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医療部長・山口博弥の「健康になりたきゃ武道を習え!」

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喫煙者は入門できません

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 たばこの害についてはもう多くの人に知れ渡っていますが、何度強調しても強調し過ぎることはないでしょうから、改めて書きます。

 今年5月30日、世界禁煙デーのメディアセミナーが東京都内で開かれました。講師を務めた地域医療振興協会・ヘルスプロモーション研究センター長の中村正和さんが配布した資料を参考に、「たばこの煙に含まれる主な有害物質」を、以下に列挙します。

 ▼ニコチン  →ゴキブリ殺虫剤の成分
 ▼ヒ素    →毒薬として使われてきた
 ▼カドミウム →イタイイタイ病の原因
 ▼ベンゼン  →ガソリンの成分
 ▼ホルマリン →死体や生物標本の防腐処理に使われている
 ▼トルエン  →シンナーの主成分
 ▼フェノール →消毒殺菌剤の成分
 ▼シアン化水素→ 殺鼠さっそ 剤(ネズミの駆除剤)として使われている

 ※赤字は発がん物質。このほか60種類以上の発がん物質が含まれている

 どうです? 怖いでしょ~?

 中村さんは「たばこは『毒物の缶詰』と言っても過言ではない」とおっしゃっていました。

 たばこの嫌なところは、喫煙者本人の健康を害するだけならともかく、たばこの煙(副流煙)によって第三者の健康をも害してしまう点。「受動喫煙」による害です。しかも、本人が吸い込む主流煙よりも副流煙の方に有害物質が多く含まれているというから、たちが悪いったらありゃしない!

 セミナーで配布された資料から引用すると、たばこを吸わない女性が受動喫煙によって肺がん(腺がん)になるリスクは、受動喫煙がない人を1とすると、職場などで受動喫煙がある人は1.21、夫による受動喫煙がある人は1.79、職場などと夫による受動喫煙の両方がある人は1.93にまで高くなります。

 肺がんのほかにも、受動喫煙が確実に健康に影響を与えることが分かっているのは、虚血性心疾患、子どもの肺機能低下、中耳炎、乳幼児突然死症候群、低体重児、早産、妊娠中の異常(破水、前置胎盤など)などたくさんあります。受動喫煙により、国内で1年間に1万5000人が死亡しているというデータもあるのです。

 「私は家族の前ではたばこを吸わないし、職場でも喫煙室でしか吸わない。他人に迷惑はかけてないよ」と反論する人がいるかもしれません。でも、ちょっと待って下さい。

 受動喫煙は、セカンドハンドスモーキング(2次喫煙)と英語で言いますが、喫煙者の髪の毛、着ている衣服、壁、床、カーテンなどにしみこんだたばこの有害物質を吸うことは、サードハンドスモーキング(3次喫煙)と言います。この3次喫煙も、周囲の人の集中力や体調に影響を与えるそうなのです。

 私もつい先日、エレベーターに乗っていて、途中の階で喫煙者が乗り込んできただけで、あまりのにおいに気持ち悪くなりました。私の連れの2人も、エレベーターを降りるとすぐに、「臭かったですね~」と顔をしかめていました。

 2009年にまとめられた厚生労働省の「受動喫煙防止対策のあり方に関する検討会報告書」には、こう書かれています。

 喫煙者の喫煙の自由や権利が主張されることがあるが、喫煙者は自分の呼出煙、副流煙が周囲の者を曝露していることを認識する必要があるとともに、喫煙者の周囲の者が意図せずしてたばこの煙に曝露されることから保護されるべきであること、受動喫煙というたばこの害やリスク(他者危害)から守られるべきであることを認識する必要がある。

 そう、受動喫煙は喫煙者による「他者危害」なのです。

 暴力から自分自身や大切な人を守る武道を学ぶ人が、他人に害を与える喫煙を行うのは自己矛盾。……なんて、武道と健康のコラムなので武道家目線で書きましたが、本来、武道をやる・やらないとは関係なく、喫煙と受動喫煙による健康の害は、あらゆる人に考えてほしい問題です。

喫煙者は入門できません

巨大な肺の模型を前に開催された世界禁煙デー2016メディアセミナー。石田純一・東尾理子夫妻も参加してディスカッションが行われた。左から2人目が地域医療振興協会の中村正和さん(2016年5月30日、東京都内で)

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山口 博弥(やまぐち・ひろや) 読売新聞東京本社医療部長

 1962年福岡市出身。1987年読売新聞社入社。岐阜支局、地方部内信課、社会部、富山支局、医療部、同部次長、盛岡支局長を経て、2016年4月から現職。医療部では胃がん、小児医療、精神医療、痛み治療、高齢者の健康法などを取材。趣味は武道と瞑想めいそう。飲み歩くことが増え、健康診断を受けるのが少し怖い今日このごろです。

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