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がん診療の誤解を解く 腫瘍内科医Dr.勝俣の視点

コラム

正しい免疫療法のすすめ(下)本物の免疫療法~免疫チェックポイント阻害剤~の登場

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 免疫療法といっても、いろいろなものがあります。

 正しい免疫療法と、正しくない免疫療法、どこが違うのか? わかりますでしょうか?

 2015年は、画期的な年となりました。

 これまで、免疫療法と呼ばれる治療法がすべて失敗に終わっていたのに対して、

 世界で初めて、肺がんに免疫療法剤が承認されたのでした。

 「免疫チェックポイント阻害剤」と呼ばれるニボルマブ(商品名・オプジーボ)が、2015年10月に米国で、2015年12月には日本で承認されました。

 実は、肺がんに先行して、2011年に、イピリムマブ(同・ヤーボイ)という免疫チェックポイント阻害剤が、皮膚がんの悪性黒色腫に米国で承認、ニボルマブは、2014年に、日米で悪性黒色腫に承認されていますが、メジャーながんである肺がんでの承認は画期的だったと言えます。

 免疫チェックポイント阻害剤とは、がん細胞や、リンパ球(T細胞)に発現している免疫チェックポイントと呼ばれる免疫にブレーキをかける役割の部分(PD-L1、PD-1やCTLA4などの分子)を阻害する治療薬剤です。

 免疫チェックポイント阻害剤は、この免疫チェックポイント分子を阻害することによって、外からの異物を攻撃する免疫力を持つT細胞を活性化し、がん細胞への攻撃を高める分子標的薬です。

 従来の免疫療法は、免疫能を高めようとする治療だったのに対して、免疫にブレーキをかける免疫チェックポイントを阻害することにより、治療効果が得られたことは、多くの研究者たちを驚かせました。

 免疫チェックポイント阻害剤の成功は、科学雑誌で最も権威のあるサイエンスが選ぶ「ブレイクスルー・オブ・ザ・イヤー」にも取り上げられました(1)。

がんワクチンの実際のエビデンスは?

 免疫療法というと、インターネットでよく有効であるように言われている免疫細胞療法や、がんワクチンなどはどうか?と思われると思います。

 免疫細胞療法については、前回お話ししたとおりで、有効であるという結果がほとんど得られませんでした。

 がんワクチンのエビデンス(科学的根拠)はどうなのでしょうか?

 免疫チェックポイント阻害剤が登場するまで、免疫療法としては、がんワクチンが最も期待されていた免疫療法でした。

 がんワクチン療法は、特定のがん抗原を患者さんに投与することで、免疫作用を高めようとする治療です。

 日本でもこれまで多くの研究がなされ、開発が進められましたが、残念ながら、現在まで良い結果が報告されていません。

  膵臓すいぞう がんに対するがんペプチドワクチンの「エルパモチド」は、少数の患者に対し安全性が確かめられた量で効果を確認する臨床第2相試験で奏効率(がんが縮小したか目に見えなくなった率)18.5%と報告され、副作用が少ない免疫療法として、期待を集めました(2)。

 このワクチンに対する報道は、2012年12月にNHKスペシャルでも「夢の治療薬」として、報道された(3)ことは、みなさんの記憶にもあることではないかと思います。

 この後、エルパモチドの有効性を最終的に評価する臨床第3相試験であるランダム(無作為)化比較試験が行われました。

 153人の進行膵臓がん患者さんに、膵臓がんの標準的抗がん剤治療であるゲムシタビンの投与に加えて、エルパモチドを併用する群と、プラセボ(偽薬)を投与する群に振り分けて、長期データを比べました。

 結果的には、ゲムシタビン+エルパモチド併用群は、ゲムシタビン単独群と比べて、生存期間は変わらず(生存期間中央値8.36か月対8.54か月で有意差なし)、がんワクチンであるエルパモチドは、偽薬と比べても効果がなかったと結論付けられました(4)。

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katsumata

勝俣範之(かつまた・のりゆき)

 日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授

 1963年、山梨県生まれ。88年、富山医科薬科大卒。92年国立がんセンター中央病院内科レジデント。その後、同センター専門修練医、第一領域外来部乳腺科医員を経て、2003年同薬物療法部薬物療法室医長。04年ハーバード大学公衆衛生院留学。10年、独立行政法人国立がん研究センター中央病院 乳腺科・腫瘍内科外来医長。2011年より現職。近著に『医療否定本の?』(扶桑社)がある。専門は腫瘍内科学、婦人科がん化学療法、がん支持療法、がんサバイバーケア。がん薬物療法専門医。

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2件 のコメント

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高額ながんビジネス横行への警鐘

エンジェル

3月の連載以来、勝俣先生のコラムは欠かさず拝見しています。がん患者が困っていること、誤解、ミスしそうな日常の事柄が論文と例を根拠に分かりやすくま...

3月の連載以来、勝俣先生のコラムは欠かさず拝見しています。がん患者が困っていること、誤解、ミスしそうな日常の事柄が論文と例を根拠に分かりやすくまとめられていて、とても参考になります。先生の患者さんを救おうとする冷静さと温かさが伝わってきます。
世の中が先生のような良いお医者さんばかりでないことは、残念なことです。がんをビジネスと捉え、お金儲けをする人、詐欺まがいの人がいるのが現実です。
あなたが今受けようする治療は本当に効果があるものですか?一度冷静に考えてみましょう。
話は変わりますが、予後不良だった乳がん患者の治療薬、ハーセプチンを開発するまでの道のりを描いた映画の上映会を、勝俣先生の奥様が企画されたとの記事を目にしました。きっと奥様も素敵な方なのでしょうね。
先生のような激務の名医に患者さんが殺到してしまわないように、保険の範囲内で診療を行うたくさんの名医が世の中に誕生しますように。良心的な名医が評価され、報われる世の中であることを願っております。

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予備軍

知人に、藁にもすがる思いで免疫療法を受け、高額な費用を払った甲斐もなく、亡くなった方がいます。「免疫療法を受けたからこそ、ここまで延命できたんだ...

知人に、藁にもすがる思いで免疫療法を受け、高額な費用を払った甲斐もなく、亡くなった方がいます。「免疫療法を受けたからこそ、ここまで延命できたんだ」と言わんばかりの医師に「ありがとうございました」と言うしか無かったに違いありません。
日本の医療は世界一だと聞いたことがありますが、仁術が求められる医者の中には、モラルの低い、患者の弱みに付け込む金満医師もたくさんいるに違いありません。患者さんのために日夜全力で接している医師の方々には頭がさがる思いですが、そういう医師にめぐり逢えるかどうか、もう、賭けみたいなものだとつくづく思います。
世界一と言われる保険制度から外れたものは疑ってかかったほうがいいようだということを痛感しました。有意義な話題、ありがとうございました。

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