元大関・栃東 玉ノ井太祐さん
一病息災
[元大関・栃東 玉ノ井太祐さん]脳梗塞(4)医師の宣告で引退決意
5年間の大関時代、3回の優勝を果たした。当時最強の横綱・朝青龍に「最も苦手な力士」と言わしめ、通算10勝15敗。顔を張られて鼻を骨折しながら勝利したこともあった。最後の優勝は2006年1月場所。千秋楽に朝青龍を上手出し投げで下した。
その一方で、けがによる休場が重なり、2度関脇に陥落した。2度とも次の場所に10勝以上を挙げ、大関に復帰した。2度の大関復帰は大相撲史上、唯一だ。
30歳で迎えた07年3月場所。初日から7連勝し、10日目には勝ち越した。だが、ひどい頭痛に悩まされていた。朝青龍に敗れた後、病院で検査を受けると、最高血圧は200以上。過去に脳の血管が詰まる脳梗塞を起こし、自然治癒していたことも分かった。「振り返れば、言葉がもつれると言われたことがあった」。それでも、高血圧は治療していなかった。医師から「現役を続けたら、いつまた脳梗塞を起こすか分からない。再発したら命の保証はない」と宣告された。
入院してやむなく休場。後に複数の病院で検査を受けたが、医師の判断は同じだった。「体のことを考えれば仕方ない。土俵でやり残したことはない」。次の5月場所直前に引退を表明した。
横綱には一歩届かなかったが、常に全力で土俵に向き合ってきた男の引き際の表情はすがすがしかった。
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元大関・栃東