知って安心!今村先生の感染症塾
医療・健康・介護のコラム
寄生虫やウイルスが……ジビエ料理にご用心!
あなたは「ジビエ料理」を知っていますか?
シカやイノシシのような野生の肉は「ジビエ」と呼ばれています。空前の食ブームの中、一般の方が野生の動物の肉を食べる機会も増えているようです。ネットの検索サイトで「ジビエ」と入力してみてください。ジビエ料理を提供する店が、日本中で増えていることがわかるはずです(ちなみに「ジビエ」という言葉は、狩猟でとった野生の鳥獣の食肉を意味するフランス語の「gibier」が語源らしい)。
実は、このような野生動物の肉である「ジビエ」は、寄生虫やウイルスなどによる感染症の原因となることがあります。食ブームを心から楽しんでいただくために、今回は「ジビエ」と感染症のお話をしましょう。
ジビエと寄生虫
最近、こんなニュースがありました。
『シカ・イノシシのジビエ料理、寄生虫ご用心』
これは、野生のシカとイノシシを捕獲して、その食用部位の背ロースとモモの肉を調べたところ、その多くに住肉胞子虫という寄生虫がみられたという情報です(シカ肉の保有率は、なんと90%近く!)。また、シカの肝臓には、 槍 形吸虫という寄生虫がいたそうです。
「野生の動物の肉には、寄生虫がいることがある」…このことを知っていることが大切です。
ジビエとE型肝炎ウイルス
ジビエは、寄生虫だけでなく、ウイルスによる感染症を起こすことがあります。シカやイノシシの肉には、E型肝炎の原因となるウイルスが存在していることがあり、これによって急性の肝炎を発症する可能性があるのです。
ウイルスによって起こる主な肝炎としては、B型肝炎とC型肝炎が有名です。これらは、血液や性行為によって感染するウイルスです。一方、主に食事などを介して感染することが多いウイルス性肝炎として、A型肝炎とE型肝炎があります。A型肝炎は、生ガキなどの貝や、ウイルスに汚染された食材や水などを介して感染します。そして、E型肝炎の原因として注目されているのが、今は禁止となった豚のレバーや、この「ジビエ」だったのです。
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