筋ジストロフィーの詩人 岩崎航の航海日誌
yomiDr.記事アーカイブ
それは、生きるため。自分の人生を生きるため
生活の面で何か新たに挑戦しようと思っていることはありませんか?
「ひとり暮らしをしたいです」
今年の2月、仙台で開いた朗読と講演の会で読者の問いかけに答えました。聞かれるまでこんな形で多くの皆さんに思いを発表するなんて考えてなかったのに、ぽんと自然に。
◆◆◆
はじめまして。岩崎航といいます。仙台に住んでいて、「五行歌」という形式で詩を書いています。連載「筋ジストロフィーの詩人 岩崎航の航海日誌」のはじめに、まずは私がどんな人でどんな暮らしをしているのか、紹介しておきたいと思います。
私は全身の筋肉が正常につくれず徐々に衰えていく難病「筋ジストロフィー」を抱えながら生きています。症状が表れてきたのは3歳。少しずつ体の自由が利かなくなり、病を直視せざるをえなくなった17歳、病気を持って生きる将来を悲観して自殺を考えたこともあります。でも、やはり生きたいという気持ちは心の奥に消えずに燃えていて、思い直し、生きることにしました。
20歳をすぎてからは、口から食べる力が弱まり、鼻から管を入れて栄養をとるようになりました。呼吸する力も衰えてきて、人工呼吸器をつけるようになります。自力で座ることもできなくなりベッド上の生活になりました。そしてストレス性の強烈な吐き気にも苦しめられ、20代の半分はただただ嵐が過ぎ去るのをうずくまって待つしかない日々でした。あまりに苦しいと一切がそのことに覆われてしまいます。けれど、幸いにも症状が落ち着いてきました。
一息つけたことで、自分のこれからの行く末、人生を考えるようになりました。何かこのベッドの上で寝たままの自分にもできることはないか、模索を始めました。自分探しというより、もっと切実な。生きている手応えを渇望してのことでした。そして25歳の時から詩を書くようになりました。五行歌を書き続けながら、2013年に詩集『点滴ポール 生き抜くという旗印』、昨年にはエッセイ集『日付の大きいカレンダー』(共にナナロク社)を刊行。ささやかながらも仕事をして生きるようになり、今に至っています。
胃瘻からの経管栄養でエネルギーを得て、24時間人工呼吸器をつけて息を吸い、生活のすべてに介助が必要な状況です。家で両親と3人で暮らしています。くわしくは前掲の2著、ヨミドクターでの取材記事(『岩崎航さん(1)「暗闇の灯火 それは五行歌」』『岩崎航さん トークイベント詳報(上)「生き抜く」意思 詩作に込め』『岩崎航さん トークイベント詳報(下)40歳の挑戦 一人暮らしを』)をご覧ください。
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航さん、はじめまして
らん
以前NHKで再放送含め2度テレビで拝見させて頂きました、らんと申します。 航さんの人柄、お兄様の人柄に感銘を受けてテレビを拝見しました。 お父様...
以前NHKで再放送含め2度テレビで拝見させて頂きました、らんと申します。
航さんの人柄、お兄様の人柄に感銘を受けてテレビを拝見しました。
お父様、お母様もなんと穏やかで知的で…。
確かに御両親からすれば心配もあるでしょうが幸せな御家族という印象を持ちました。
私には自閉症の息子がいてシングルマザーでもあります。私は友人がなかなか出来ない息子を半ば放ったらかしにして働きに出掛けねばならず息子に申し訳ない思いでいっぱいになります。息子を幸せにしてあげたいのに出来ないもどかしさ、そしていつか息子をこの世に置いて行かねばならぬせつなさ、辛さ。
御両親も同じ思いを抱えていることと思います。障害がある子がいるということは世話することの辛さより息子に辛い思いをさせているのではないか…という思いのほうが強いのではないかと思います。航さんがお兄様とお話したり詩を公表して皆さんを助けることが出来ていることに御両親は本当に喜んでらっしゃることと思います。
親孝行な息子さん達…是非是非ずっと幸せでいて下さい。それが私達親に取っての一番の親孝行なのです。可愛くていとおしくて仕方のない存在なんです。
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