木之下徹の認知症とともにより良く生きる
介護・シニア
自分の認知症は自分でわかるのか
山田元子さん(仮名 83歳 医師)は、妹さんを付き添って来院。
MRIの結果をパソコンで映しだしています。
元子さん 「先生、いかがなもんでしょう、私」
私 「やはり、MRI上で側頭葉の内側が少し痩せているように見えます」
元子さん 「やはり、そうですか」
「長谷川式」などで有名な、記憶や注意の検査、すなわち神経心理検査の結果をみます。「改訂 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)」と「ミニメンタルステート検査(MMSE)」は26点、27点でほぼ問題はありません。そのため、一歩踏み込んで、複雑な「ウエクスラー記憶検査(Wecheler Memory Scale-Reviced、WMSR)」検査を実施。すると、遅延再生の項目で明瞭な失点がありました。つまり、記憶するのが苦手になっている。
私 「先日、やや複雑な検査をお付き合いいただきました」
元子さん 「ああ、あの検査ねぇ。しんどかった」
私 「申し訳ありません」
元子さん 「いいの。わかっているから」
私 「すいません」
ふと、謝り癖がついてしまっている私。
私 「この、遅延再生に障害があります。つまり記憶しづらい、ということです」
元子さん 「なるほどね。そうだと思っていました」
妹さん 「そうよね。お姉さん、最近すぐに、忘れるものね」
元子さん 「だから気になるの」
私 「病名につきましては、世間の評判を無視して聞いてください」
私 「アルツハイマー型認知症です」
元子さん 「まあ、ね。この年でそうなるとは思わなかった」
私 「すいません」
また謝ってしまった。
私 「メモをきちんととることでかなり乗り越えられる部分も多いかと」
妹さん 「いえ。もう家じゅう。メモだらけ」
私 「あっ、すいません」
今日はよく謝る。
それから、認知症の薬の効果を説明。認知症は薬を飲んでも進む。飲まない場合と比べてその低下のスピードを遅らせること。効果の程度をADAS(アルツハイマー病評価スケール)という検査で半年ごとに測ってお知らせし、その都度、薬の量の加減を相談すること。出現する可能性の高い副作用。副作用が出た場合の対処。うちのクリニックから電話をする旨。薬を飲むか飲まないかはご自身で決めること。などなど。
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