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若い世代のがん患者支援…心の負担軽減、希望つなぐ

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社会復帰へ、医療機関取り組み

  AYAアヤ思春期・若年成人世代のがん 患者は、進学や就職、結婚など人生の大きな節目と治療の時期が重なり、精神面で不安定になりやすい。心のケアの重要性が指摘されており、医療機関も対応に力を入れ始めた。

若い世代のがん患者支援…心の負担軽減、希望つなぐ

医師や看護師らに近況を報告する仙田さん(中央)(大阪市の市立総合医療センターで)

 名古屋市に住む仙田佳奈さん(32)は、高校3年の夏に脳腫瘍が見つかった。体調が戻らない中、大学受験に2度失敗。母(62)と同じ看護師になろうと専門学校に入ったその年、病気が再発した。

 治療を続けながら国家試験に合格。病院で働き始めたが、病気の影響で左目の視力を失った。休職して治療したが退職を余儀なくされた。「働きたいのに働けない。再発の恐怖と、社会から孤立していくことへの不安から、何度も死のうと思いました」

 再発を繰り返し、死が頭をよぎる。別の治療を求めて昨年夏、地元の病院から大阪市立総合医療センターに移った。新たな治療の経過が順調で、医師や看護師らスタッフも親しみやすく、気軽に相談できる雰囲気が新鮮だった。

 同センターには「AYA世代がん患者対策委員会」がある。医師や看護師のほか、心理士、医療ソーシャルワーカー、保育士、さらには、遊びなどを通じて心の負担を軽くするホスピタル・プレイ・スペシャリストも相談に応じる。

 同センター副院長で小児血液腫瘍が専門の原純一さんは「仲間と一緒にいたい年頃なので周囲から取り残された気持ちになる。自立したいのに親へ依存しなければならないことへの葛藤もある。医師に話せない悩みは専門スタッフが対応します」と話す。

 3か月に1度、名古屋から母と通院する仙田さん。5月から5年ぶりに働き始めた。「センターのスタッフと出会い、気持ちが前向きになった。あきらめていた恋愛も考えようかな」と笑顔を浮かべる。

 静岡県立静岡がんセンター(長泉町)は、患者同士が支え合うピア・サポートに力を入れる。病棟では毎月のように、患者の誕生日会やたこ焼きパーティーなどがある。ここで活躍するのは、チャイルド・ライフ・スペシャリストだ。治療にまつわる患者の気持ちを聞き、精神的な負担を和らげる。

 資格を持つ阿部啓子さんは「AYA世代は学校や社会の中で自分の位置付けを見いだしていくが、入院中は難しい。『一人ではない』と知ってほしい」と力を込める。

 8月の夏祭りと12月のクリスマスは、退院した患者も「同窓会」のように集まる。小児科部長の石田裕二さんは「元気に働く先輩の姿を見て、患者は『自分も』と思える。抗がん剤治療の経験者から『髪は生えてくるよ』と言われれば、医師より説得力がある」と意義を語る。

 同センターは昨年6月、全国初の「AYA世代病棟」を開設した。「若者の夢は社会の貴重な財産。AYA世代のがん患者を社会に帰したい」と石田さんは語る。

 この世代のがん患者が将来への希望を失わず、前に進んでいくための取り組みが求められている。

AYA世代のがん  AYAは、思春期・若年成人を意味する英語(Adolescent and Young Adult)の略。15~29歳をいうことが多い。白血病や悪性リンパ腫、脳腫瘍など、小児や成人にみられるがんが混在し、どの診療科で診てもらえるか迷うケースもある。患者数は全国で約5000人とされる。(赤津良太)

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