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知って安心!今村先生の感染症塾

医療・健康・介護のコラム

子どもの夏かぜ3きょうだい、ヘルパンギーナが流行中

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 冬に流行する感染症といえばインフルエンザやノロウイルスが有名ですね。夏の感染症ならば、食中毒を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。実は、毎年のように夏に流行している感染症が、他にもあるのです。今回は「子どもの夏かぜ3きょうだい」のひとつ、ヘルパンギーナの話題です。

子どもの夏かぜ3きょうだい

 小さなお子さんがいる方は、夏に子どもの感染症が多いことも知っておきましょう。特に有名なのが「夏かぜ3きょうだい」とも呼ばれている「咽頭結膜熱」、「手足口病」、そして「ヘルパンギーナ」という3つの感染症です。その年によって、どれが最も流行するのかは変わってくるのですが、今年はヘルパンギーナが多くみられています。

ヘルパンギーナって、どんな病気?

 今年最も流行しているヘルパンギーナは、口の中に小さな 水疱(すいほう) (小さな水ぶくれ)や潰瘍(ただれた状況)、そして熱がでやすいという症状を持つ、ウイルス感染症です。感染してから2~4日くらいの期間をおいて、突然の発熱、口腔内に直径1~5mm大の水疱や潰瘍をつくり発症します。これらの口の中の病変は、口の天井部分の奥側にみられることが多く、潰瘍を形成すると強い痛みをともなうことがあります。

まれに髄膜炎や心筋炎を合併することがありますが、一般的には、経過は良好な病気です。予防注射や直接の治療薬はないので、症状に対する治療が中心。口の中の痛みで飲んだり食べたりすることができなくなることがあり、高熱を伴うことも多いため、脱水には十分注意することが必要です。

「風邪」っぽくない、夏かぜ3きょうだい

 「夏かぜ」とは呼ばれていますが、このヘルパンギーナの症状は、皆さんがよく知っている「風邪」とは少し印象が異なるのではないでしょうか。ここで「夏かぜ3きょうだい」の比較表をご紹介しておきましょう。この3きょうだいは、コンコン (せき) がでる、いわゆる「風邪」とは違うということがわかると思います。

子どもの夏かぜ3きょうだい、ヘルパンギーナが流行中

咽頭結膜熱と手足口病

 手足口病は、ヘルパンギーナと親戚のような感染症です。手足口病は名前のとおり、手・足・口に発疹や水疱が出現します。そして、手足口病よりもヘルパンギーナの方が高熱が出やすい傾向があります。

 咽頭結膜熱は別名プール熱とも呼ばれ、咽頭炎(のどの腫れや痛み)、結膜炎(白目の部分が充血する)と発熱が主な症状となります。名前でもわかるように、夏になるとプールなどの場所で感染が広がることがあります。結膜炎を起こすので、タオルの共有は避けなければなりません。

夏のレジャーと夏かぜ3きょうだい

 咽頭結膜熱、手足口病、ヘルパンギーナの「夏かぜ3きょうだい」は、夏休み前頃をピークに急増することが多いため、夏休みに入ってからの感染にも注意が必要となります。流行が起こっている地域のレジャー施設などから、他の地方へと感染が広がる可能性もあるからです。

手洗いが大切

 原因となるウイルスは乾燥に強く、感染した子どもが触れた環境にも比較的長く存在しています。子供はいろいろな所に触れ、その手を無意識に口や眼にもっていくことが多くあります。目をこすったり、鼻をほじったり、手をなめたりという癖も、できるだけしないよう教えてあげてください。子どもの感染症は、手洗いが日常的な対策のポイントです(大人でも大切ですが・・・) 。ご家庭でも、しっかり手洗いを習慣づけておきましょう。家でいつもやっていると、ちゃんと外でもできるようになるからです。

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今村顕史(いまむら・あきふみ)

がん・感染症センター都立駒込病院感染症科部長

石川県出身。1992年、浜松医大卒。駒込病院で日々診療を続けながら、病院内だけでなく、東京都や国の感染症対策などにも従事している。日本エイズ学会理事などの様々な要職を務め、感染症に関する社会的な啓発活動も積極的に行っている。著書に『図解 知っておくべき感染症33』(東西社)、『知りたいことがここにある HIV感染症診療マネジメント』(医薬ジャーナル社)などがある。また、いろいろな流行感染症などの情報を公開している自身のFacebookページ「あれどこ感染症」も人気。

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