文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

ホントはどうなの?健康食品・サプリメント

国立健康・栄養研究所

yomiDr.記事アーカイブ

[レスベラトロール]寿命延ばす効果…まだ不明

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

「アンチエイジングには○○がいい」と聞くと、ついそれを試してみたくなる人も多いのではないでしょうか。今回は、「アンチエイジング(抗加齢)効果がある」「健康寿命を延長する」と言われている、レスベラトロールについてご紹介します。

イタドリ根茎由来は法律違反

 レスベラトロールは、ブドウの皮、赤ワイン、ピーナツ、ココア、リンゴンベリー(コケモモ)、イタドリ根茎、メリンジョ種子などに多く含まれるポリフェノール(植物の成分)のひとつです。注意しなければいけないのは、イタドリ根茎は虎杖根こじょうこんと呼ばれる生薬であり、薬事法(現・医薬品医療機器法)では薬に分類されていることから、食品に用いることができません。つまり、イタドリ根茎由来のレスベラトロールを原料とした健康食品は「無承認無許可医薬品」にあたります。海外で製造されたレスベラトロール含有健康食品には、イタドリ根茎由来の製品もありますので、注意が必要です。一方、イタドリ若芽は非医薬品、すなわち食品に分類されていますので、食用に使うことができます。

 健康食品の規格基準の設定とその基準に係る認定制度として、「認定健康食品(JHFA)」があります。JHFAにおけるレスベラトロール食品の品質規格基準では、「ブドウ由来、リンゴンベリー由来、又はメリンジョ由来のレスベラトロール」と示しており、イタドリはそもそも含んでいません。

 

マウス実験でも「効果」一致せず

 赤ワインを日頃から飲んでいるフランス人は、チーズやバターなどの乳製品から飽和脂肪酸を多く摂取しているにもかかわらず冠動脈疾患で死亡する人の割合が少ないとした報告がきっかけとなり、赤ワインに含まれるレスベラトロールが注目されるようになりました。その後、高脂肪食により短命となる条件下で実験動物(マウス)にレスベラトロールを与えた実験で、寿命延長効果がもたらされた可能性があると報告されことから、レスベラトロールは長寿物質として話題になりました。しかし、レスベラトロールが寿命延長効果をもたらしたとされる報告は、カロリーの60%が脂肪由来の食事を与えた結果です。

 ちなみに、日本人では、カロリーのおよそ27%を脂肪から摂取しています。また、普通食を食べた実験動物(マウス)では、レスベラトロール摂取は寿命に影響がなかったとの報告もあり、それ以外の報告においても、レスベラトロールの実験動物の寿命への効果は一致していません。現在のところ、レスベラトロールの摂取が人の寿命を延長するという臨床試験結果はなく、さらなる研究が必要です。

 

炎症や動脈硬化を予防する可能性も

 レスベラトロールは抗炎症作用や抗動脈硬化作用などが期待されています。試験管内やモデル動物(人間の病気と同じような症状が起こるよう作り出された実験動物)を用いた研究では、レスベラトロールがこれらの作用をもつ可能性が報告されています。しかし、メタ分析(過去におこなわれた複数の臨床研究のデータを集めた、より信頼度の高い研究手法)の結果では、レスベラトロールの摂取は、血圧、血中脂質(総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール、および中性脂肪濃度)、および炎症マーカー(生体内で起こっている炎症の有無や程度を反映する指標)に影響を与えなかったことが報告されています。実際にレスベラトロールが炎症や動脈硬化の予防や治療に役立つかどうかを明らかにするためには、さらなる研究が必要です。

 

医薬品との併用摂取に注意

 レスベラトロールと薬との併用摂取は注意が必要です。薬は摂取した後、肝臓の薬物代謝酵素によって薬の作用が弱められ、体外に排出されます。レスベラトロールは、肝臓の一部の薬物代謝酵素の働きを抑制、または亢進こうしんすることが報告されています。つまり、飲んでいる薬によっては、レスベラトロールが一緒に飲んだ薬の作用を増強させる、または薬の効き目を弱めてしまう可能性が考えられます。すべての薬の作用を増強・減弱させるわけではありませんが、どの薬とレスベラトロールとを一緒に摂取すると相互作用を起こすのか分かっていませんので、基本的には併用しないことをお勧めします。もし、併用する場合には医師、薬剤師に相談した上で利用するようにしましょう。

 

 レスベラトロールの安全性・有効性に関する科学的根拠の詳細をお知りになりたい方は、国立健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報サイトをご参照ください。

 

(国立健康・栄養研究所 東泉 裕子)

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

ss80

国立健康・栄養研究所

国立健康・栄養研究所(健栄研、東京都新宿区)は、国民の健康の保持・増進に関する調査研究、栄養や食生活に関する調査研究等を行う機関。1920年に前身の機関が内務省に創設されて以来、国民の健康・栄養に関する調査研究に従事し、近年は「健康食品」の安全性・有効性に関する調査研究や情報提供も行っている。2015年4月に「医薬基盤研究所」(基盤研、大阪府茨木市)と統合し、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所(略称:医薬健栄研)が設立され、現在はその中の組織として位置づけられている。

ホントはどうなの?健康食品・サプリメントの一覧を見る

最新記事