文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

知りたい!

ニュース・解説

がん発症率に地域差…食習慣や喫煙率など影響

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

肝臓がんは西日本、胃がんは東北・日本海側

がん発症率に地域差…食習慣や喫煙率など影響

 乳がんは東京、肝臓がんは西日本――。国立がん研究センターが6月末に発表した、がん患者の2012年の全国推計で、都道府県ごとに発症する割合が異なることがわかった。こうした地域差は、なぜ生まれるのだろうか。

 推計によると、12年に新たにがんと診断されたのは、86万5000人。今回、47都道府県のがん登録データが初めてそろい、がんの発症率を都道府県で比較することが可能になった。

id=20160720-027-OYTEI50002,rev=4,headline=false,link=true,float=right,lineFeed=true

 全国平均を100として年齢などを調整して算出した発症率をみると、がん全体では、男性が秋田、和歌山、石川、鳥取、福岡、島根各県と東京都で、女性は東京都、福岡、石川各県で発症率がそれぞれ110以上と高かった。

 乳がんは東京都が133と突出していた。乳がんは女性ホルモンのエストロゲンに長くさらされているほど発症しやすく、出産直後はエストロゲンの分泌が抑えられ、危険性が下がるとされる。

 「東京で乳がんが多いのは、結婚年齢が高く出産を経験していない女性が多いことが影響している可能性がある」と、同センター全国がん登録室長の松田智大さんは指摘する。ほかに都会生活によるストレスの影響を指摘する声もある。

 肝臓がんは福岡、佐賀、和歌山、大分各県で男女共に130を超え、全体的に西日本に偏っていた。これらはC型肝炎ウイルスの感染者が多い地域と重なる。

 このほか、胃がんは食塩の摂取量が多い東北地方や日本海側で増える傾向にあった。肺がんは北海道や北東北、近畿、北九州地方で多く、喫煙率の高い地域とおおむね一致した。

 一方、大腸がんは北海道や、東北、中部地方で発症率が高かったが、明確な理由はわからないという。

 松田さんは「がんは単一の要因で発症するわけではないので、原因を明らかにするのは難しい。居住地の発症率で一喜一憂するのではなく、喫煙や飲酒を控えるなど、科学的根拠に基づいた予防法を続けることが大切だ」と話している。

 資料は、国立がん研究センターのホームページ(http://www.ncc.go.jp/jp/information/press_release_20160629.html)で見ることができる。

全国のデータ登録、論理的な分析、対策へ

 がんの地域差の情報は、都道府県のがん対策に役立つのだろうか。

 がん対策に詳しい国際医療福祉大学教授の 埴岡はにおか 健一さんによると、がんの死亡率が高い地域は、〈1〉発症率も高い〈2〉発症率は低い――の2通りに分けて考えると問題が見えてくるという。

 〈1〉の場合は高い発症率が死亡率の高さにつながっているとみられ、食生活や生活習慣の改善による予防に力を入れる必要がある。

 〈2〉は、検診が普及しておらず、がんが早期に見つけられていない可能性がある。あるいは地域の医療機関のがん治療成績が悪いことも考えられる。

 埴岡さんは「これまでは感覚的に分析せざるを得なかったが、根拠をもって論理的に対策が取れるようになった」と話す。

 死亡率が全国最悪の青森県は、発症率は全国平均と大きく変わらないことがわかっている。弘前大学准教授の松坂方士さんらは、がん検診の受診率は高いのに、早期発見につながっていない点を問題視。検診の精度や、各市町村が再検査の受診勧告を行っているかなどを調べ始めた。

 松坂さんは「がん登録の結果から課題を洗い出し、有効な対策につなげたい」と話している。

 今年1月には、患者情報を一元管理する「全国がん登録」が始まった。都道府県で精度にばらつきがあった点が改善され、質の高い情報が集まり、丁寧ながん対策につながることが期待されている。

 (森井雄一)

→医療大全「乳がん」
https://yomidr.yomiuri.co.jp/iryo-taizen/archive-taizen/OYTED551/

→病院の実力「乳がん」
https://yomidr.yomiuri.co.jp/byoin-no-jitsuryoku/archive-jitsuryoku/?has-enquete=has-enquete&disease=OYTED551

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

知りたい!の一覧を見る

最新記事