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医療部発

コラム

谷垣幹事長が事故……でも「自転車は最高のスポーツ」

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谷垣幹事長が事故……でも「自転車は最高のスポーツ」

2012年8月、フランス・アルプスのガリビエ峠頂上で。ツール・ド・フランスによく登場する「自転車乗りの聖地」です。

 自民党の谷垣禎一幹事長が、趣味のスポーツ用自転車に乗っていて転倒し、 頸髄けいずい を損傷して手術を受けました。事故から10日以上たっても復帰のめどは立たず、内閣改造や党役員人事に影響が及ぶ事態になっています。中高年で自転車を楽しむ人も多い分、風当たりが強まりそうですが、自転車競技愛好家としてあえて言いたいと思います。「自転車は安全に乗れば最高のスポーツだ!」と。

 記者(46)は自転車競技歴約20年。舗装道路を速く走れるロードバイクに主に乗っています。100回以上の自転車レースに出場し、今も年に数回は山を登るヒルクライムなどに出ています。2011年の東日本大震災前までの5、6年は実業団チームに所属し、プロの卵たちに交じって実業団レースにも出場しました。仙台で震災に遭った後は練習時間が取れなくなり、競技の第一線(というほどの一線には立てていないが)からは退きましたが、自転車は続けています。

 晴れた休日には、用事がなければ短くて2時間、長いと8時間程度は自転車に乗ります。健康維持やストレス発散に最適だ、というのは後付けの理由。単に風を切って走ったり、仲間と走りながら汗をかいたりするのが好きだからです。

 健康に留意して乗らなくても、どんどん健康になっていくのが自転車の恐ろしい(!)ところです。体重をサドル、ペダル、ハンドルの3点で支える分、地面への重力の衝撃をほとんど受けないため、膝など体への衝撃が極めて少ないのが特徴です。衝撃が少ないので、長時間運動を続けられるというわけです。

 結果的に、カロリー消費が多くなります。中高年のメタボリック・シンドロームの予防と改善にはこれ以上ふさわしいスポーツはない、と断言できます。他のスポーツに比べれば疲れにくいので続けやすく、心肺機能の向上にももってこいです。いわゆるママチャリでも十分効果はありますが、スポーツ用の自転車のほうが長時間乗れて、より軽快に走ることができます。

 反面、スピードが出るため、転倒した時のけがを考えると、運転には細心の注意が必要です。転んで手足をすりむいた場合でも、傷が深いと治るのに1か月以上かかることもあります。競技用自転車は足をペダルに固定して乗る人も多く、とっさに手を地面についた衝撃で鎖骨を折ることは非常に多いのです。大きな事故では、骨盤や大腿骨(だいたいこつ)などを骨折する場合もあるようです。

 谷垣さんのように背中や首周辺を骨折する場合もあります。走行中、瞬時に強いブレーキをかけると、車体が軽いため前輪を軸に前方に回転し、背中から地面にたたきつけられることは珍しくないことです。谷垣さんの事故状況は明らかになっていませんが、週刊誌報道では、同行する警護担当者が怖がるほどスピードを出すこともあったといいますから、かなりの速さで走っている間に何かを避けようとして急ブレーキをかけ、1回転するように転倒したことも考えられます。

 危険と隣り合わせだからこそ、原則として車道の左端を走ること、ヘルメットやグラブなどを身に着けること、夜間はライトをつけることなどは最低限守りたいと思います。歩行者はもちろん、自動車の動きにも注意し、危険を予測しながら乗ることが事故を起こさないコツとなります。

 自転車通学する学生などは、利用頻度が多いため事故に遭う危険性も高まるでしょう。自身の転倒などの事故だけでなく、だれかにけがを負わせることも想定し、自転車用の傷害保険には入っておくべきです。自動車保険の特約などで入れる場合も多いですよ。

 私は自転車に乗った谷垣さんに会ったことはないですが、私が所属するチームの仲間が2013年に出くわしたことがあります。東京近辺の自転車愛好家には有名な山梨県甲州市の柳沢峠頂上(標高1472メートル)で、初心者では登れないほどの坂道を自転車でやってきた谷垣さんと、チームの仲間が一緒に写った写真があります。「とても紳士的で、自転車が心から好きなんだと感じた」と彼は言っていました。

 自分も自転車愛好家として、「谷垣さん、もう自転車はやめてはどうですか」とは言いたくないのです。回復したら、スピードを抑え、人とは競わず、安全第一で楽しんでほしいと思います。選挙や党の中で強敵と競い合いながら今の地位を築いた大物政治家に、競争をやめて……とは言いづらいのですが。

石塚 人生(いしづか・ひとせ)
1999年から医療情報部で約7年間、小児医療、神経難病などを担当した。東日本大震災発生時は東北総局で、石巻支局長を経て2015年6月から医療部。

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医療部発12最終300-300

読売新聞東京本社編集局 医療部

1997年に、医療分野を専門に取材する部署としてスタート。2013年4月に部の名称が「医療情報部」から「医療部」に変りました。長期連載「医療ルネサンス」の反響などについて、医療部の記者が交替で執筆します。

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3件 のコメント

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事故原因を早急に公表して

munyara

多くの自転車ファンに事故原因を知らせ 再発防止に役立ててほしい。 自転車専用ゾーンの整備も少しずつ動いているが 省エネ対策として もっと本格的に...

多くの自転車ファンに事故原因を知らせ 再発防止に役立ててほしい。
自転車専用ゾーンの整備も少しずつ動いているが 省エネ対策として
もっと本格的に整備されるべきだと思うが安全の施策は未知の状態である。
谷垣さんの回復を祈念しています。

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安全に止まり曲がるには技術が要ります

gkrsnama

ロードバイクはもともと競技用。素人が簡単に乗りこなせる代物ではありません。 それなのに最近はブームとかで、単なる高速ママチャリとおもっている人が...

ロードバイクはもともと競技用。素人が簡単に乗りこなせる代物ではありません。
それなのに最近はブームとかで、単なる高速ママチャリとおもっている人がたくさん入り込んでいるようです。たとえば、技術の鍛錬を忘れている人、夜間無灯火の人、信号無視の人。

記事にある前転しないためには技術が必要です。とっさに止まる・とっさに曲がる技術を、普段から練習していないと危ないです。

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自転車の反省

toohuudoo

私は歩くのが嫌いでどこへいくのも自転車に乗っていた。 もともと、脚力が強い方だったので、どんな長距離でも 坂でも、殆ど疲れなかなかった。 しかし...

私は歩くのが嫌いでどこへいくのも自転車に乗っていた。
もともと、脚力が強い方だったので、どんな長距離でも
坂でも、殆ど疲れなかなかった。
しかし、乗っていたのはママチャリに近い荷物運搬用の
自転車であった。これは、ハンドルを軽く握り、サドルに全体重
をかけ、使うのは脚力ばかりで、ほとんど体幹筋肉に負担をかけない
のである。しかも仕事ではパソコン画面に向かって一日中座っている。
それで、体幹が弱ってしまった。
それが、脊柱管狭窄症を誘発した。もともと脊柱管の狭い体質だったのだ。
重い脊柱管狭窄症になってから、歩くのが重要だと気がついたが、
もう遅い。

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