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スポーツとアンチ・ドーピング、どれくらい知っている?(下)
競技者登録をしている人、全てが対象! トップアスリートだけのことではない
今回のカフェは、前回の続き、スポーツとアンチ・ドーピングについてです。アンチ・ドーピング規則は、「すべてのアスリートが守るべきルール」と、前回のカフェで説明しました。アンチ・ドーピングのルールは、トップアスリートだけが守っていればいいというわけではないと思います。つまり、競技者として登録している全てのアスリートが、規則違反をしない、「真のプレーをする」ということが求められ、世界共通のルールとしてアンチ・ドーピング規則が定められています。このスポーツにおける真の力を発揮するための基盤となる一連のムーブメントは、国内外で「PLAY TRUE」と称され、日本国内においては、「日本アンチ・ドーピング機構(JADA)」が様々なプログラムを展開しています。
その一つとして、全国大会レベルの競技会会場において、アンチ・ドーピングへの意識・知識を高めるための「アウトリーチ(啓発)活動」が定期的に行われています。競技会に出場しているアスリートや、応援に来ているアスリート、コーチ等にも声をかけ、アウトリーチブースへご案内し、簡単なクイズを実施するなど、アンチ・ドーピングに対する理解促進のための活動が行われています。わたしも多くの会場でお手伝いをしたことがあります。そこで感じられたことは、競技レベルによって、または、若いジュニア世代のアスリートにとっては、「自分はドーピングなどしないし、トップアスリートじゃないから無縁」という認識にあるのだと思いました。確かに、ドーピング検査を受ける比率や頻度が高いのは、競技レベルが高い、全国大会レベル以上と言われるクラスのアスリートかもしれません。しかし、ルールを守ることはトップアスリートに限った話ではなく、スポーツをより良く未来につなげていくことでもある、という点の共通理解を持っていただくために、こうした啓発活動を繰り返し、皆さんに伝えています。競技レベルが上がり、「ドーピング検査を受ける可能性が出てきたので、初めて気を付ける」、ということだけに 留 まる考え方であってはならないと思うのです。
10のアンチ・ドーピング規則違反とアスリートの役割と責務
そもそも、なぜ、こんなにもたくさんの規則ができたのか、不思議に思う方もいると思います。現行の世界アンチ・ドーピング規程「CODE2015」に、10項目のアンチ・ドーピング規則違反が次のように定められています。
- 採取した尿や血液に禁止物質が存在すること
- 禁止物質・禁止方法の使用または使用を企てること
- ドーピング検査を拒否または避けること
- ドーピング・コントロールを妨害または妨害しようとすること
- 居場所情報関連の義務を果たさないこと
- 正当な理由なく禁止物質・禁止方法を持っていること
- 禁止物質・禁止方法を不正に取引し、入手しようとすること
- アスリートに対して禁止物質・禁止方法を使用または使用を企てること
- アンチ・ドーピング規則違反を手伝い、促し、共謀し、関与すること
- アンチ・ドーピング規則違反に関与していた人とスポーツの場で関係を持つこと
10項目のうち標準的な制裁期間として、5項と10項は2年間、それ以外はすべて4年の制裁期間が科せられます。規則違反に意図があったか(故意か)どうかも含め調査がなされ、場合によっては制裁期間が軽減されることもあります。主には、規則を知らずに治療目的として禁止物質の含まれる成分を服用してしまい、意図的な違反ではなかったことをアスリート自身が明確に証明することができると、制裁が軽減されることもあります。
また、決定された内容にアスリート自身が不服な場合、決定日から21日以内であれば、中立のスポーツ仲裁機構に不服申し立てをすることも可能です。制裁期間中は、スポーツ活動は一切禁止されています。「アスリートやコーチとしての活動だけでなく、スポーツにおける事務作業やボランティア、役員などの活動も禁止」とされています。
また、アンチ・ドーピング規則違反が累積で2回になると、全てのスポーツ活動を生涯にわたり行う事ができない、「永久追放」の制裁が科されることもあります。ただし、悪質性が高い場合は規則違反の回数に関わらず永久追放の可能性もあります。
アンチ・ドーピング規則はとても細かく、そして厳しく定められています。そうすると、アスリートはとても不便ではないか? 不正をしていないアスリートからすれば、面倒なのではないか? そう感じる方もいるかと思います。ここで触れておきたい点としては、ルールを詳細に、そして厳格に定めなくてはならないほど、アンチ・ドーピング規則違反に関わる不正が相当多くあったことが原因です。世界共通の規則ができるまでには、多くの歴史とプロセスがありますが、この内容はまた別の機会に書いてみたいと思います。すべては、クリーンなアスリートを守り、クリーンなスポーツ界にするために、必須の条件となります。
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