ニャるほど!社会保障
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「世代間格差」の実情
高齢者ほど手厚い給付


社会保障の
世代間格差って?
年金や医療といった社会保障のサービスが、高齢者ほど手厚くなっているということだよ。中には、「後に生まれた世代ほど不利」との批判まである。
例えば、老後の年金の場合、厚生労働省が昨年公表した試算でみると、会社員らが加入する厚生年金で、標準的な収入の夫と専業主婦の世帯の場合、1945年生まれ(今年71歳)の人が平均寿命まで生きれば、総額5200万円の年金をもらえる。この世帯が負担した保険料1000万円の5・2倍に相当する。一方、95年生まれ(同21歳)で同様の世帯の年金額は7900万円。保険料3400万円の2・3倍にとどまる。
社会保障全体でみても差があるんだ。2013年度は約110兆円のお金がかかったけれど、年金や75歳以上の人の医療費、介護サービスなど、主に高齢者向けに約76兆円、全体の約70%が使われた。主に若い世代の子育て関連に使われたのは、5%だった。
でもね、社会保障を単純な損得で論じてはいけないよ。誰でも年を取れば、病気もしやすくなるし、サービスはどうしても高齢者に厚くなる。それに、社会保障は、利殖を目的にした金融商品とは本質的に違う。人生の様々なリスクに社会全体で備える安全網があるからこそ、若者も、高齢者も、安心して暮らせることも忘れてはいけないよ。
ただ、格差を放置していいというわけじゃない。不安定な待遇の非正規労働者が増えていて、保険料を払うのも大変な若者だって少なくない。そんな中、「自分たちの世代は損をしている」と不公平感ばかり募ってしまえば、「世代間の支え合い」を基本とする制度を維持できなくなる。
厚労省の社会保障に関する意識調査では、「現役世代に現在以上の負担を求めるべきではなく、高齢者の負担の増加はやむを得ない」と考える人の割合は、20~24歳では31%。65歳以上の約2倍に達している。
社会や経済の支え手となる若者向けの給付を増やし、高齢者も所得に応じた負担をするなど、痛みを分かち合いながら、制度全体を見直していかないとね。
(石原毅人)
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