文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

宋美玄のママライフ実況中継

医療・健康・介護のコラム

「育休延長」再び 待機児童問題に効果はあるか?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック
阪急電車のブルブルおもちゃに興味津々の息子です

阪急電車のブルブルおもちゃに興味津々の息子です

 幼稚園が先週で夏休みに入り、娘はもう既に、「レゴランド」や「アソボーノ」「ディズニーオンアイス」を心の底から楽しんでいるようです。今週と来週は私の神戸の実家で預かってもらうことになっており、今は今日で生後8か月となった息子が一人っ子状態です。さぞかし楽だろうと思っていたのですが、最近母乳の分泌量が減ったうえに、汗を大量にかくからか、母乳だけでは足りないみたいで、粉ミルクと離乳食をせっせと与えてそれなりに手間がかかっています。すっと寝てくれると、もっと楽なんですけどね。

現行の1年半から約2年まで延長

 先週、政府は保育園の増設が間に合わないため、給付金がもらえる育休を現行の1年半から最長約2年まで延長する方針を固めたことが報道されました。通常は1年ですが、保育園に入れない場合は半年延長できます。しかし、そのまま退職する人が多いため、さらに半年程度延長するということのようです。

 現在の育児休業給付金は、最初の半年間は休業前賃金の67%、その後は1年半まで50%が支給されます。昨年度は約30万人が利用し、受給総額は約4100億円だったそうです。もちろん保育園を早急に増設するのがいいのですが、1軒建てるだけで近隣の住人たちともめ事になったりしていますし、都市部ではコストも高いでしょう。一朝一夕にはいかないので、苦肉の策として育休延長策が考えられたようです。

「役割固定化」「浦島太郎」……様々な「副作用」も

 なんとなく既視感がある政策ですが、2013年の「3年抱っこし放題」を思い出す人も多いのではないでしょうか。賛否両論をもって迎えられ、結局少子化改善の起爆剤とはならなかった育休延長ですが、前回は産むモチベーションの向上が目的だったのに対し、今回は待機児童対策としての提案のようです。保育園に入れなかったから育休を半年間延長したところで保育園に空きが出るはずはありません。1年間「保活浪人」できればその間に保育園に入れる人もいるでしょうが、次の年に産む共働き家庭が極端に減らない限り、待機児童は減らせないでしょう。それに、育休が2年もあれば、育児と家事は母親がするものと役割が固定化してしまいますし、「浦島太郎」になって職場に戻れるか不安な人が多いことも以前から問題視されています。

 そして、育児休暇を実際に取得できる人というのは、かなり恵まれた人だと思います。私は2回出産していますが、1回目は大学院生で2回目は非常勤勤務のため、育休とは無縁です。「仕事が休めて給料の一部が保証されるなんて、うらやましいなあ」、としか思ったことがないんです。育休を取るにはまずは実質的に正規雇用でないといけませんし、制度として存在しても取得できない雰囲気の職場では意味がありません。

待機児童対策、ほかにも様々なアイデアが

 待機児童対策としては、病児保育を行う「NPO法人フローレンス」の駒崎弘樹さんがいろいろとアイデアを出されていますが( こちら に載っています)、とにかくできることをやって受け入れ枠を増やしていただきたいです。育休を延長することに関しては、苦肉の策としては意味がないとは思いませんが、期間を区切るよりは、保育園に入れないために復帰できない場合でも退職させないというようにする方がいいと思います。

 出生率が日本一低い東京都では、現在都知事選の真っ最中です。待機児童対策が重要な政策として注目されているので、今後を注視したいです。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

son_n_400

宋 美玄(そん・みひょん)

産婦人科医、医学博士。

1976年、神戸市生まれ。川崎医科大学講師、ロンドン大学病院留学を経て、2010年から国内で産婦人科医として勤務。主な著書に「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」(ブックマン社)など。詳しくはこちら

このブログが本になりました。「内診台から覗いた高齢出産の真実」(中央公論新社、税別740円)。

宋美玄のママライフ実況中継の一覧を見る

4件 のコメント

コメントを書く

育児休職制度を利用しやすくするために

爽健美茶

いつも、わかりやすい、示唆に富む問題提起をありがとうございます。 ご子息様もお健やかにご成長されているようですね!宋先生おっしゃるとおり、制度が...

