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佐藤記者の「新・精神医療ルネサンス」

コラム

「飲む拘束衣」販売中止へ

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ゼプリオン問題ではNPOが厚労省に要望書

 抗精神病薬ゼプリオンの死亡報告多発問題でも動きがあった。2016年6月21日、患者支援団体のNPO法人「地域精神保健福祉機構」が、厚生労働省に原因究明と適正使用などを求める要望書を提出したのだ。

「飲む拘束衣」販売中止へ

要望書提出の後、厚生労働省で行われた地域精神保健福祉機構の記者会見

 6月16日に掲載した前回の記事では、ゼプリオン使用後の死亡報告は83人と書いた。ところが5日後の記者会見時には、更に2人増えて85人になっていた。現在、医薬品医療機器総合機構(PMDA)のサイトに掲載されているのは今年2月ごろまでの報告なので、実はもう100人に迫っているのかもしれない。こうした報告は医師の判断で行うので、医師が報告しなければ数として上がらない欠点もある。そのため、地域精神保健福祉機構は要望書で、使用する患者全員を追跡する全例調査の実施を求めた。

調査に「第三者の厳しい目」を

 ゼプリオン問題では、前回触れたお粗末対応をしてしまった日本精神神経学会は、今後どうするのだろうか。学会員に対して、他の抗精神病薬と重ねて使わないなどの適正使用を改めて呼びかけるとしても、それだけでいいのか。販売するヤンセンファーマ社が定めた用法や用量は本当に適正なのか、大学などと連携して調べる必要があるのではないか。死亡例の調査は通常、医師から一報を受けた製薬会社の社員が、医師の話を聞く形で行うが、それでは「第三者の厳しい目」に欠ける。学会が、製薬会社を通さずに学会員から情報を直接集める仕組みを作り、薬の影響を調べるような積極的な取り組みが必要ではないか。

 地域精神保健福祉機構が作成した表を見ていただきたい。抗精神病薬4剤の死亡報告数を同期間で比較したグラフで、ゼプリオンの数が突出しているのが分かる。

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 各薬の死亡率の正確な比較には、使用患者数の情報が欠かせない。だが、ヤンセンに限らず製薬会社は「正確に出すのは困難」として明らかにしないことが多く、このような表になるのは仕方がない。薬は患者ごとに使用量が違うため、出荷量から使用患者数を正確に割り出すのは難しいという製薬会社の言い分も分かる。だが、リスパダールコンスタもインヴェガも、ゼプリオンと比較して使用患者数が著しく少ない薬ではないことは、ヤンセンの広報の話でも確認できている。

 この表をどのように受け止めるのか。厚生労働省や日本精神神経学会の良識が試されている。

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佐藤写真

佐藤光展(さとう・みつのぶ)

読売新聞東京本社医療部記者。群馬県前橋市生まれ。趣味はマラソン(完走メダル集め)とスキューバダイビング(好きなポイントは与那国島の西崎)と城めぐり。免許は1級小型船舶操縦士、潜水士など。神戸新聞社社会部で阪神淡路大震災、神戸連続児童殺傷事件などを取材。2000年に読売新聞東京本社に移り、2003年から医療部。日本外科学会学術集会、日本内視鏡外科学会総会、日本公衆衛生学会総会などの学会や大学などで講演。著書に「精神医療ダークサイド」(講談社現代新書)。分担執筆は『こころの科学増刊 くすりにたよらない精神医学』(日本評論社)、『統合失調症の人が知っておくべきこと』(NPO法人地域精神保健福祉機構・コンボ)など。

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