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「生活保護」は何のため?
自力での生活が困難な人


生活保護って
誰を助ける
仕組みなの?
病気や失業で収入がなくなれば、生活が崖っぷちに立たされてしまうこともあるよね。憲法が定める国民の基本的人権の一つに「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」(生存権)がある。生活保護は、国がお金を支給し、この生存権を守る制度なんだ。
ただし、生活に困った世帯全てが保護を受けられるわけではない。十分働ける状態なら、まず働かなければならないし、雇用保険の失業給付、児童扶養手当なども活用できる。こうした様々な支援のほか、預貯金や親族の援助を検討しても、やはり自力での生活が困難だと自治体が認めた場合、最後に助けてくれるのが生活保護だ。住む地域や家族構成に応じて「最低生活費」を算出し、それに満たない額が支給されるよ。
現在の受給者はおよそ163万世帯、215万人にのぼる。大きく伸びているのは高齢者で、2014年度は76万世帯。20年で3倍に膨らんだ。十分な蓄えがなく、高齢になって医療や介護の費用がかさみ、年金収入だけでは苦しい人が増えたせいだろう。こうした高齢受給者の9割は独り暮らしで、身近な家族の支えがないことも背景にある。
働き盛り世代を含む「その他世帯」が増えているのも、最近の特徴だ。米国の証券会社の破綻をきっかけに世界的な不況が起きたリーマン・ショック(08年)の直後から急増した。非正規の労働者が拡大し、働いても食べていけない「ワーキングプア」などが広がったためといわれている。
こうした事情から、生活保護にかかる費用は年々増え、今年度(予算ベース)は3・8兆円に上る。
当然、国民の税金が使われるのだから、資産や収入を隠して生活保護を不正に受け取るのは困る。だけど、あまり要件が厳しすぎると、深刻な状態になるまで保護を受けられず、かえって自立支援につながらない面もあるんだよ。だから、むしろ利用のハードルを下げ、「もっと気軽に使えるようにした方がいい」という意見もあるんだ。
生活が苦しい世帯を救うだけでなく、将来の自立を後押しする視点を大事にしたいね。(高倉正樹)
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