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[認知症のはてな](3)「行動・心理症状」表れ方様々

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徘徊、妄想、暴言…対応次第で改善も

[認知症のはてな](3)「行動・心理症状」表れ方様々

 認知症の症状には、脳の神経細胞が壊れて起きる記憶障害などの「中核症状」と、不安や妄想など「行動・心理症状( BPSD )」と呼ばれるものがある。BPSDは人によって表れ方は様々で、接し方などで改善する場合もある。周囲の人が認知症を正しく理解し、適切に対応することが大切だ。

 「すでに払った公共料金の領収証を持って、コンビニに何度も“支払い”に行っていたようなんです」

 今月4日、認知症の人と家族の会神奈川県支部の介護家族向け懇談会。川崎市の会社員女性(56)は、同居する父親(89)の変化に気付いたきっかけを話した。5年ほど前、そんな父親の姿を見かけたと近所の人から聞いて戸惑ったが、かかりつけの病院でアルツハイマー型認知症と診断された。「思えば、以前から、いつも捜し物をしているなど兆候もあった」と振り返る。

 自分で買い物に行き、料理を作る父親だったが、診断後は、内釜が入っていない炊飯器に直接、米が入れられていたこともあった。

 ■ 性格なども影響

 認知症は、脳の病変で記憶力、判断力などが低下し、社会生活に支障が出る状態だ。その症状は「中核症状」と「行動・心理症状(BPSD)」の二つに分けられる。同会副代表理事を務める杉山孝博・川崎幸クリニック院長は「脳の細胞が壊れることで直接的に起きるのが中核症状で、認知症になると必ず一つは表れる。機械の操作が徐々にできなくなるなど、進行するのが特徴」だと説明する。

 代表的なものに記憶障害があり、経験したこと全体を忘れるのがポイントで、部分的に思い出せない「加齢によるもの忘れ」と区別される。女性の父親の場合、公共料金を払ったこと自体を忘れたとみられる。そのほか、料理など手順を頭の中で組み立てて行うのが難しくなる実行機能障害、日時や場所が分からなくなる見当識障害、理解・判断力の低下などがある。

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サポーター養成講座で認知症の症状を説明する柴田さん(国立市役所で)

 一方、BPSDは、記憶障害などの中核症状で感じる不安に、その人の性格や周囲との人間関係などの要素が絡み合って生じる。 徘徊はいかい や妄想、暴言・暴力など表れ方は様々で、介護者の深刻な悩みにつながることも多い。この日の懇談会でも「『出て行け』と家族への暴言がすごい」「介護を嫌がって物を投げる」といった体験が口々に語られた。

 ただ、BPSDは周囲の対応によって改善が期待できる場合もある。どう対処するのがいいのか。

 杉山院長は「忘れたことを覚えさせようとしたり、失敗をとがめたりして厳しく接すると、本人には悪い感情だけが残り、症状が悪化するなど逆効果になる」と指摘する。

 食後に「ご飯を食べたい」と言われた時、「食べたばかりでしょう」と言い返してしまうと、本人は忘れているので「そんなことはない」とこだわり、家族をなじる場合がある。杉山院長は「『支度中なので、もう少し待ってくださいね』と話を合わせたり、別の話題に切り替えたりして、穏やかな気持ちになるよう優しく対応してほしい」と話す。

 ■ 地域の見守り大切

 症状や適切な接し方を学んだ地域住民らによる「見守りの目」も欠かせない。

 「家と反対方向に歩いているなど高齢者の様子が心配な時は、笑顔で声をかけてもらい、連絡をお願いします」。東京都国立市で今月開かれた「認知症サポーター」養成講座で、講師を務めた同市地域包括支援センターの柴田秀朗さんは呼びかけた。同講座は、基本的な知識や、認知症の人への適切な支援の仕方を体系的に学ぶもので、全国750万人超が受講している。講座開催を支援する全国キャラバン・メイト連絡協議会の菅原弘子事務局長は「サポーターが多い地域では、徘徊で高齢者が行方不明になるのを防いでいる。認知症の人が地域で安心して暮らせるよう、多くの人に学んでほしい」と話す。

 ※ BPSD =Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia

 (滝沢康弘)

 (2016年6月26日 読売新聞朝刊掲載)

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