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2000~03年生女子で子宮頸がんリスク上昇か

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2000~03年生女子で子宮頸がんリスク上昇か

阪大分析

 2010年に導入され、13年には国が勧める「定期接種」の対象となった子宮 けい がんワクチン。しかし、このワクチンの接種後に全身の痛みや 痙攣けいれん などさまざまな症状が出たとの報告が相次いだため、国はわずか2カ月で接種を強く推奨することを一時中止。そのため、接種する人の割合はほぼゼロに近いレベルまで落ち込んだ。こうした中、大阪大学大学院医学系研究科の研究グループは、国の推奨の再開が遅れると、生まれた年によってHPV(ヒトパピローマウイルス=子宮頸がんの原因とされるウイルス)に感染するリスクに大きな差が出てしまうことを明らかにした。特に、現在の13~16歳に当たる2000~03年生まれの女子が20歳になった時、HPVに感染するリスクが突出して高くなってしまう可能性が示されたという。詳細は、7月17日発行の英医学誌「Lancet Oncology」( 2016;17:868-869 )に掲載されている。

接種率はほぼゼロに

 女性がかかりやすいがんの一つである子宮頸がん。国内で年間約1万人がかかり、約3,000人がこのがんによって命を落としているとされる。この子宮頸がんにかかる女性を減らすために世界各国で接種が勧められているのが、子宮頸がんの原因であるHPVへの感染を防ぐワクチンだ。日本では2010年に公費助成の対象となり、2013年4月からは国が勧める定期接種になった。

 定期接種の対象は、小学6年から高校1年の女子。ところが、子宮頸がんワクチンの接種後に全身の痛みや 痙攣けいれん などの症状を訴える例が相次いだため、ワクチンの安全性が問題視されるようになり、定期接種となってからわずか2カ月で国は“推奨度”を引き下げた。現在は、「積極的に接種を勧めはしないが、受けたい人は受けられる」という状況だ。

 それでも引き続き、13~16歳の女子は費用が国や自治体から補助が出されているため無料で接種できるのだが、ワクチンによる副反応(副作用)の可能性がメディアで大きく報じられ、対象年齢の女子のワクチン接種率はほとんどゼロに近いレベルにまで低下している。

今年度中の勧奨再開で生まれ年によるリスク差は縮小

 こうした状況について、大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学の研究グループは、国内の1993~2008年度生まれの女性が20歳になった時のHPV(特に子宮頸がんリスクが高いとされる16型と18型のHPV)感染リスクを推定したところ、国の積極的な推奨の再開が1年遅れるごとに、生まれ年によっては20歳時点でのHPV感染率が極めて高くなってしまう年代が出てきてしまう可能性が示された発表した。

 特に、2000~03年生まれ(現13~16歳)の女子が20歳になった時にHPVに感染しているリスクは、推奨の再開が2020年に遅れた場合、他の年代に比べて突出して高くなることが分かった。ただし、国の推奨の再開が今年度中に再開されれば他の年代と同じ程度に抑えることができるという。

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 このことから、研究グループは「生まれ年による違いから生じる将来のHPV感染リスクの格差を最小限にとどめるには、今年度中に国による推奨が再開されることが望ましい」と結論。また、もし推奨の再開が来年度以降になってしまった場合には、推奨が中止されていた期間に12~16歳だった女子も接種対象に含めることで、HPVに感染するリスクの差を縮められる可能性があるとの見方を示している。

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