泌尿器科医・小堀善友の新オトコのコト
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男子か女子か…「産み分け」はできるのか
私には、男の子が4人います。
初めてそのことを知った人は、みんな最初はびっくりするのですが、その後に必ず「女の子はいらないの?」と聞いてきます。
面白いことに、外国人に話しても、同じことを聞かれました。
まあ、女の子がほしくないといえば
ちなみに、海外でこのネタになる時は、「I want a girl, but my wife gave up.」というと必ず笑いが取れたので、私の鉄板ネタになっていました。
その次に話題となるのは、性別の産み分けについてです。「お前は不妊症の専門家なのに、女の子の産み分けをしなかったのか」と聞かれます。
確かに、着床前診断という方法で、性別を決める染色体を調べることによって、希望する性別の受精卵を使って顕微授精を用いれば確実に産み分けはできます。しかし、国内では、単に男の子がほしい、女の子がほしいという理由での実施は、倫理的な理由から学会が認めておらず、そもそも私たち夫婦は幸運にも自然妊娠で子供を授かったので、そこまでしようとは思いませんでした。
ウシの産み分け、カギは精子
しかし、ウシではほぼ現在完全に産み分けができるようになっています。
なぜ、ウシに産み分けが必要なのでしょうか?
それは、単純に酪農では搾乳用のメス牛の方がよく、肉牛生産では体格の良いオス牛の方が適しているからです。
畜産牛は、自然交配で
では、どのように産み分けをするのでしょうか?
ポイントは精子にあります。動物の染色体は、22対(合計44本)の常染色体と、2本の性染色体の合計46本でできています。性染色体がXXの場合はメス、XYの場合はオスになります。卵子と精子の中には、それぞれ半分の23本の性染色体があります。
卵子の中の性染色体は、X染色体しかありません。一方、精子の中には、X染色体もしくはY染色体のどちらかが入っていることになります。X染色体の入っている精子が受精すれば子供はメス、Y染色体が入っている精子が受精すれば子供はオスになります。オスとメス産み分けの決定権は精子にあるのです。
染色体の量で振り分け
実際の畜産の現場ではまず、オス牛の精子が人工
振り分けのポイントは、染色体の量です。X染色体は、Y染色体に比較すると非常に大きいのです。そのため、Y精子と比較すると、X精子の全体の染色体(DNA)量は、ウシでは3.8%多くなります。ちなみに、人では2.8%、チンチラではなんと7.8%も、X精子の方のDNA量が多いことがわかっています。その染色体の量を機械で感知して、それぞれの精子を振り分けるというのです。それぞれの精子を人工授精に用いることによって、産み分けが可能です。なんと、その精度は90%以上であるといいます。すごい!
ヒトの精子の場合
ちなみに、ヒトの精子でも同様の原理を用いることにより、産み分けはできるといいます。
ただ、先ほどお伝えした通り、ヒト精子のX精子とY精子のDNA量の差はたったの2.8%であり、ウシより選別が難しいことがわかっています。しかし、さらに特殊の機械を使うことにより、75%ほどの精度でX精子とY精子を選別することができるようになるといいます。今、実用化されてはいません。
最後に、一言。私は、男の子しかいませんが、それも良いものですよ。毎日が合宿場のようです。もちろん妻は、大変ですけど。
私は精子の専門家なので、学会の時に精子のネタになった時に私の子供を引き合いに出して、「My sperm have only Y chromosome.(私の精子にはY染色体しかいない)」というと、これもまた笑いが取れる鉄板ネタです。ちょっとマニアックなネタですが。
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