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発達障害の子、災害時どう支援

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避難の見通し伝え安心感

発達障害の子、災害時どう支援

絵本「やっぱりおうちがいいな」

 大災害時、孤立しがちなのが、自閉症などの発達障害を抱える子どもたちやその家族だ。5年前の東日本大震災に続き、4月の熊本地震でも避難所を気軽に利用できない問題が繰り返された。どう支援し、理解と共感を深めればいいのか。

情報は目で見やすく

 熊本市中央区の山内美代子さん(47)は、共に自閉症を抱える長男(20)と次男(16)を育てる。2度の大きな地震で自宅は無事だったが、倒壊するかもしれない恐怖から、避難所になった近くの中学校敷地で、3人で車中に2泊した。

 長男は自閉症特有の物事へのこだわりが強く、大きな音量でゲームをしたいと騒ぎ、真っ暗にしないと眠れない。中学校で休めそうな場所は体育館しかなかったが、「子どもを連れて避難できるような状況ではなかった」と言う。

 たまたま赤ちゃんを連れた近所の知人が、体の弱い高齢者など配慮が必要な家族と共に2階の教室で寝泊まりしていて、招き入れてくれた。落ち着いた雰囲気の中、家で使っている布団やゲームを持ち込んだこともあり、子どもたちは安心して眠れたという。

 自閉症児の親たちで作る熊本県自閉症協会は月2回、育児の悩みなどについて情報交換する集い「あんだんて」を2001年から続けている。6月上旬には被災した7人の母親が参加したが、避難所を利用したのは山内さんだけだった。山内さんは「自分たちも災害への備えが不十分だった。家族の状況を近所に理解してもらうことも大切だと思う」と話す。

 発達障害を持つ子どもは、普段と違う様子や急な予定変更が苦手で、パニックを起こすことも多い。見知らぬ人が大勢いる避難所の利用は容易ではない。

 宮城県自閉症協会長の目黒久美子さん(仙台市太白区)は東日本大震災で、自閉症の次女と大規模半壊の自宅にとどまり続けた。「熊本でも我々と同じ状況だったのは残念」と話す。

 発達障害の子どもたちが災害時に何を感じ、その子どもたちとどう接するかを理解するのに役立つのが、熊本市子ども発達支援センター所長で小児科医の木村重美さん(55)らが5月に作成した絵本「やっぱりおうちがいいな」だ。地震の恐怖から家に入れない5歳の男児をモデルに、家族の対応を描いた。

 絵本では、発達障害の子どもにもイメージしやすいように、地球がくしゃみをしたのを地震の原因に例えた。地震が起きたら机の下に逃げることなど、親が避難行動を視覚化して今後の見通しを示した。

 木村さんは「発達障害がなくても、地震の揺れが続けば恐怖を感じるのは当たり前。情報を視覚化して示し、見通しが分かれば子どもは安心感を得られる」と説明する。絵本は熊本市のホームページ( http://www.city.kumamoto.jp/ )から検索し、無料でダウンロードできる。

 避難先でも、周囲とは区切られた部屋などが用意されると、一般の被災者に気兼ねなく利用できる。食事や水の配布などでも、発達障害があると列に並びづらいので、家族ごとに柔軟に対応するなどの配慮が必要になる。今後の災害での大きな課題だ。

  ■メモ  日本自閉症協会は発達障害を持つ人の家族や支援者向けに、災害時に役立つ持ち物や避難所生活の心構えなどを説明した「防災・支援ハンドブック」を作成し、ホームページ(http://www.autism.or.jp/bousai/)で公開している。

 (石塚人生)

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