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虹色百話~性的マイノリティーへの招待

医療・健康・介護のコラム

第50話 同性婚の法律って、どうやって作るの?

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 いまは生殖医療が発達しています。同性間ではどうしても生殖医療でしか実子をもつことはできません。では、その実子は同性婚の相手にとって「なに」になるのか? 女性が懐胎したとき、相手の女性パートナーとのあいだに生物学上のつながりはありえないわけですから。

 木村さんは、これについては最高裁決定が参考になる、と話します。  

 性同一性障害の診断を受けて、女性から男性に性別変更した夫とその妻による夫婦で、妻が第三者の精子提供を受けて産んだ子を、夫の「嫡出子」とする最高裁の決定が出ています(2013年12月10日)。

 従来、男女の夫婦では、妻が第三者の精子提供を受けて産んだ子であっても、この民法772条によって夫の子と推定され、夫が認知を拒否するなどのことがなければ夫の嫡出子とされています。これが性別変更による夫婦でも適用されるのかが争われた裁判ですが、最高裁はそれを認めました。嫡出とは精子提供者であるとかDNAで (つな) がっているとかだけをいうものではない、と述べているわけです。

 同性婚が認められた場合、この決定の趣旨に (かんが) みれば、女性が第三者の精子提供を受けて産んだ子は、その女性の同性パートナーとは生物学的なつながりはありませんが、嫡出子と推定することができ、その子に対して同性パートナーとのあいだにも親子関係を創出できることになります。

 これを法律にする場合は、

 3項 第1項の婚姻から生じた嫡出子について本法を適用するときは、「父母」とあるのは「両親」、「父又は母」とあるのは「いずれかの親」、「父」とあるのは「一方の親」、「母」とあるのは「もう一方の親」と読み替えるものとする

とすればよいといいます。

 ただ、法文上はこれで問題ないとしながらも、木村さんは子どものことについては「子の福祉」の観点から、まだまだ熟議を重ねていく必要があるとしました。また、講演では触れませんでしたが、男性同士ではどうなるのか、気になるところです。男性同士で子をもつには、いわゆる代理母を介することになりますが、日本国内では現在、代理母が認められていないので、女性同士だけの場合を考えたのでしょうか……。

法と生殖医療と当事者のリアリティー

 近年、男女の夫婦間で第三者からの精子提供(いわゆる非配偶者間人工授精AID)で生まれた子どもが、自分の出生の事実を知ったときの課題が報告されるようになりました。同性婚の場合であれば、生まれた子はAIDによる出生であることははじめから明らかです。将来、自分の「本当の父親はだれなのか」を求めて精神的にも不安定な状態になるなど、「出自を知る権利」については、じつは同性婚が合法化されている外国でも問題になっていることが報告されています。

 そうした観点から、日本の研究者のなかには、生殖医療によって子どもをもつことに道を開く同性婚には反対し、同性カップルへの不平等は婚姻とは別のパートナーシップ法で解消することを提案する意見もあります。また、パートナーシップ法では養子をとることは認めるとしています(東北大学・水野紀子さんなど)。

 さて――

 「幸せな二人を祝いたいだけなのに、そんなに難しい話が必要なの?」と思われるでしょうか。あるいは、「同性婚だけが性的マイノリティーのすべてじゃない!」という声もあるでしょう。同性パートナーシップを営まない人、あるいは同性パートナーシップや同性婚論争とはあまり 交叉(こうさ) しないセクシュアリティーの方もいるでしょう。

 ただ今後、同性間のパートナーシップを法律のかたちで定着させるためには、法律的な論点をきちんと詰めていかないと、情緒的な議論だけでは国会での可決にまではたどりつけません。

 さらに、子の問題は、同性婚論議の台風の目。その難関を当事者として越えていく覚悟(?)が問われるかもしれません。同性婚法など想像もつかなかった90年代はじめから25年、生殖医療の進歩の現実もあって、法律学者らを具体的な議論の土俵に上がらせるところまできたことには、深い感慨を覚えます。

 もっとも、いま日本のレズビアンカップルのあいだで第三者からの精子提供による妊活や子育てが静かに進んでおり、これからは法律の方が、先行する事態を追いかける時代が来るでしょう。

 そして、こうした論議のなかで、憲法は同性婚を認めているのかということへの決着も問われてくるのではないでしょうか。

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永易写真400

永易至文(ながやす・しぶん)

1966年、愛媛県生まれ。東京大学文学部(中国文学科)卒。人文・教育書系の出版社を経て2001年からフリーランス。ゲイコミュニティーの活動に参加する一方、ライターとしてゲイの老後やHIV陽性者の問題をテーマとする。2013年、行政書士の資格を取得、性的マイノリティサポートに強い東中野さくら行政書士事務所を開設。同年、特定非営利活動法人パープル・ハンズ設立、事務局長就任。著書に『ふたりで安心して最後まで暮らすための本』『にじ色ライフプランニング入門』『同性パートナー生活読本』など。

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1件 のコメント

他の虐げられている人との連帯が大事

カイカタ

このような社会的に不平等な扱いを受けている人達が社会変革を起こすには、他の虐げられている人との連帯が必要だと思います。結婚制度でいえば夫婦別姓と...

このような社会的に不平等な扱いを受けている人達が社会変革を起こすには、他の虐げられている人との連帯が必要だと思います。結婚制度でいえば夫婦別姓とか。以前、民進党の長妻昭議員の市民集会で同性愛問題についてきいたら夫婦別姓の訴訟をしている人が同調すると言っていました。どうして連帯しないのでしょう。連帯といえば沖縄で米軍基地反対運動と連帯したらいかがですか? 今は国家権力による凄まじい弾圧にさらされています。協力してはいかがですか? イギリスでは閉鎖で失業の危機にさらされた炭鉱労働者をLGBT団体が手助けしたことで炭鉱労働者組合が、逆に権利運動の後押しをした実例があります。日本では広がりはなく内ゲバで終わることが多いような。

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