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ためこみ症…ゴミの山、心の空白埋める?

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カウンセリングで治療

 興味のある物を次々と買ったり集めたりして、使わなくなっても捨てられない。そんな経験がある人は多い。大抵は病気ではない。だが、集めた物が部屋に散乱して床が見えないくらいなのに、それでも物を捨てられない人は「ためこみ症」の可能性がある。

ためこみ症…ゴミの山、心の空白埋める?

ためこみ症患者の室内の様子を写真で示す中尾さん(九州大学病院で)

 ためこみ症は、2013年公開の 米国精神医学会の診断基準 で明確に定義された。物を集めても整理できず、家の中がひどく散らかった状態になり、生活する空間がなくなってしまう。一般に価値のない物でも、捨てるのに著しい苦痛を感じることも特徴とされる。

 ためこむ物は、新聞、雑誌、書類、チラシ、レジ袋、包装紙、空き箱、使い捨て容器などが多い。無料や安価で手に入る物が中心で「いつか使うかもしれない」とため込んでいく。だが、将来の使用に備えて整理するわけではなく、放置してゴミの山のように積み重なっていく。

 イヌやネコなどを多く飼っているのに十分に世話をせず、室内が極めて不衛生になっている人も、ペットのためこみ症の可能性がある。ペットを室内で多く飼っていても、世話や衛生管理ができていれば、ためこみ症とは言えない。

 美術品などの収集癖があっても、価値があるものを集め、整理し、飾るなどして楽しんでいる人もためこみ症ではない。

 治療は、患者の行動や考え方の癖を修正する認知行動療法的なカウンセリングが主体となる。

 九州地方の70歳代の女性は、同居の母親を亡くした20年ほど前からためこみ症状が強まった。実家は新聞やチラシ、衣類などで埋め尽くされて住めなくなり、近くの息子の家で暮らし始めた。そこでもためこみが続いたため、昨年、息子に伴われて九州大学病院(福岡市)の精神科神経科を受診した。

 女性は、ためこむ理由を「(情報や紙などは)いつか使うかもしれんから」と説明し、ためこみが自分や家族を追い込んでいるという自覚はなかった。この病気は患者に自覚がないことが多く、通院の継続は難しい。そこで、担当医は息子との面接を重ね、対応について話し合いを続けた。

 女性は物を捨てることを拒んできたが、「生前整理」という言葉に関心を示したため、地域で開かれた生前整理の講習を受けてもらった。以来、所有物の整理を意識するようになった。とはいえ、自分では捨てられず、長く使っていない物を廊下に出すのが精いっぱい。だがこれを契機に地域の保健師も関わり始め、今は所有物の段階的な整理を進めている。

 同科では、ため込んだ物を「趣味」「書類」「日用品」等に分類し、1年以上たった領収書などの書類は処分するなど、捨て方の指導も実践。他の患者で効果をあげている。

 同科行動療法研究室主任の中尾智博さんは「10歳代や20歳代からあった症状が、親しい人との死別後に悪化する例が多い。虐待などつらい幼少期を送った患者も目立つ。ためこみ症は心の空白を埋める行為なのかもしれない」と話している。

  米国精神医学会の診断基準  物を整理できなかったり、必要以上に買い込んだりする症状は、認知症や強迫性障害、発達障害などでも表れる。こうした病気が背景にないのに、社会生活に支障をきたす深刻なためこみ症状がある場合に、「ためこみ症」と診断する。(佐藤光展)

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