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「会陰切開、毎回しないで」―米学会

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「会陰切開、毎回しないで」―米学会

産科医向け指針で

 「会陰切開」をご存じだろうか。通常の出産(経腟分娩=けいちつぶんべん=)をしたことがある女性では、経験者も多いかもしれない。「会陰切開」とは、分娩時に腟と肛門の間の部分(会陰)が十分に伸びず、裂けて大きな傷ができてしまうのを防ぐためにハサミなどで切ること。デリケートな場所をハサミで切られると思うと恐ろしくなるが、実際には陣痛の苦しみが勝り、切られていたことに気付かなかったという声も多い。この会陰切開を産科医が経腟分娩のたびに必ず行うことについて、米国では10年前から産科婦人科学会(ACOG)が否定的な見解を示している。6月22日に同学会が「Obstet Gynecol」( 2016; 128: e1-e15 )で発表した産科医向けの診療行為に関する見解を示した文書(practice bulletin)でも、「日常的に会陰切開を行っても、長期的あるいは短期的なメリットはないため、行うべきではない」と改めて指摘。その根拠となる研究データなども紹介している。

重度の裂傷予防に「会陰マッサージ」と「温湿布」を推奨

 文書によると、経腟分娩で出産したことのある妊産婦の53~70%が腟の周辺での裂傷を経験するが、そのほとんどは軽度の裂傷だという。ただ、重度の裂傷、特に肛門括約筋の断裂や肛門、直腸まで裂傷が及ぶような裂傷ができてしまった場合には、尿失禁や便失禁の他、痛みが長く続くなど、産後もさまざまな症状に悩まされることがある。

 こうした重度の裂傷の予防も会陰切開を行う目的の1つとされているが、今回ACOGが文書をまとめるに当たって文献を調べたところ、日常的な診療行為として「会陰切開を必ず行う」ことによって、重度の会陰裂傷や骨盤底機能不全(尿失禁や便失禁を含む)、骨盤臓器脱を防げるという結論は得られなかったという。むしろ、会陰切開は産後の便失禁リスクの増加に関係すること、さらに性交時に痛みを感じたり、パートナーとの性生活の再開が遅れたりする傾向が認められたという。

 米国では日常的な診療行為として会陰切開を行う医師の割合は減少傾向にあり、2012年には12%程度だったという。しかし、今回の文書の作成メンバーらは、少なくとも10人に1人の産科医が依然として日常的に会陰切開を行っている現状を問題視。文書の発表に際し、「産科医には、科学的な根拠に基づいたアプローチを取るべき」とコメントしている。

 ただ、会陰切開の方法にはいくつかあるが、ほとんどの研究で複数の方法がまとめて検討されているため、特定の会陰切開法による影響は正確には分かっていないという。このことからACOGは、どのような妊産婦に対し、どのような方法による会陰切開を行うべきかを明らかにするために、引き続き研究を行う必要があると指摘。その結果が出るまでは、産科医は経腟分娩のたびに必ず会陰切開を行うのではなく、それぞれの妊産婦の状態を考慮して会陰切開を行うかどうかを判断すべきとの見解を示している。

 一方、文書では重度の裂傷を予防する効果が明らかにされている対策として、「会陰マッサージ」と「(会陰への)温湿布」が勧められている。特に温湿布に関しては、しない場合に比べて3度および4度の会陰裂傷リスクが低くなるという分析結果が報告されているという( Cochrane Database Syst Rev 2011; 12: CD00667 )。

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