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からだコラム

[栄養で治す]渡米3日目、病院での出会い

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 管理栄養士として、米国で患者の栄養サポートを学ぼうと留学を決めたものの、誰に師事すればいいのか、英語は大丈夫か、費用はどのくらいかかるか、など分からないことばかり。

 5年がかりで準備し、ようやく渡米できたのは1993年。留学先はジョージア州アトランタにあるエモリー大学でした。全米トップクラスの総合大学で、特に医学部は有名です。滞在許可が他の大学の3か月に比べて4か月と長かったことも選んだ理由でした。

 アトランタ空港では、指導教官の栄養士で後に大親友になるグレン・バーグマン先生が迎えてくれました。車中でいろいろ話してくれたのですが全く聞き取れず、気まずい雰囲気でした。翌日は市内観光に連れていってくれましたが、気まずさは続き、どこを観光したのか覚えていません。

 渡米3日目の朝、「病院に行くよ」と先生に言われ、大学病院の門をくぐりました。いきなり集中治療室に連れていかれ、栄養サポートのスタッフを紹介されました。英語が苦手で、滞在期間の最初は語学クラスに入れられると思い込んでいたので、その時の驚きは今でも忘れられません。

 私の英語力では、スタッフが一人一人の患者の病態を説明してくれているのだろうと推測できる程度で、何か聞かれても作り笑いするしかない状態でした。それでも感覚で伝わってくるものがありました。それは「栄養補給は治療の一環」ということでした。

 日本では、患者への食事提供を控えて、安易に点滴に頼りがちですが、米国では口から食べることはもちろん、栄養が十分でなくては治療は成り立たないという雰囲気が、すべてのスタッフや患者から伝わってきたのです。言葉は不自由ながら、にわかにやる気のスイッチが入りました。(宮沢靖・近森病院臨床栄養部長、管理栄養士)

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