いつも、わかりやすい、示唆に富む問題提起をありがとうございます。
ご子息様もお健やかにご成長されているようですね!宋先生おっしゃるとおり、制度があっても運用しづらい状況では、単なる「絵に描いた餅」になってしまいますし、非正規雇用は正規雇用社員よりもっと取得しづらい現状かと思います。中小企業ですと、法律を盾に育休を取得しても、復職後に制裁人事の対象にされた話も時々、周囲で耳にします。

「育休延長」のような、育児に携わる女性への支援体制の充実も大切ですが、父親の育児参加をより促すよう、父親の育休取得支援をもっと進める施策があってもよいのではないかと思っています。父親が育休を取得できるとはいえ、まだまだ本当に少数派で、取得すれば出世コースから外れると本人も周囲も思っている組織が大半ではないでしょうか。
このような価値観は一朝一夕では変化しませんし、国が音頭をとって、父親の育休取得率が高い企業への支援金拠出や一定規模以上の企業へは育休取得の義務化を課すといった思い切った施策をうたないと、少子化はますます歯止めがかからないのではないかと考えています。

今度の都知事選、わたしは都外在住なので投票できないのが残念です。口先でけでなく、本当に実効性のある施策が国に先駆けてうてる方が当選して欲しいと、切に願います。

つづきを読む

違反報告

解決には至らないですよね

ゆうとママ

私の部署にも育休を約1年取っている人がいます。保育園に入れるのなら、すぐ復帰したいと言ってますが、彼女の場合、双子なので入園はさらに難しい状況で...

私の部署にも育休を約1年取っている人がいます。保育園に入れるのなら、すぐ復帰したいと言ってますが、彼女の場合、双子なので入園はさらに難しい状況です。
このまま待機状態が続けば、彼女にも制度改変の恩恵があるのかとも思いますが、あくまで彼女の願いは早期復帰です。
制度改変しても、先生のおっしゃるように待機児童は減らず、働きたいと意欲のある女性の心に、光が差すこととはならないでしょう。

話がそれますが、ある自治体が発刊している広報誌の編集後期に、がっかりする記述がありました。「待機児童問題は、児童手当金を手厚くすれば解決するはず。誰だって本当は自分の手で子供を育てたいのですから。」
夫の稼ぎだけでは養育費が足りない家庭の母親が、保育園に子供を預けてやりたくもない仕事をしに行くもの、と書いてあると受け取りました。
そもそも、子供は母親が家で育てるものという考えにがっかりですし、女が働くのは足りない家計を補填するため、と決め付けるのも納得いきません。
何よりがっかりなのは、これを女性が書いているという事でした。
この方の年齢は不明ですが、このような考えを持つ方達が居る限り、保育園児は「かわいそうな子」であり、女性の地位向上は進んでも、母である女性は地位どころか、やりがいやスキルを生かしたい、社会貢献したいと思って勤める事すら認めてもらえないと思いました。

つづきを読む

違反報告

育休1年すら取れてない人ばかりです

アラサーママ

現在、二人目の育休中です。 育休2年‥どうなんでしょう。私の周りでは、会社の制度的に1年育休を取れるのに産後1か月で復職要請の電話をもらったり、...

現在、二人目の育休中です。
育休2年‥どうなんでしょう。私の周りでは、会社の制度的に1年育休を取れるのに産後1か月で復職要請の電話をもらったり、人手不足で泣く泣く半年で復帰した人ばかりなのであまりピンときません。
2年もあったら、育休中に次の子を妊娠する可能性も高くなりますよね。そうなると、上の子と合わせて4年休職の後、きょうだい二人分の保活に4年ぶりの職場復帰‥大変さが倍増です。
そもそも今の日本企業に、2年も休職する社員を抱える余力あるのかしら。
社員数万人規模の大企業ならともかく、中小や零細企業ではムリだと思います
待機児童対策、苦肉の策とはいえ、一部の人しか使えない制度になってしまいそうですね

育休期間2年に延長するなら、母親が1年取ったあとに父親と交代して父親が残りの1年を取るなど、どちらか一方にばかりキャリアの空白期間が出来ないようにすべきだと思います
男性の育休取得をもっと本気で促進させる策を立ててほしいです

つづきを読む

違反報告

すべてのコメントを読む

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事