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宋美玄のママライフ実況中継

医療・健康・介護のコラム

障害や中絶のこと、よく考えずに一刀両断していませんか?

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中絶にも熟慮と葛藤 一刀両断の意見に待った!

湘南の海ではしゃぐ娘です

 梅雨が明け、とっても暑い日が続いていますね。先日、子連れで湘南の海に行き、娘はビーチでおおはしゃぎしてとても楽しかったようです。息子は20歳くらいの女性のグループにずっと 可愛(かわい) がっていただいて、これまた楽しそうでした。しかし私は熱中症になってしまい、頭痛がひどくて大変でした。子どもを楽しませながら、自分の体調を管理するのは難しいですね。娘が私の体調を心配して薬を持ってきてくれたりして(まさに痛み止めのCMのようでした)、なんてしっかりしてきたんだろうととても感激しました。大変な中にも (うれ) しいことがあるのが子育てですね。

  先週の記事 は、たくさんの方に読んでいただいたようですね。難しい問題にもかかわらず、コメントも頂きましてありがとうございました。人工妊娠中絶は、議論に終着点がない問題です。

 先週の記事では、今回の相模原市の事件で被害に遭われた方々と胎児の最大の違い(本当は比べるだけでもとても失礼なことだと思っているのですが)は、生きて来られた一日一日の積み重ねだということを書きました。

 それに対して、胎児にもそういう未来があったのではという声をいただきました。確かにそういう考えも出来ると思います。でもそう考えると、受精卵や極端な話精子や卵子にも生まれて日々を生きられた可能性があるということになり、受精卵の取り扱いや、避妊も議論の対象になってしまいます。おそらく、多くの方は受精卵や配偶子に生まれてきた人と同じ人権があるとは考えていないのではないでしょうか。育っていく胎児を人として認める、その明確な線引きは難しく、日本では母体保護法を基準に考えているというお話です。

障害ある子を産まない選択肢 賛否両論

 障害のある子どもを産まないという選択肢に関しては賛否両論あると思いますし、こちらのブログでもたびたび取り上げてきたテーマです。どんなに重い障害を持つ子どもでも産むべきという意見から、逆に障害があると分かっていて産むのは自己満足という極端な意見まで、インターネットを (にぎ) わせています。

 しかし、そもそも障害というものをひとくくりにするにはあまりにも種類も程度も多様で、一刀両断するような意見には逆に眉をひそめてしまいます。私が勤務する「FMC東京クリニック」では遺伝カウンセリングや出生前検査を行っていますが、ご自身が障害をお持ちで、子どもには同じ病気を持ってほしくないと考えられる方や、上のお子さんに障害があり、次のお子さんには同じ障害を持ってほしくないと考えられる方も多数相談に来られます。

 障害があっても、産んでみれば家族も本人もすべてを受け入れてハッピーになるというケースばかりでは当然なく、きれいごとを言うことは熟慮と葛藤の最中にある当事者に、不必要なまでの罪悪感を与えてしまうことも知るべきだと思います。

 生きている限り誰しもが障害を持つ可能性があります。 他人(ひと) 事と思ってよく考えないまま、こうあるべきだと結論づけてしまわないようにしたいと思います。

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宋 美玄(そん・みひょん)

産婦人科医、医学博士。

1976年、神戸市生まれ。川崎医科大学講師、ロンドン大学病院留学を経て、2010年から国内で産婦人科医として勤務。主な著書に「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」(ブックマン社)など。詳しくはこちら

このブログが本になりました。「内診台から覗いた高齢出産の真実」(中央公論新社、税別740円)。

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2件 のコメント

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「育てられない」ではなく・・・

トリ

れいさん、 >ダウン症は出生前診断でわかりますが、自閉症は今のところわかりません >比較的育てやすいといわれているダウンちゃんを育てられないから...

れいさん、

>ダウン症は出生前診断でわかりますが、自閉症は今のところわかりません
>比較的育てやすいといわれているダウンちゃんを育てられないからといって中絶するつもりだった人が、育てにくい子の代表格である自閉症児や四六時中介助が必要な重度心身障害の子を持った場合、どうやって受け入れていくのでしょう?

私も常々、同じことを思っていました。
「ダウン症の子は育てられないから、出生前診断で要請だったら中絶する」という人に、「自閉症など、出生前診断では分からない、ダウン症よりもっと大変な障害の子が生まれたら?」と聞いてみたいですね。

「その場合は捨てます、心中します」というなら、「ダウン症児は育てられない」というのは本当なのでしょう。

ですが、おそらく、「その場合は仕方ない。頑張って受け入れて育てるしかない」と答えるはず。

ダウン症よりも、もっと大変な障害児を、「頑張れば、育てられないことはない」と認識しているのですよね。それなのに、比較的育てやすいと言われるダウン症児を、「育てられない」というのは矛盾しています。

つまり、嘘なのです。本当は「育てられない」ではなく、「育てたくない」。

「頑張れば(=苦労すれば)育てられないことは無いが、そういう苦労をするのは嫌だから、出生後に発覚する障害ならば仕方ないが、事前に分かっているのであれば産みたくない。避けられる苦労は避けたい」ということですよね。

産みたくないと思うこと、中絶を選ぶこと自体は、否定しません。私だって苦労するのは嫌だし、分かっているなら産みたくないですから。

だけど、「育てられない」という、その言い方にはモヤモヤします。「そうじゃなくて、育てたくないんでしょ」と言いたくなってしまいます。

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障害児の中絶

れい

障害がある子を出産することで、母体に危険がある場合は中絶が選択されることはおいておいて、 障害児であれば中絶するという考えの場合、もし出生前診断...

障害がある子を出産することで、母体に危険がある場合は中絶が選択されることはおいておいて、
障害児であれば中絶するという考えの場合、もし出生前診断でわからない障害だったり、周産期要因で脳性麻痺になったりしたとき、受け入れて育てていけるのかと思います

確かに、障害のある子を育てるのは手間がかかるし、目指す自立が定型発達の子とは大きく変わってくるので、できるなら健常児と望む心境は理解できます
しかし、ダウン症は出生前診断でわかりますが、自閉症は今のところわかりません
比較的育てやすいといわれているダウンちゃんを育てられないからといって中絶するつもりだった人が、育てにくい子の代表格である自閉症児や四六時中介助が必要な重度心身障害の子を持った場合、どうやって受け入れていくのでしょう?
結局捨ててしまうのでしょうか?

出生前診断をして出産した人の、出生後に判明した障害に対する受容について、
ケース数としては少ないと思うのですが、出生前診断を行う医療者としてはフォローはしないのですか?

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