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医療・健康・介護のコラム

4年に1度のチャンスをどうつかむか?オリンピックに魅せられて(上)選ばれし者の戦い、オリンピックへの道

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 みなさん、本格的な夏になりましたね。暑い日が続いていますね。間もなく、リオデジャネイロオリンピック・パラリンピックが開催されます。どんな素晴らしいパフォーマンスがみられるか、いまからとても楽しみですね。今回のカフェは、かつて私が経験したオリンピックについて触れてみたいと思います。

4年に1度のチャンスをどうつかむか?オリンピックに魅せられて(上)選ばれし者の戦い、オリンピックへの道

2004年6月6日、陸上・日本選手権女子ハンマー投げ決勝で投げる室伏さん。大会新記録で優勝した

 12年前の夏、私は窮地に立っていました。2004年6月上旬、アテネオリンピック出場をかけた代表選考会、日本陸上競技選手権大会。私は、女子円盤投げとハンマー投げの2種目にエントリーしました。毎年開催される日本選手権、日本のチャンピオンを決める国内最高峰の大会です。この大会は、オリンピックや世界選手権、アジア大会など主要大会の代表を決定する、極めて重要な競技会となります。そのため、代表選考がかかった日本選手権の重みはより一層です。

 大会初日、円盤投げに出場、4連覇を達成。惜しくも、オリンピックの選考対象となる設定記録には1m39届かず。残念ではありましたが、しかし、私の本命はその2日後、大会最終日に行われるハンマー投げでした。ハンマー投げの競技歴は5年目。前年の2003年は自己記録が62m台。2004年に入り、一気に記録が伸び、日本選手権の直前には64mを超えました。オリンピック出場に向けて、狙いを定めて出場した選考会の結果は、66m12。自己新記録、大会新記録、初の日本選手権優勝。3つの喜びが同時に重なりました。直前に出した64mも、日本選手権での記録も、アテネオリンピック代表の選考対象となる「B記録」を超える記録でした。

難関、オリンピックの選出基準

 2004年の当時、オリンピック選考対象となる資格は、国際陸上競技連盟が定めた設定記録(A、Bの参加標準記録)をクリアし、かつ、代表選考会で優勝する必要がありました。現在は、AとBの記録は統合され、記録設定は1つになっています。

 2004年アテネオリンピック参加資格である「A記録」は67m50。2004年の女子ハンマー投げ世界ランキング40位相当の記録です。A記録を投げ、選考会で優勝すれば、オリンピックは即内定します。

 一方で、「B記録」は64m00と定められていました。この記録では、オリンピックに出場したとしても高い順位は見込めませんが、選手選考の対象者にはなります。しかしながら、オリンピックに出場するからには、ある程度戦える力がなくては代表に選出される見込みは低いといえます。

 競技種目により、世界ランキングの比較は異なりますが、私の取り組んでいたハンマー投げの場合、その年の世界ランク50位以内に位置していることも選考の目安とされました。日本選手権で投げた66m12は、その時点で世界ランク55位ぐらいだったと思います。B記録であっても、A記録に近い、67m台だと即内定の望みが大きかったかもしれませんが、自己新記録、大会新記録、初優勝という「インパクト」だけでは、「伸び率が高い」という評価はあっても、オリンピック選出の材料として貢献度が高いとはいえません。

 「微妙だな、どうだろう……」。心に落ち着きはありませんでした。

1次選考、落選

 大会翌日、6月7日。オリンピック派遣選手の大部分が決定する内定者の発表がありました。そのリストには、私の名前は見当たりませんでした。

 「どうしよう、選ばれなかった……」。自己記録を大幅に更新しての優勝は、とても険しい道のりを 辿たど っての結果でした。21歳からハンマー投げを始めて、「たった」5年半という浅いキャリア。この競技はおそらく大成するのに7~8年はかかります。短い競技経験でオリンピックの参加資格記録を投げることは、様々な要因を考えても奇跡の連続でした。しかし、その喜びも、一夜にして消え去ります。

 「わたしは、4年に1度のチャンスを逃してしまったのか……」

 27歳、次の4年後のオリンピックは、狙える体力や技術が年齢的に持続できているのか。一体自分は、これからどうすればいいのか、途方に暮れました。当時感じたショックは、落雷にも似た衝撃でした。今でもその時の気持ちが鮮明に思い出されます。

 しかし、日本選手権優勝、B記録を突破していたことで、望みが つな がります。陸上競技のオリンピック派遣枠があと6人あること、追加代表者を7月12日に選出することが分かりました。6人の内訳として、2人が男子1600mリレーの補欠メンバーの選出、男子110mハードルで再選考する選手が2人。よって、本当に残っている枠は2人でした。私は、残されたリミットの1か月間、エントリーが可能な競技会を探し、出場し続け、記録をできるだけ伸ばすチャレンジをすることを決意します。

 一つだけ、希望を持てることがありました。「いつも練習で投げている距離(記録)が、試合でまだ出ていない」。本番で100%の実力を発揮すれば、記録を更新する可能性は大いにある、そう感じていました。

 この続きは、また次回のカフェで。それでは皆さん、次回のカフェで、 美味おい しいアイスティーでも飲みながら会いしましょう。

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室伏由佳(むろふし・ゆか)

 1977年、静岡県生まれ・愛知県出身。株式会社attainment代表取締役。2004年アテネオリンピック女子ハンマー投げ日本代表。円盤投げ、ハンマー投げ2種目の日本記録保持者(2016年4月現在)。12年9月引退。

 アスリート時代には慢性的な腰痛症などスポーツ障害や婦人科疾患などの疾病と向き合う。06年中京大学体育学研究科博士課程後期満期退学(体育学修士)。スポーツ心理学の分野でスポーツ現場における実践的な介入をテーマに研究。現在、スポーツとアンチ・ドーピング教育についてテーマを広げ、研究活動を継続。現在、上武大学客員教授、朝日大学客員准教授や、聖マリアンナ医科大学スポーツ医学講座、徳島大学医学部、中央大学法学部など、複数の大学において非常勤講師を務める。スポーツと医学のつながり、モチベーション、健康等をテーマに講義や講演活動を行っている。日本陸上競技連盟普及育成部委員、日本アンチ・ドーピング機構アスリート委員、国際陸上競技連盟指導者資格レベルIコーチ資格、JPICA日本ピラティス指導者協会公認指導師。著書に『腰痛完治の最短プロセス~セルフチェックでわかる7つの原因と治し方~』(角川書店/西良浩一・室伏 由佳)。

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