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イグ・ノーベル・ドクター新見正則の日常

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抗がん剤が効く確率、イチローの打率と同じ!?

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インフルワクチンの有効性は

 同じようにインフルエンザのワクチンの有効性はどう思いますか。インフルエンザのワクチンは打ってもあまり効果がないといった報道も見られますが、一般の方の多くの印象は、「8割ぐらいはインフルエンザの予防効果があるのでは?」と思っているでしょう。インフルエンザの予防接種を受けても不幸なことにインフルエンザに感染する人は5人に1人ぐらいだというイメージです。

 では、厚生労働省のHPを見てみましょう。 インフルエンザQ&A のQ18に「ワクチンの接種を受けたのに、インフルエンザにかかったことがあるのですが、ワクチンは効果があるのですか?」という項目があります。なんとその最後には、「以上のように、インフルエンザワクチンは、接種すればインフルエンザに絶対にかからない、というものではありませんが、ある程度の発病を阻止する効果があり、また、たとえかかっても症状が重くなることを阻止する効果があります。ただし、この効果も100%ではないことに御留意ください」と記載されているのです。そして、その上には、ひとつの研究結果が記載されています。そこには「65歳以上の健常な高齢者については約45%の発病を阻止し、約80%の死亡を阻止する効果があったとされています」とあります。通常、引用するのは最も素晴らしいデータを記載する、いわゆるチャンピオンデータを載せるのが通常ですから、そんなチャンピオンデータでさえ45%の発病阻止効果しかないのです。8割に効くなどは妄想となります。

正しくは「重症化予防のための注射」

 予防接種という言葉自体が怪しいですね。正しくは「インフルエンザの重症化予防のための注射」だと思います。そして医療サイドも心得たもので、「インフルエンザのワクチンは感染を予防するというよりも、重症化の防止のために打つのですよ」と言い添えることが増えています。そして厚生労働省のHPにも「インフルエンザの予防接種」という文言は少なく、「インフルエンザワクチンの接種」と多くは記載されています。厚生労働省も感染予防にはそれほど効果がないことは暗に認めているようにも思えます。

 インフルエンザの感染防止の効果が (ちまた) の想像を下回るとしても、インフルエンザに感染して重篤な状態になる可能性が高い高齢者などは、重症化防止という観点からぜひともインフルエンザワクチンは打った方がいいと思っています。

 「イチローはよく打つ」というイメージと、「抗がん剤やワクチンがよく効く」という文言から連想する数字の解離のお話でした。

人それぞれが、少しでも幸せになれますように。

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知りたい!_20131107イグ・ノベーベル賞 新見正則さん(1)写真01

新見正則(にいみ まさのり)

 帝京大医学部准教授

 1959年、京都生まれ。85年、慶応義塾大医学部卒業。93年から英国オックスフォード大に留学し、98年から帝京大医学部外科。専門は血管外科、移植免疫学、東洋医学、スポーツ医学など幅広い。2013年9月に、マウスにオペラ「椿姫」を聴かせると移植した心臓が長持ちする研究でイグ・ノーベル賞受賞。主な著書に「死ぬならボケずにガンがいい」 (新潮社)、「患者必読 医者の僕がやっとわかったこと」 (朝日新聞出版社)、「誰でもぴんぴん生きられる―健康のカギを握る『レジリエンス』とは何か?」 (サンマーク出版)、「西洋医がすすめる漢方」 (新潮選書)など。トライアスロンに挑むスポーツマンでもある。

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