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虹色百話~性的マイノリティーへの招待

医療・健康・介護のコラム

第51話 8月5日から横浜で第23回AIDS文化フォーラム開幕

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エイズをテーマとする市民のフォーラム

  あす5日から、かながわ県民センター(横浜駅西口、徒歩5分)で、第23回「AIDS文化フォーラムin横浜( http://www.yokohamaymca.org/AIDS/ )」が開催されます。HIVやエイズをキーワードに活動する市民や団体が、さまざまな分科会を出展し交流を広げる、いわばエイズの文化祭のようなイベントです。だれでも参加可(申し込みなし)、しかも完全無料!

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(AIDS文化フォーラムin横浜 事務局提供)

 あす5日午前、開会式に続くオープニングでは、自立や依存をテーマに、社会的に疎外されたゲイなどの性的マイノリティー、薬物への依存、自死とその遺族のケアなどをめぐるトークがあります。

 HIVやエイズというと、いまも「◯◯ではうつりません」「不特定多数との性交は危険です」「コンドームを使いましょう」式の“正しい情報”と“啓発”が目につきます。

 しかし、エイズの現場は、さまざまな課題が渦を巻いて積み重なっています。とくに薬物依存は社会的にも広がりが懸念されるなか、エイズ領域でいまもっとも重要な課題となっています。薬物はおもに性的興奮を高めるセックスドラッグとして使われ、コンドーム使用などセーファー(より安全)なセックスへの意識を吹っ飛ばす結果、HIV感染の判明と薬物への依存、そして多くは逮捕・収監といった事態が同時に起こっています。そこは、「ダメ、絶対!」式の啓発が届かない地平です。

 トークでは、脳性 麻痺(まひ) で車椅子による生活をする医師で当事者研究の熊谷晋一郎さん、そして性的マイノリティーや依存症者、自死遺族らを当事者として支える活動グループのメンバーらが語り合います。ゲイやHIVにかかわる当事者の話を、脳性麻痺というだれかに「依存」することなしには生きられない人がどう受け止め、そこにどんな化学反応が生まれるのか。市民によるフォーラムならではの興味深い企画といえるでしょう。

 あす5日午後から日曜までの3日間、42もの分科会や講演会がエントリーされています。どれもが学校、病院、NGOやNPO、はてはお寺や教会など、日常に密着した現場で取り組まれているHIVやエイズをテーマとした活動です。性教育や多文化共生、国際支援などの実践報告、若者たちの性やデートDVにかんするワークショップ、陽性者支援のNPO活動報告、薬物依存や心理サポートを考える講座、陽性者自身によるトークなどじつに多彩。変わったところでは、お坊さんによる性教育、ゲイの牧師さんによるLGBT(性的少数者)講座、ユニークなものではAV男優さんによる性感染症への問題意識や予防の本音トークなど(R-18指定)。現場感満載のもちより講座は、いかにもエイズの文化祭といった感じです。

横浜国際エイズ会議がきっかけで市民版エイズ会議をやろう!

  さて、このフォーラムはすでに23回。第1回は1994年です。この年、世界最大のエイズ対策会議「国際エイズ会議」が、アジアでは初めて横浜を会場として開催されました。エイズへの関心が低調な現在からは想像がつきませんが、じつは当時、日本は空前の「エイズブーム」を迎えていたのです。

 日本人のエイズ症例が初めて公表されたのは1985年。当時の厚生省がアメリカ帰りの日本人男性を「エイズ1号患者」として発表します。男性は同性間の性行為で感染したと新聞などで書き立てられたため、エイズと同性愛がたちまち結びつくことになりました。しかし、このとき国が認可した輸入血液製剤によって国内の血友病患者のすでに半数がHIVに感染していたことを、厚生省は知っていました(薬害エイズ事件)。

 1986年には「松本事件」、87年には「神戸事件」と呼ばれるエイズパニックが巻き起こり、「外国人」や「売春婦」がエイズの「元凶」のように写真週刊誌などで書き立てられました。国会では、感染者の報告や他人に感染させた場合の刑事罰まで盛り込まれた後天性免疫不全症候群予防法(エイズ予防法)が提案され、紆余曲折の末、89年1月に成立しました(「エイズ予防法」は、「伝染病予防法」「性病予防法」と統合され、1999年に「感染症法」として施行)。

 ところが1990年代に入ったころから、同性間よりも異性間での性行為で感染した報告数が多くなり、海外でもロック歌手フレディー・マーキュリーがエイズで亡くなったり、NBAのマジック・ジョンソンが感染を公表したことも影響してか、「身近な病気」「日本もいよいよ感染爆発か」と言われ出したりします。国の「エイズ問題総合対策大綱」(1987年決定)が、6年目の92年に見直しを迎え、各地の自治体でエイズ対策に取り組むところが増加。企業でも「従業員にHIV感染者が出たら?」など、にわかに関心が盛りあがり、書籍の刊行も続いてちょっとした「ブーム」になりました。まるでどこかで聞いたような話です……。

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永易至文(ながやす・しぶん)

1966年、愛媛県生まれ。東京大学文学部(中国文学科)卒。人文・教育書系の出版社を経て2001年からフリーランス。ゲイコミュニティーの活動に参加する一方、ライターとしてゲイの老後やHIV陽性者の問題をテーマとする。2013年、行政書士の資格を取得、性的マイノリティサポートに強い東中野さくら行政書士事務所を開設。同年、特定非営利活動法人パープル・ハンズ設立、事務局長就任。著書に『ふたりで安心して最後まで暮らすための本』『にじ色ライフプランニング入門』『同性パートナー生活読本』など。

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1件 のコメント

実践的な訓練が必要

カイカタ

異性間でもそうですが、コンドームをつけないでするのは危険と分かっていながら、いざ、その場では断りづらい、と思って受け入れてしまうことがありがちで...

異性間でもそうですが、コンドームをつけないでするのは危険と分かっていながら、いざ、その場では断りづらい、と思って受け入れてしまうことがありがちです。そういう場合に備えて、心の準備として、きちんと断る訓練をするようにしてみてはと思います。男女間の場合、女性は、コンドームを出すと、遊んでいるのかといわれ、断りにくいらしいですね。理屈だけでなく、実践的に断る心がけをしておくといいと思います。セックスの場面では、とかく理性を失いがちですから。

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