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知って安心!今村先生の感染症塾

医療・健康・介護のコラム

リオ・オリンピックとジカ熱対策…今知っておきたいこと

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リオ・オリンピックとジカ対策…今知っておきたいこと

 いよいよリオ・オリンピックの開幕です。リオのあるブラジルでは、ついこの前までジカウイルス感染症の流行が大きな話題となっていました。現地では「南半球の8月は冬となります。蚊はいなくなるから安心して!」と、イメージ改善のための発表もありました。しかし、あなどってはいけません。リオデジャネイロは赤道に近い亜熱帯の地域。 日本の冬をイメージしてはいけないのです。

リオは冬だから大丈夫?

 南半球にあるブラジルは、日本とは反対の季節となります(ブラジルのクリスマスは真夏!)。 日本に夏がやってきている今は、ブラジルの冬にあたるというわけです。しかし、リオは赤道に近い亜熱帯の地域にあるということを忘れてはいけません。8月のリオデジャネイロは、まだ平均最高気温が26度もあり、昼は9月の東京と同じ位の気温なのです(ただし、1日の平均気温は22度で、最低気温は平均19度と、寒暖差は大きいようです)。

 一方、蚊が活動しやすい気温は22度~31度で、特に26度を超えると吸血が盛んになるといわれています。

デング熱からわかる蚊の発生状況

 ジカウイルス感染症の発生状況は、同じように「蚊」によって感染するデング熱の流行状況から予測することが可能です。参考に、2015年におけるリオデジャネイロのデング熱の発生報告数(ポルトガル語)を示した表をご紹介しましょう。この表では月別の発生数がわかるようになっています。ポルトガル語ではありますが、月の名前は英語に近いので、なんとなくわかります。Jun(6月)、Jul(7月)…Agoが8月ですね。そして一番上の赤い数字が、各月におけるデング熱の報告件数となっています。これをみると、8月はピークは越えているというものの、まだデング熱の報告がかなりあることがわかります。8月のリオデジャネイロは南半球の冬、それでもジカウイルス感染症の対策はやっておく必要があるのです。

[ポイント1] リオは冬…それでも蚊の対策は必要です

2015年のリオデジャネイロにおける月別のデング熱の発生報告数 (ポルトガル語)

どんな症状がでるの?

 ジカウイルスに感染してから症状がでるまでの潜伏期間は、2~12日(多くは2~7日)とされています。 発症した場合のおもな症状は、発熱(多くは微熱くらいで高熱はまれ)、関節痛、筋肉痛、発疹、 倦怠けんたい 感、結膜充血(目の白い部分が赤くなる)で、同じように蚊が媒介するデング熱と比べても症状は軽い傾向があります。ワクチンや特別な治療はないのですが、通常は2~7日で自然軽快します。

[ポイント2] ふつうは治療しなくても自然軽快する

症状がでないことも多い

 ジカウイルスに感染しても、発症するのは5人に1人くらいだといわれています。つまり、蚊に刺されてウイルスに感染したとしても、その約8割は症状がでないということになります。また、ごく軽い症状ですむことも多いため、本人が発症に気づかない場合もあります。このように、「ジカウイルス感染症の多くは無症状か軽症であり、全体でみれば健康的に大きな問題となることは少ない」ということを知っておきましょう。

[ポイント3] 多くは無症状か軽症…過剰に恐れすぎない

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今村顕史(いまむら・あきふみ)

がん・感染症センター都立駒込病院感染症科部長

石川県出身。1992年、浜松医大卒。駒込病院で日々診療を続けながら、病院内だけでなく、東京都や国の感染症対策などにも従事している。日本エイズ学会理事などの様々な要職を務め、感染症に関する社会的な啓発活動も積極的に行っている。著書に『図解 知っておくべき感染症33』(東西社)、『知りたいことがここにある HIV感染症診療マネジメント』(医薬ジャーナル社)などがある。また、いろいろな流行感染症などの情報を公開している自身のFacebookページ「あれどこ感染症」も人気。

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