文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

がんサバイバーの立場から 桜井なおみ

さよならを言う前に~終末期の医療とケアを語りあう~

【延命治療】私は延命治療という言葉が嫌いです

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

テーマ:「延命治療」とは何か? 無意味な治療と必要な治療を分けるもの

 私は延命治療という言葉が嫌いです。

 以上。

 これだけ書いて、ヨミドクター編集長の岩永記者へ原稿を送信したら、絶対に「その理由を書いてください!」と言われるはずなので、「その理由」を書きます。

 私が「延命」という言葉が嫌いな理由は、「生から死を見つめたときに使われる一方的な価値観を押しつける言葉」だと思うからです。

 宗教学者であり、がんと共に10年間生きた岸本英夫さんの書籍『死を見つめる心』の中に、「生命飢餓状態にある生」と「観念の世界にあるときの生」は質が異なるとありました。入院中のベッドの上でこの本を読んだ私は、この言葉に大いに (うなず) きました。

 私自身、明日も明後日も当たり前にやってくると信じている「観念の世界」にいた頃には、「死というものは、美しく、崇高で、神聖なものであるべし!」と思っていました。栄養を医学の力で補給しながら「生きながらえる状態」は「延命」以外の何物でもないと思っていました。私の母も生前、「排便や排尿が自分の力でできなったらもういい」とよく言っていました。

 何をもって延命治療とするかは、その人の生命の飢餓状態の程度や生活の質の違い、その人のそれまでの生き方、親からの教え、家族とのあり方、死生観などによって全て異なります。それをまとめて「延命治療」と名付け、「忌み嫌うべきもの」として共有していくことに、私は疑問を感じています。

 仮に延命治療というものを、「治せない、治らない病気に対する治療」と考えた場合、どうなるでしょうか? 転移性のがん患者や難病患者など「根治できない疾患、治療方法がない疾患」に対する治療は全てが「延命治療」でしょうか?

 さらに言うならば、人はいつか、必ず死ぬわけで、生きていること自体が全て「延命」です。となると、そこで受ける治療も「延命治療」になるのでしょうか? このような理由で、私は「延命治療」という言葉が嫌いなのです。

 では、私が考える「延命治療」とは何なのか?

 私は、治療の目的を患者、家族で共有していない、もしくは、見失っている対話不足の治療が「延命治療」だと思います。治療には必ず目的やゴールがあるのです。

1 / 3

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

さよなら・その2-2-300-300シャドー

さよならを言う前に~終末期の医療とケアを語りあう~

 終末期医療やケアに日々、関わっている当事者や専門家の方々に、現場から見える課題を問いかけて頂き、読者が自由に意見を投稿できるコーナーです。10人近い執筆者は、患者、家族、医師、看護師、ケアの担い手ら立場も様々。その対象も、高齢者、がん患者、難病患者、小児がん患者、救急搬送された患者と様々です。コーディネーターを務めるヨミドクター編集長の岩永直子が、毎回、執筆者に共通の執筆テーマを提示します。ぜひ、周囲の大事な人たちと、終末期をどう過ごしたいか語り合うきっかけにしてください。

さよならを言う前に~終末期の医療とケアを語りあう~の一覧を見る

10件 のコメント

療養病棟の現場にて…

あさい

後期高齢の患者様の看護を行っておりますが、殆どのご家庭でお年寄りがご病気になると、自宅で頑張って介護されていたご家族は「できるだけの事をしてくだ...

後期高齢の患者様の看護を行っておりますが、殆どのご家庭でお年寄りがご病気になると、自宅で頑張って介護されていたご家族は「できるだけの事をしてください!」と言われます。
初めのひと月程は毎日のようにお見舞いにこられますが、段々と月日が経つにつれ、患者様が元気になってもならなくても代わり無くお見舞いの回数が減ります。
面会時間も減ります。
最悪になると洗濯も業者任せで、毎月の支払いのみ受付に顔を出すだけ。
最初は「早く元気になって帰ってきてね」と言っていたご家族も最後には「もう自宅では看られません」普通に歩けるようになった患者様に対してです。
「ご自宅でも日常生活には介護保険の活用で十分に問題なし」と説明しても「じゃあもしもの時はあなたが責任とれるんですか!」と大激怒…
結局は年寄りの世話から解放されて楽になった瞬間から連れて帰る気なんてなかったのです。
だったら何故助けてと頼んだのか…病院は宅老所ではないのに…
施設への入所より療養型の病院の医療費の方が安いのも退院させない要因の一つでしょうが…
毎日退院したがる元気な患者様に、退院できない本当の理由も話せず…私達はなんのために誰のために看護をしているのか…延命とはなんぞや…家族とはなんぞや…日々考えあぐねております。

つづきを読む

違反報告

延命治療 に苦しめられています。

ひろ

延命治療 ということばに定義がありません。 命と真剣に向き合った人にとって の 延命治療 自分の命と向き合った人にとっての 延命治療 最愛の人の...

延命治療 ということばに定義がありません。

命と真剣に向き合った人にとって の 延命治療
自分の命と向き合った人にとっての 延命治療
最愛の人の命と向き合った人にとっての延命治療
今 なのか 明日なのか でも違います。

今の私にとっての 延命治療とは?
呼吸困難に陥って苦しんでいる主人を苦しみから一瞬でも解放させてあげることのできたであろう延命治療です。主人は望まなかった。その時を迎え、今でも私の耳に残っている「ご主人は延命治療を望んでいらっしゃいませんでしたね。」という医療者のことば。

主人を看取って4年半が過ぎたのに決して忘れられない瞬間に 延命治療 ということばが重なっています。一生この苦しみから癒えることはないと
延命治療ということばは私を一生苦しめるのだと
思います。今この瞬間も手足に汗をかき呼吸困難が襲っています。
でも投稿します。1人でもいいので、これを読んだ人が命のことを考え、私と同じ苦しみを味わないように願うからです。

つづきを読む

違反報告

延命治療は一方的な治療

ajisun

対話不足からくる治療が延命。まさに!

対話不足からくる治療が延命。まさに!

違反報告

すべてのコメントを読む

がんサバイバーの立場から 桜井なおみ

最新記事