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在宅訪問管理栄養士しおじゅんのゆるっと楽しむ健康食生活

コラム

体にいい果物や野菜ですけど……

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さくらんぼがおいしいシーズンは短いですね。でも食べ過ぎないように!

さくらんぼがおいしいシーズンは短いですね。でも食べ過ぎないように!

 最近、 (うれ) しい連絡がありました。以前にこのコラムでも紹介したことがある患者さんの血糖コントロールが改善傾向にあるそうなのです。ご本人は、「あたしゃね、そんなに食事の内容を気にしてないんだけどねェ」と、いたってマイペースなのですが……。

 もしかすると、これまでの私の栄養指導の半分は忘れてしまっているかもしれません。それでもご本人の大好物である「コロッケサンド」を控え、食事の初めに野菜や海草を食べるなど、アドバイスのいくつかを続けてくださっているようです。

 先日、その患者さんから果物をお裾分けしていただきました。「親戚からたくさんもらって、食べきれないから持っていってちょうだい」とのこと。確かに、 柑橘(かんきつ) 類やりんごが段ボール箱いっぱいに詰まっていて、一人では食べ切るのは大変です。ご家族の命日に合わせて、仏壇にお供えするためのものだそうです。私もこの患者さんの居間でお仏壇に手を合わせてから、ありがたく頂戴しました。

 「ビタミン類がたっぷりで体にいいから」と、毎日たくさんの果物を食べている方がまれにいらっしゃいます。糖尿病や中性脂肪が高めの方でも、甘いお菓子やおせんべいなどは気が引けるけれど、「果物ならいくら食べても大丈夫!」と、安心して召し上がっている場合があります。

 果物にはその名の通り「果糖」という種類の糖がたくさん含まれています。この果糖は、小腸で吸収されると肝臓へ運ばれ、エネルギーを作るのに使われるのですが、余ってしまった分は、「グリコーゲン」という物質に変えられて貯蔵されます。

 しかし、肝臓に貯蔵できる量には限界があるので、それを超えると、今度はブドウ糖に変えられて血液の中に放出されるか、「中性脂肪」に変換されてしまいます(注1)。

つまり、必要なエネルギー以上の果物を食べてしまったら、巡り巡って「血液中の糖や油」になってしまうということです。

 ごはんやパン、麺などの主食やおやつ類はあまり食べていないのに血糖コントロールが悪い方に、「もしかして、果物がお好きですか?」と尋ねると、「どうしてわかるの?」と驚かれることがあるのですが、その仕組みを説明すると納得されます。

 私たちの体は、血糖値が高くなったら、ホルモンを分泌して一定の基準値にまで戻してくれる働きがあります。このため、血糖値の急上昇があまりに頻繁に繰り返されると、ホルモンを出している 膵臓(すいぞう) ががんばり過ぎて疲弊していきます。やがて機能が衰え、十分なホルモンを出せなくなった状態が糖尿病です。したがって、普段から血糖値は急激に上げ過ぎないようにすることが大切です。

 果糖の影響で血糖値を急上昇させやすい果物を食べる時には、「量を決めること」がポイントです。例えば、みかんなら2個、りんごや梨は1/2個、いちごやぶどう、さくらんぼは10粒程度、グレープフルーツなどの大きめの柑橘類は1/2個などです。体格や年齢、活動量によっても変わりますが、だいたいの目安は「片手に1杯」といったところでしょうか。

 「でも、果物が大好きだから、もっと食べたい!」

 「うちは果物農家だから、そんなもんじゃ済まないよ!」

 そう言われる方もいらっしゃるでしょう。だったら一日の食事全体を見渡して、「今日は果物をたくさん食べちゃったから、芋類のおかずはやめておこう」とか、「麺類を半玉にしておこう」など、炭水化物の摂取量を調整して、摂取する糖質量を減らせばいいのです。

 血糖値の急上昇を抑えるためには、海藻、こんにゃく、きのこをメインにした料理を1品加えるのもおすすめです。

 我が家では、最近「めかぶ」が 流行(はや) っております。春から初夏にかけて、東北のスーパーには緑鮮やかな「三陸産めかぶ」が出回ります。うちの娘たちが、このネバネバ&コリコリ食感を気に入り、食事の初めに前菜替わりに食べています。

 ところで、夕飯が近づくと「お腹すいた! なんかちょうだい! 味見させて!」と、子どもがキッチンに来ることがあると思います。そんなとき、 (あめ) やチョコレートを渡してしまったりしていませんか? その一粒の飴が血糖値を上げてしまい、肝心の食事をしっかり食べられなくしてしまうことがあります。

 これは子どもに限ったことではありませんが、食事の直前に「ちょっと小腹がすいたな」と感じたら、血糖値が急上昇しにくい海藻かこんにゃくでしのぐのがお勧めです。

 好きなものはつい食べ過ぎてしまうのは私自身も常に感じていることですが、訪問先でこんな事例がありました。

 ある70代男性のHさん。かなりの偏食のため「栄養失調状態」になっていました。徐々に体力も落ち、いよいよ自分で立ち上がることができなくなっていました。そこで私が食生活について聞いてみると、「野菜ばかり食べ、肉や魚は残してしまう」とのこと。どうして野菜ばかりを食べるのかを聞いてみると、「とにかく野菜が好き」だとおっしゃいます。

 そこで質問を変えました。「以前、どんなお仕事をされていたのですか?」と聞くと、「八百屋だよ。元気だった頃はね、毎日市場に行って、競りで野菜を仕入れていたよ」と。

 「なるほどなぁ」と納得です。

 来る日も来る日も真剣に野菜と向き合ってきたHさんの人生を垣間見たような気がしました。それなら「野菜より肉を食べましょうね」などとはアドバイスせず、Hさんが愛してやまない野菜をたっぷりと食べられるおかずやスープを提案しました。肉団子の野菜あんかけや、野菜たっぷりの豚汁などで、たんぱく質源になる食材をさりげなく献立に加えていただくよう提案したところ、みるみる栄養状態が良くなっていくのがわかりました。貧血も改善し、自力で家の中を移動できるまでに体力が回復したのです。

 「野菜が好き」「果物が好き」など、個人の 嗜好(しこう) は食生活を豊かにしてくれます。日々の工夫で好きなものを食べ続けられるような「ゆるっと食事療法」を提案していきたいと改めて思った出来事でした。

注1 「はじめてのカーボカウント2版」(中外医学社 坂根直樹・佐野喜子編著)

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塩野崎顔2_100

塩野崎淳子(しおのざき・じゅんこ)

 「訪問栄養サポートセンター仙台(むらた日帰り外科手術WOCクリニック内)」在宅訪問管理栄養士

 1978年、大阪府生まれ。2001年、女子栄養大学栄養学部卒。栄養士・管理栄養士・介護支援専門員。長期療養型病院勤務を経て、2010年、訪問看護ステーションの介護支援専門員(ケアマネジャー)として在宅療養者の支援を行う。現在は在宅訪問管理栄養士として活動。

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