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がん患者の就労、病院が支援…悩み取り除き治療と両立

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復職、副作用、育児…専門家が助言

 病院による、がん患者らの就労支援が広がっている。医師から患者に声をかけて支援のきっかけを作るのが特徴だ。

がん患者の就労、病院が支援…悩み取り除き治療と両立

患者の相談に耳を傾ける原田さん(右)=東京労災病院で

 「抗がん剤の副作用で腫れていた指が治まってきた。良くなったら、仕事に戻りたい」「無理せずタイミングを探っていきましょう」。東京労災病院(東京都大田区)の個室で、肺がんの治療で通院する同区の青山優子さん(64)が打ち明けると、社会福祉士の原田理恵さんが励ました。

 青山さんは昨年夏、区の健診で肺に影が見つかり、福祉施設の清掃の仕事を休んで、10月から治療を始めた。指の腫れのほか口内炎など抗がん剤の副作用のつらさは想像を超え、復職を見通せなかった。

 3か月後、上司から電話があった。「休み続けては職場に迷惑がかかる」と青山さん自ら退職をほのめかすと、「落ち着いたら復職すればいい」とのこと。上司の言葉を原田さんに伝えると、「治療に専念できますね」と一緒に喜んでくれた。貯金を取り崩す生活に不安もあったが、思いを伝えるうちに治療に集中する気持ちになった。「副作用や生活の苦しさを理解してもらえ、安心できた」と原田さんに感謝する。

 原田さんは、就労を中心に患者を支援する同病院の「医療サポーター」。収入の悩みのほか、うつ病対策や栄養のとり方などを支援する。社会福祉士の原田さんらが入院患者に、病室や待合室で声をかけることから始まり、悩みに応じて精神科医、管理栄養士などを紹介する。

 がんを発症した人も仕事を続けられるケースが増えたが、厚生労働省によると、がんになった会社員らの3割強が依願退職をしたり解雇されたりしている。

 治療と就労の両立支援を担う同病院両立支援部長で精神科医の小山文彦さんは「患者に、会社を辞めずに済むということを早く伝える必要がある」と考え、昨年4月に相談窓口を設けたが、訪れる患者はわずか。9月、病院側から患者にアプローチすることにした。

 うつ症状の男性患者は、ハローワークと連携しながら治療し、再就職できた。肺がんの男性患者は子どもに病気のことを伝えるか悩んでいた。心理士と伝え方を探った。薬の副作用についての薬剤師の意見も踏まえ、「治療しながらの就業は可能」と書いた手紙を会社の産業医に送り、復職につなげたケースも。これまでに計35人を支援した。

 小山さんは「治療や精神面の悩みを解決して初めて患者が就労の問題に向き合える」と強調する。

 がん患者の悩み解決法を看護師たちが発信する試みもある。

 国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)は、脱毛や下痢など副作用への対応、治療中の育児など、患者の悩みや不便さを36項目のテーマ別にし、それぞれの課題解決策を集めた「生活の工夫カード」を作った。

 就労支援をする一般社団法人CSRプロジェクトの代表理事、桜井なおみさんは「仕事を再開しようとする患者には、治療の展望、薬の副作用を抑える方法などは大切な情報で、それを会社も求めている。患者だけで課題や解決法を考えるのは難しく、助言できる医師や薬剤師らの役割は大きい」と話している。

  ■メモ  国立がん研究センター中央病院の「生活の工夫カード」は、ホームページ( http://www.ncc.go.jp/jp/ncch/info/support_card.html )で公開している。(米山粛彦)

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