうだったか(良かったか、変わらなかったか、発疹が出てきた、など)」というメモを取ることをお勧めします。メモがあれば、利用によって得られている良いという実感が確認でき、有害な影響が出た際の摂取中止の判断にも役立ちます。また、そのメモとお薬手帳を照合することで、医薬品との飲み合わせの良しあしも推定することができます。

 イチョウ葉エキスについて、さらに詳しく知りたい方は、国立健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報サイトを参照してみてください。

(国立健康・栄養研究所  梅垣敬三)

 

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