文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

がん診療の誤解を解く 腫瘍内科医Dr.勝俣の視点

医療・健康・介護のコラム

正しい免疫療法のすすめ(上)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

抗がん剤を拒否する人は、トンデモ医療に流れる傾向に

 Mさんのように、がんと診断され、免疫細胞療法を受ける患者さんは、年々増えてきているように思います。

 近藤誠医師の影響も大きく、抗がん剤を拒否する患者さんも増えてきたのですが、

 抗がん剤を拒否した患者さんの多くは、抗がん剤を止め、何もしていないのが不安になり、以前にお話ししたような食事療法や、Mさんのように、免疫細胞療法をやってしまう方が大変多いように思います。

 近藤誠先生の著書に対する私の考えは、私の著書(1,2)を参照してくださればと思いますが、免疫細胞療法を行うクリニックは、いかにも医学的、科学的に正しいと見せかけた理論や情報を流して、患者さんを惑わせてしまっている点は、近藤誠先生と同罪のところがあると思います。

免疫細胞療法の効果は?

 結論から言いますと、現在、日本で行われている免疫細胞療法は、全て、医学的、科学的に効果はきちんと実証されていないと言えます。

 免疫細胞療法は、自己の免疫細胞(リンパ球)を体外で増殖したり強化したりしてから体内に戻し、がんを攻撃しようという治療法です。

 免疫細胞療法は、古くから研究され、今まで世界中で大変多くの免疫細胞療法の研究がなされてきましたが、残念ながら、一つも有効性が実証されていないということです。

 唯一の例外が、米国で前立腺がんに承認された「シプリューセルT(プロベンジ)」という治療です。シプリューセルTは、前立腺がんに対する樹状細胞ワクチンを使用した治療で、免疫細胞療法の一つです。

 ただ、このシプリューセルTは、前立腺がんを治すほどの効果ではなく、ホルモン療法が効かなくなった前立腺がんに対して、4か月の延命効果をもたらしたというものです(3)。

 実は、前立腺がんのホルモン療法としては、シプリューセルTの承認後、「エンザルタミド」や、「アビラテロン」などの新しいホルモン療法が承認されたことや、シプリューセルTの治療費が、9万3000ドルと高額でもあり、米国でも使用は限定されてきています。

 日本で研究されている免疫細胞療法は、このシプリューセルTとは全く異なっているものです。

体験談の掲載には要注意!

 インターネットのホームページには、
 「2万人を超える治療実績」
 「5千例の投与実績」
 などと書いてあります。

 また、実際の治療例が掲載されていて、
 「末期の肺がん患者に、免疫細胞療法を行い有効であった例」
 などと、実際の、コンピューター断層撮影法(CT)写真や、陽電子放射断層撮影(PET)検査などで改善した例などが掲載されていたりします。

 このように書かれていますと、どなたでも、信じてしまうのではないでしょうか?

 こうした実際の体験談や、症例報告などはわかりやすいのですが、問題なのは客観性です。

 本当に効果があったのであれば、医学会にきちんと報告してほしいのですが、残念ながら、このような報告はほとんど見られません。

 また、他の治療、たとえば、抗がん剤や、ホルモン療法などと併用している場合などもよくあります。

2 / 4

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

katsumata

勝俣範之(かつまた・のりゆき)

 日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授

 1963年、山梨県生まれ。88年、富山医科薬科大卒。92年国立がんセンター中央病院内科レジデント。その後、同センター専門修練医、第一領域外来部乳腺科医員を経て、2003年同薬物療法部薬物療法室医長。04年ハーバード大学公衆衛生院留学。10年、独立行政法人国立がん研究センター中央病院 乳腺科・腫瘍内科外来医長。2011年より現職。近著に『医療否定本の?』(扶桑社)がある。専門は腫瘍内科学、婦人科がん化学療法、がん支持療法、がんサバイバーケア。がん薬物療法専門医。

がん診療の誤解を解く 腫瘍内科医Dr.勝俣の視点の一覧を見る

4件 のコメント

コメントを書く

苦言

Anonymous

告知から治療方針説明までの、医療者の問題もあるのでは。向き合ってくれなかったと感じて、免疫療法に走ったような。 そもそも根拠ない健康に関する記事...

告知から治療方針説明までの、医療者の問題もあるのでは。向き合ってくれなかったと感じて、免疫療法に走ったような。
そもそも根拠ない健康に関する記事に乗って集団で踊るのが当たり前で過ごした人達、躍らせるビジネスのおしゃれファッション雑誌の人達も大概ですがね。

つづきを読む

違反報告

正しい情報の見極め方………

いのちゃん

まさに、私もネットの情報に翻弄されてた人間のうちの1人です(笑)母がガンになり、藁をも掴む思いでガンの事を調べていたら、やたら色んなクリニックの...

まさに、私もネットの情報に翻弄されてた人間のうちの1人です(笑)母がガンになり、藁をも掴む思いでガンの事を調べていたら、やたら色んなクリニックのガン治療の広告が流れてくるようになりました。標準治療でどうしようも無いと言われれば、なんとかして助けたい気持ちでいっぱいになります。効果が無くて無くなっても誰も責任を取ってくれません。これからは鵜呑みにせず気を付けます。

つづきを読む

違反報告

自由診療の規制は可能か

病疲れ

大変興味深く拝読させて頂きました。ありがとうございました。 自動車にしろ、電気製品にしろ、政府の規制があり、それに合格したものだけが販売されると...

大変興味深く拝読させて頂きました。ありがとうございました。
自動車にしろ、電気製品にしろ、政府の規制があり、それに合格したものだけが販売されるというふうに理解していますが、こと、医療や食品など、健康に係ることに関しては、まやかしの部分が多いような気がします。ちゃんと動かない車は販売できないでしょうし、音のならない音響システムは売れないでしょうし、何もうつらないTVも買う人などいないでしょう。
医療に比べたら、自動車産業など、とても良心的に思えます。
全ては金なんですかね。

つづきを読む

違反報告

すべてのコメントを読む

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事