泌尿器科医・小堀善友の新オトコのコト
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「乾いたオーガズム」2つの意味

「ドライオーガズム(Dry Orgasm)」という言葉を聞いたことがありますか? ドライとは「乾いた」という意味で、ウェット(wet)の逆です。つまり「乾いたオーガズム」「射精を伴わない性的絶頂」という意味です。
私はこの言葉の意味について、日本国内で一般的に広まっている内容と、性機能の学術的な内容は全く異なると考えています。
この題名に興味を 惹 かれてこのブログを開いた方は、前者の意味合いのことを理解しているのであろうと推測します。
ネットで広まる「ドライオーガズム」
ウィキペディアによると、日本国内で一般的に(ネット上などで)広まっているドライオーガズムとは、前立腺刺激などによって得られる射精を伴わないオーガズムのことです。射精を伴わない結果として何度もオーガズムに達することができることや、ペニスだけではなくより広範囲の性感帯を、時には全身を快感が襲うことから、女性が経験するオーガズムに類似の生理現象と考えられています。(私は医者のくせに、ウィキペディアから引用をします…すみません)。
一般的に、ドライオーガズムのことをネットで検索すると、肛門から前立腺を刺激する器具を用いてマスターベーションをすることについて書かれていることが多いのですが、これは肛門を用いたセックス(アナルセックス)についても言えるのではないかと考えています。
歴史的にも、日本の戦国時代や江戸時代には男性同士のセックスで肛門を使った記録も多く残っています。キリスト教で禁止されたこともあり、現代ではマイナーな性的指向に考えられてしまいますが、昔はもっとメジャーだったかもしれないですよね。だから、アナルセックスには意味があり、それによるドライオーガズムは意味があるのではないかと考えているのです。
しかし、この現象は学術的に調査されることが少なく、詳細はよくわかりません。私は強い興味があるため、自分で道具を使って、このドライオーガズムに達することができないかどうかを試してみたことがありましたが、結局はうまくいきませんでした。上手にできる人がいたら、ぜひ教えていただきたいと考えています。
性機能学から見ると…赤ちゃんが欲しい男性には問題

さて、性機能学的にみたドライオーガズムの話に移ります。国際性機能学会(ISSM)のホームページにも詳しく書かれています。学会としては、ドライオーガズムとは文字どおり、「絶頂感があるのに精液が出てこない」状態のことを指します。これだけでは通常は大きな問題になりませんが、赤ちゃんが欲しい男性には精液が出てこないことには話にならないので問題となります。

このドライオーガズムであれば、私も経験があります。とある前立腺肥大症の内服薬を飲むと、その副作用のために絶頂感があるのに射精ができない状態(emission less)になってしまうことが知られています。
私もこの薬を試したことがあるのですが、1錠飲んだだけで、2日間絶頂感があるのに射精ができなくなり、とても心配したことがありました。3日目にようやく精液が出てきたので、胸をなで下ろしたことを覚えています。
性機能学的なドライオーガズムの原因としては、以下のものが知られています。
ドライオーガズム自体は、重大な健康問題ではありませんが、その陰に何らかの原因が隠れているかもしれませんので、泌尿器科の専門医へ受診することをお勧めいたします。